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韓国大統領選で見えた「世代間対決」 - 金香清 朝鮮半島3.0

4/28(金) 16:00配信

ニューズウィーク日本版

<韓国大統領選挙(5月9日投開票)は、優勢が伝えられる「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)と、「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)に絞られた。元IT起業家の安哲秀をなぜ高齢者が支持しているのか・・>

韓国の大統領選挙が佳境に入っている。

朴槿恵(パク・クネ)が所属していた保守セヌリ党は二つに分裂。どちらの候補も支持率は伸び悩んでおり、野党勢力同士の戦いになりそうだ。

現在では最大野党の「共に民主党(以下、民主党)」の文在寅(ムン・ジェイン)と、「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)のほぼ一騎打ちになっている。

最有力視されている文在寅は、2012年の大統領選挙で朴槿恵に僅差で負けた進歩政党の候補者。故・盧武鉉大統領の右腕だった人物で元人権派の弁護士として知られる。韓国の左派系政治家の本流と言える人物だ。

そこに対抗しているのが、支持率2位の安哲秀だ。日本では今回の大統領選に関する報道で、名前を初めて耳にした人も多いだろう。

安哲秀はあえて位置づけをするならば中道左派で、アンチ保守でありながら既存の民主党勢力に物足りなさを感じる若者を中心に支持を集めてきた人物だ。

しかし現在の世代別支持率を見ると、安哲秀は高齢層の支持を集めている。むしろ20~40代では文在寅が圧倒的に支持率が高い。

有力2候補の世代別支持率
データ参照:韓国ギャラップ 4月21日 

こういった支持層の変動の背景には、韓国における社会認識の世代間格差問題が横たわっている。

政治とは無縁だった安哲秀

安哲秀は医者を務めながらアンチウィルスソフト開発を手がけるという、異色の経歴を持つ人物。後に医者を辞め、韓国最大規模のITセキュリティ会社を立ち上げたのだが、政治とは無縁だった彼がどのようにして大統領候補になったのか。

安哲秀はソフト開発に止まらず、韓国におけるITセキュリティという意識を啓蒙した人物とも言える。最新のセキュリティソフトを個人向けに無料配布したほか、韓国の「2000年問題」は彼が解決したとも言われている。韓国で使われているアンチウィルスソフトは、ほぼ彼の会社の製品だ。

彼の名が広く知られるようになったのは、テレビのトーク番組に出演したことがきっかけだった。技術開発にも起業にも成功したカリスマ社長であるだけでなく、社会的に意義のある活動をしたことで、韓国の若者のスター的な存在になった。彼が主催した若者向けのフリートークショー「青春コンサート」は、年間3000件もの依頼が殺到するほどの人気を集めた。



そんな安哲秀に政治家待望論が出たのは、2011年のソウル市長選の時だった。「次期ソウル市長にふさわしい人物」の世論調査でダントツの1位で、当選は確実視されたが、市民運動家だった朴元淳市長に譲り、自らは応援に回った。そして2012年の大統領選挙では出馬宣言をしたものの、この時もやはり文在寅に譲っている。出れば勝てると言われた選挙を他の候補者に譲ったことは、彼の好感度をさらに高めることになった。

その後の13年4月に、安哲秀は国会議員に当選し、民主党と統合新党を結成したが、意見の不一致で脱党し、16年1月に新党を結成。結党して間もない同4月の国会議員選挙で38議席を獲得し、その人気の高さを見せつけた。

安哲秀が高齢層に支持されている理由

既存政党に不満を持つ若い層のオルタナティブ勢力だったはずの元IT起業家の安哲秀。それがなぜ現在、高齢層に支持されているのか。

現在の安哲秀の支持層は本来の支持者ではなく、文在寅=左派・民主党だけには政権を握ってほしくないという層が流れていると考えられる。つまり保守層ではあるが、朴槿恵事件があった現在、保守政党に投票し、死に票になるのは忍びないと考えている人々だ。その層はこの連載に書いた「歴代大統領の不正と異なる『朴槿恵逮捕』の意味」で言及した、朴槿恵をかつて支持した高齢層とほぼ重なると考えていいだろう。

一方、朴槿恵事件を経て政権交代を強く望む若者層は、野党の最大勢力である民主党・文在寅を支持しているという構図だ。

軍事独裁政権による「漢江の奇跡」の栄光を否定したくない世代と、約10年続いた保守政権の中で高い失業率など格差社会に喘ぐ若い層の断絶は、それくらい根深いものとなっているのだ。

安哲秀の支持層の変動の点からもう一点、注目したいことがある。

高齢の保守層の目的は民主党・文在寅政権誕生の阻止なのかもしれないが、結果的に「高齢の保守層が新しい勢力を支持している」という点だ。保守政党か進歩政党かという二項対立ではなく、新たな政治勢力が力を持つことは、韓国政界に多様性をもたらすことになる。

金香清

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