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歴史に名を刻んだ日本最大のホビー店「アソビットシティ」閉店! 爆買いバブルに踊らされたラオックス、次の一手は?

4/27(木) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 秋葉原の象徴的存在であった店舗がまた1つ姿を消した。

 かつて「日本最大のホビー専門店」として全国的に知られていた「ラオックス秋葉原アソビットシティ」(AsoBitCity)が3月31日に閉店し、15年の歴史に幕を下ろすことになったのだ。

 絶大な人気を誇った店舗の「突然の閉店」。その陰には一体なにがあったのであろうか。

◆秋葉原の歴史に名を刻んだ「日本最大のホビー専門店」

 ラオックス(LaOX)は1930年に墨田区向島で創業し、終戦直後の1945年に秋葉原に出店した電気店を起源とする。1970年代には多店舗化と多角化に乗り出して規模を拡大、1990年代には中堅家電量販店として名が知られる存在となり、1999年には東証2部に株式上場を果たした。

 しかし、2000年代に入ると郊外型家電量販店との競争の激化に伴い経営が悪化。そうしたなかで生まれた新業態が「アソビットシティ」であった。

 アソビットシティは2002年10月にラオックスが運営するホビー専門店として「T-ZONE秋葉原本店」「ミナミムセン」の跡(現在はドンキホーテ秋葉原店・AKB48劇場などが出店するビル)に開業。その後、ドンキホーテの出店などに伴い、現在のJR秋葉原駅南側に移転オープンした。販売品目はゲーム、模型、プラモデル、フィギュアなどホビー関連商品全般で、開業当時は「日本最大級のホビー専門店」として大きな話題を呼び、全国各地からの集客があったという。その後は中野、豊洲にも規模の小さな店舗を出店し、3店舗体制となった。

 ラオックスが経営再建の過程で2009年に中国の家電量販店「蘇寧電器」の傘下となったのち、経営再建にともないアソビットシティは秋葉原店のみに戻ったが、同店主催のアイドル・声優のライブイベントやゲーム発売記念イベントなどの開催も継続され、近年まで大きな集客力があった。また、2012年にはキャナルシティ博多(福岡市博多区)に新規出店。当初はこの博多店でもキャナルシティ内のイベントスペースを活用するかたちで大型イベントが開催されており、両店主催のイベントに参加した思い出のある人も多いであろう。

◆中国企業ならではの「身のこなしの早さ」が仇に

 中国資本となった後も順調と見られた秋葉原アソビットシティであったが、2014年ごろから中国人観光客による「爆買い」がブームになると状況は一変する。

 ラオックスは「国内最大規模の免税店」のキャッチフレーズを掲げ、爆買いの波に乗り2014年に黒字転換を果たすと同年終わりには397億円の大規模増資を実施、中国企業ならではとも言うべき「スピード感」で一気に事業拡大を図る。2015年6月には新宿のファッションビル「マルイワン」跡(伊勢丹前)に旗艦店を出店したほか、2015年から2016年にかけて百貨店の大丸心斎橋本店、京都店、神戸店、博多大丸福岡天神店に相次ぎ出店。合わせて小樽、函館、長崎、佐世保、熊本など地方出店も加速させた(一部は団体ツアー客専用店)。

 そうしたなか、アソビットシティにも大きな転機が訪れる。秋葉原アソビットシティも爆買いブームの波に乗る形で2015年7月に「ホビー用品も販売する免税店」となるべく全面改装を実施。多くのフロアがラオックス本館と同様の中国人向け家電・宝飾品売場に衣替えされたうえ、ホビーフロアも中国人観光客を大きく意識する内容に変わった。

 しかし、この改装は完全に失敗に終わった。これまでアソビットシティの主要客層であった日本客が大幅に減ってしまったばかりか、「免税店」とも「ホビー店」とも言えないどっちつかずの中途半端なスタンスでは外国人観光客を集客することも難しく、閑古鳥が鳴く状況となってしまう。たとえ、中国から来日した趣味人が来店したとしても「前の売場のほうが良かった」と言ったであろう。

 アソビットシティは2017年1月に全面改装をおこない再びホビー店としての再出発を図ったものの、売場は大幅に縮小。いったん離れた客を取り戻すことも難しく、結果として閉店に追い込まれたと思われる。

 秋葉原アソビットシティの閉店により、「アソビットシティ」はラオックスキャナルシティ博多店のなかに設置された店舗のみとなるが、こちらも当初の商品構成とは異なり訪日観光客向けの商品が中心となっており、同店の改装とともに長年親しまれた「アソビットシティ」の屋号が完全に姿を消す可能性も高い。

 アソビットシティは長年に亘って趣都・秋葉原を牽引してきた大型店舗であり、多くの家電量販店のホビー販売拡大のきっかけの1つとなった店舗でもあった。それだけ大きな存在の店舗でありながら閉店告知も店舗閉鎖の数日前というドタバタ具合で、経営の迷走ともいえる理由での「あっけない幕切れ」は非常に残念なことであった。

 4月現在、秋葉原アソビットシティ跡地の活用方法は発表されていない。JR秋葉原駅近くの一等地だけに、店舗跡の行方も気になるところである。

◆「爆買い偏重」で赤字転落のラオックス、今後は「コト消費」重視に転換?

 観光庁の調査によると2016年の訪日外国人客は2403万人と過去最高になったものの、1人あたりの平均消費額は15万5896円と、前年比約11パーセントのマイナスとなった。その大きな要因が、2016年4月に行われた中国政府の関税税強化策の影響や、中国国内におけるEC市場(ネット通販)の充実、訪日客の客層の変化やリピーターの増加などだ。

 こうした「爆買い」の鈍化にともないラオックスの業績も悪化、2016年12月期の連結売上高は前期比32パーセント減の627億円、最終損益は15億円の赤字となり、2014年上半期から1年半余りで約14倍にも高騰した株価も、今春には2014年上半期の水準に逆戻り。ここ数か月は急速な店舗整理をおこなっており、2016年度後半にはアソビットシティ以外にも札幌ノベルサ店、イオンモール成田店などを閉店、とくに釧路空港店、旭川店は1年以内での撤退となってしまった。くしくも秋葉原アソビットシティの閉店は、「爆買いバブル」に踊らされた時代を象徴する出来事となってしまったのだ。

 しかし、ラオックスは免税店事業の拡大をあきらめた訳ではなく、2016年11月には成田空港に、12月には福岡ヒルトンホテルに、そして今年4月27日には新宿髙島屋タイムズスクエア11階に開設される免税店「SHILLA&ANA」内に新規出店。地方の店舗や免税店以外の業態を整理しつつも、訪日客が多い大都市や国際空港での足場固めを進めると思われる。

 一方で、新たな試みも始まっている。ラオックスは、4月20日に子会社「フードクリエイションワークス」を設立して飲食業に参入することを発表。従来型の「モノ消費」に加えて、比較的景気に左右されづらい「食」を含めた「コト消費」を強化することで、経営の立て直しを図りたい考えだという。

 中国企業による買収劇から約8年。ラオックスは「中国企業ならではの身のこなしの早さ」により再びV字回復することができるのであろうか。新たな事業の行方も含めて今後の展開が注目される。

<取材・文・撮影/都市商業研究所>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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