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日銀の黒田総裁の記者会見- 2019年度の展望

4/28(金) 14:08配信

NRI研究員の時事解説

はじめに

今回の記者会見では、「量的・質的金融緩和」の正常化に関する質問が比較的多く提示された。黒田総裁は、こうした質問に対して、従来に比べて丁寧な説明を行ったが、コミュニケーション政策如何というより、「量的・質的金融緩和」の基本的な考え方に関する日銀と市場やメディアとの間での理解の共有という根本的な領域に関わる問題が残るようにも感じられた。早速、内容を検討したい。

景気と物価の見通し

「正常化論」についての議論に入る前に、今回改訂された景気と物価の見通しの特徴を整理しておきたい。

黒田総裁が説明したように、政策委員会としては1月時点の見直しを概ね維持した。実際、修正点は、2017年度のインフレ率見通しの下方修正(+1.5%を+1.4%)と、2017年度から2018年度の成長率見通しの上方修正(+1.5%→+1.1%を+1.6%→+1.3%)に止まる。

もっとも、今回の見通しの本文(基本的見解)のトーンは、特に足許について幾分強気な印象を与えるものとなっている。具体的には、 海外経済の緩やかな回復に支えられて輸出が好転し、それが生産→設備投資という好循環に繋がりつつある点が指摘されているほか、労働需給の逼迫が再三にわたって強調され、次第に賃金圧力に転ずるとの展望が示されている。

もちろん、政策委員会全体としては、景気と物価の双方について、先行きのリスクが下方に傾いているとの評価や、主たるリスクの源泉が海外にあるとの見方を維持した。それでも、黒田総裁の説明によれば、中国発の金融経済ショックの発生といったいくつかのリスクシナリオの評価を引き下げたとみられる。

正常化に関する議論

冒頭に述べたように、今回の記者会見では、数名の記者が「量的・質的金融緩和」の「正常化」の道筋を黒田総裁に質した。読者の皆様はご承知のように、これまで黒田総裁は、こうした質問に対しては「時期尚早」との回答を行うことが多かった訳である。

こうした前例に照らすと、今回、黒田総裁は比較的丁寧な説明を行った。すなわち、黒田総裁は、具体的な「正常化」の戦略は、正常化を行う時点での景気や物価、金融の状況によって決められるべきものである点を強調した。このため、現時点で予想される戦略の内容を説明したとしても、将来の景気や物価、金融の状況によって決められる事後的な内容と異なるものとなる可能性が高く、従って市場をミスリードするリスクが大きいとした。こうして、現時点での具体的な戦略の説明に消極的な考え方を確認した。

改めて考えると、基調的インフレが依然として低位にあり、従ってインフレ目標の達成にまだ距離が残る中で、「正常化」を巡る議論に焦点が当たることには、確かに奇妙な面がある。その意味でも、現在の日本での「正常化」論も、米欧の中央銀行を巡る「正常化」論に影響されすぎている嫌いもある。その一方で、市場やメディアが現時点で「正常化」論を持ち出すことにも、単に足許の景気が良くなったからという以上に、一定の合理性も感じられる。

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