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「PDCAクルクル教」だから変化に弱い日本企業

4/28(金) 13:21配信

日経BizGate

日本人の計画好きのルーツはPDCAにあり

 これは某企業の新人採用担当の方にお聞きした話です。最近の新人に希望部署を訊ねると「経営企画部」という声が増えているとのこと。新人たちも経営企画は会社のエースが集う部署だと思っているようです。

 経営企画という名の部署が会社に増えはじめたのは90年代のこと。バブル崩壊後の不況にあって、あらゆる経営上の難問を解決するため、多くの大企業は「経営企画部」を立ち上げました。経営企画部こそは「計画と管理」体制づくりを担う会社の要。しかし、その実態は、新人たちのあこがれとは裏腹なようです。

 彼らは自嘲気味にこう言います。「俺たちはしょせんパワポ作成部だよ」と。彼らは1年中何かの計画をつくり、それをパワポできれいに仕上げます。絵に描いた餅ならぬパワポに描いた餅、本人たちすら「何の意味があるんだろう」と、ため息まじりの声を漏らしています。どうしてこんなことになってしまったのでしょう?

 私が思うに、その大きな理由のひとつがこの国の「PDCA愛好」です。日本人はPDCAが大好きです。「PDCAを回す」――どれだけこのフレーズを聞いたことやら。いまや多くの会社で、PDCA(Plan-Do-Check-Action)が合い言葉になっています。

 もともとモノづくりの品質を高めるために取り入れられたPDCAは、あらゆるビジネスシーンに活用されています。それはもはや宗教と呼べるほどの状態。PDCAクルクル教の信者たちは、何事を行うにも計画(Plan)を作らねば気が済みません。たとえば会社の未来像を示す中期経営計画をつくり、そして毎年の予算をつくる。

 不況はこの国に計画ブームを呼び、あちこちにPDCA信者を増やしていきました。ここで不況にもがく日本の会社は、願望に似た無理な計画をつくりがち。想定できなかったライバルの登場やマーケットの変化が起こったとしても、当初計画は初志貫徹、下の現場には達成が厳しく義務付けられます。

 こうした無理な計画に固執する姿勢は、「ウソつき」を生み出しかねません。東芝の不正会計事件はその典型といえるでしょう。また、たとえば建設業の現場で、どう考えても無理な納期・コストで指示が行われると手抜き工事が行われかねません。無理な納期やコスト削減の計画は、不正や手抜きなどにつながる可能性があります。

 そして計画が達成されないと、必ず「お前たちはなにをやっているんだ!」とばかり、現場に疑いの目が向けられます。「計画が未達に終わるのは、現場がやるべきことをやっていないからだ」。このような解釈のもと、従業員は日々の行動「Do」を細かくチェックされるようになります。あらゆる仕事について「何をすべきか」の具体的な行動計画が部下に与えられ、各人はその任務を正しく遂行したかどうかで評価されます。

このように部下の行動を細かく管理するマイクロ・マネジメント体制のもとでは、直属の上司に言われたことしかやらない=評価されることしかやらない社員が増えていきます。厳しく行動を管理することが「受け身体質」を生みだしてしまうのです。

 無理な計画(P)、その達成に向けた行動(D)を詳細に管理するマイクロ・マネジメント。それらには、「ウソつき」と「受け身体質」を増やす危険があります。

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最終更新:4/28(金) 13:21
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