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築地市場移転延期で玉突き事故の環状2号線問題

4/28(金) 11:10配信

Wedge

 築地市場の移転延期によって、市場跡地の地下を通る環状2号線の全面開通が見通せない。移転延期の余波は市場関係者だけでなく、周辺住民や東京五輪など多方面に及んでいる。

 「環状2号線(環2)が開通し、都心部へのアクセスが確保されることを前提にマンションを購入したのに、これでは話が違います。多くの勝どき住民が困っています。小池都知事が政局のために都民の利便性を損ねているとしたら、とても残念です」

 築地市場から見て、隅田川の対岸に位置する勝どきに住む横井麻衣子さん(仮名)は憤る。築地市場が移転した後、環2の建設が行われ、都心部へのアクセスが劇的に改善される予定だった。しかし、築地市場が移転していないため、「築地市場の地下を通す、片側2車線の本線、500メートル弱の建設が着手できない」(東京都建設局の久野健一郎街路課長)ままだ。

 環2は全長約14キロの都道で、臨海部と都心部を結ぶ大動脈として機能する予定だったが、移転が延期されたため、新橋-豊洲間(3・4キロ)の開通が見通せない状況だ。周辺道路の混雑緩和も遠のき、その影響は東京五輪にも波及する。市場跡地に建設予定だった本線は地下道を掘る必要があり工期も長く、3年後に迫った東京五輪までの開通はもう間に合わない。

 そのため五輪開催時には、築地市場の端の部分に、移転後に建設することができる片側1車線の暫定道路を使うしかない。当初、計画していた片側2車線の本線では交差点を通らずに済むはずだったが、暫定道路では交差点を通らざるを得ないため信号待ちの時間が発生する。また、車線数も減るので、その分、混雑も予想される。

 ただ、その暫定道路も、移転延期によって建設が止まったままだ。昨年11月に豊洲へ移転していれば、暫定道路を建設でき、昨年末にも環2全線がつながる予定だったが、「小池知事の移転延期発表で、環2にかかわる計画が全て飛んでしまった」(吉田不曇(うずみ)中央区副区長)のである。

 環2を通り選手村と都心を結ぶBRT(バス高速輸送システム)の導入も、従来は2019年度内に運行開始とされていたが、小池知事による「都民ファーストでつくる『新しい東京』~2020年に向けた実行プラン~」では、「環状第2号線の整備状況に合わせて、BRTの運行を、順次開始する」との文言になり、具体的な運行開始時期が抜け落ちた。

 17年春頃に設立が予定されていた、都と京成バス(千葉県市原市)が共同出資する運行会社の設立時期も延期されることとなった。

 当初の計画では、都内の平均的な車の速度と停留所での乗降時間から算出して、新橋から選手村に近い晴海3丁目までの所要時間は10分程度と見込んでいた。しかし、暫定道路のままBRTの運行が続いた場合、車線数が減り、かつ信号待ちの影響なども考えられるため、「想定していた運行ダイヤに影響する可能性がある」(東京都都市整備局の小原誠司担当課長)。

 また、都が国際オリンピック委員会(IOC)に提出した保証書で確約した「輸送インフラの整備事業をスケジュールどおり実施する」ことにも支障が生じる恐れがある。都のオリンピック・パラリンピック準備局松本祐一関係輸送担当課長は、「IOCには環2についての進捗状況を適宜報告しており、最終的な了解を得て、大会時の適切な運用が見通すことができれば問題ない」と語るが、移転の決断が遅れれば遅れるほど状況は悪くなるばかりだろう。開催時の周辺地域の渋滞悪化は避けられない。

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最終更新:4/28(金) 11:10
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