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【テレビの開拓者たち(9) 青木泰憲】WOWOW敏腕Pが語る“ドラマWができるまで”

4/29(土) 17:00配信

ザテレビジョン

'03年にWOWOW初の自社制作ドラマ枠としてスタートした「ドラマW」。青木泰憲プロデューサーはその立ち上げから携わり、今でも年に数本というペースでハイクオリティーなドラマを送り出している。'08年には「連続ドラマW」もスタート。'09年の「空飛ぶタイヤ」が、同年の日本民間放送連盟賞・番組部門テレビドラマ番組最優秀賞など多くの賞を受賞したほか、数々の作品が高い評価を受けている。そんな青木氏に「ドラマW」の立ち上げから振り返ってもらった。

青木氏が「第2のスタートだった」と語る「連続ドラマW」第1弾「パンドラ」は各界から高い評価を受け、'08年の東京ドラマアウォードグランプリを受賞した

■ 教えてくれる人はいないし、見本もない。初めは本当に手探りでした

──もともと、WOWOWに入社されたきっかけは?

「きっかけは、自分も加入していたということですかね(笑)。父が映画が好きで、僕以上にWOWOWを見ていたんですよ。父は広告代理店でCMを作っていたんですけど、その姿を見ていて僕も自然とそういった仕事をしたいと思うようになっていました」

──'99年に入社されて、'03年の「ドラマW」立ち上げから関わってらっしゃいますね。

「中途入社だったので、今まで他の人がやっていなかったことをやらなければ、という使命感があったんです。そうでないと自分の存在意義がないなと思って。もう一つは、手に職をつけたい、コンテンツ作りという職能を極めたい、という思いもありました。それは自分のためでもあるし、ドラマというジャンルがまだ確立されていなかった会社のためでもある、という考え方で(笑)」

──ドラマの作り方を教えてくれる先輩もいなかったわけですよね。

「教えてくれる人はいないし、見本もない。初めは本当に手探りでしたね。制作会社のスタッフに教えてもらいながら、必死でノウハウを覚えていった感じです。

今思うと、'08年に『連続ドラマW』が始まったのが第2のスタートでした。それまでの単発の『ドラマW』では、演出に有名な映画監督を迎えていたので、作品内容にしてもキャスティングにしても監督の力に頼るところが大きくて、プロデューサーとしての力は薄かったんですよ。ですから連ドラを始めるにあたっては、大きく舵を切って、プロデューサー中心で制作しようと考えました。過去の視聴者の好みや地上波との差別化についても相当研究しましたね。いきなり大スターが出てくれる保証はなかったので、そこを逆手に取って群像劇にしよう、とか。お手本がない分、そういう『連続ドラマW』の法則みたいなものをいくつも考えて、それを頼りに作っていった感じです」

■ 何よりもクオリティーを第一に考えています

──小説原作の多い「ドラマW」ですが、「連続ドラマW」の第1作「パンドラ」('08年)はオリジナル作品でした。

「ゼロから作品を作るのは難しいし、PR的にも原作がないと視聴者に届くまでに時間が掛かる。でも、あのときのノウハウは確実に今に生きているし、『パンドラ』のおかげでアイデアを絞り出す訓練ができたように思います。それまでは脚本について意見は言えても、具体的にどうしたらいいか良いアイディアが浮かばないことが多かったんですよ。ドラマ作りの方法論が分かってきて、脚本作りもより楽しくなりましたね」

──ドラマ作りにおいて、地上波の局とWOWOWの一番大きな違いを挙げるとすると?

「細かな違いはあれど、一番はスポンサーがいるかいないか、ですね。視聴者がクライアントであるということ。視聴者のことだけを考えて作る…“視聴者ファースト”って言うのかな(笑)、そこがわれわれの一番の強みなのかなと思いますね。例えば、『空飛ぶタイヤ』というのは僕にとって大きな作品で、賞もたくさん頂きましたけど、あれは地上波だったら、いろいろな制約があって作れない作品だったと思うんですよ。見てくださった方にも『WOWOWに入っててよかった』と思っていただける作品になったんじゃないかと」

── 一方で、地上波のテレビ局との共同制作にも積極的ですね。

「WOWOWの加入者を増やすには新しい視聴者層を開拓しないと、というのがあって。でも、地上波の局にとっては、やはり視聴率を獲ることが一番の命題ですよね。もちろん、数字も大切なんですが、それよりもクオリティーを第一に考えています。お金を頂いている以上、チープなものをお見せするのは罪悪感がありますから」

■ 「ドラマW」自体が“テレビの可能性”の証

――あくまでもご自身のクリエイティビティーに忠実に作ろう、ということですか?

「そうですね。今、制作中の『犯罪症候群』(Season1=フジ系で放送中/Season2=WOWOWで6月11日[日]よりスタート)は、東海テレビさんの寛大なご配慮もあって、気心の知れた脚本家やキャストと普段通りのスタイルで制作させてもらっています。WOWOWと組んで良かったと思ってもらえるよう、クオリティーの高い作品を目指していますが、やはり視聴率も取らないといけませんね(笑)。同じ時間帯のドラマで言うと『SP』('07~'08年フジ系)のような、緊張感の連続で展開する作品にしたいなと考えています」

──WOWOW開局25周年記念で制作された「沈まぬ太陽」('16年)も、2部構成、全20話の大作でした。

「僕は『空飛ぶタイヤ』が気に入っていて、正直、あれを超えるような作品が作れないジレンマもちょっと感じていたんですよ。他の作品ももちろん自信はあるんですけど、あまりにもセンセーショナルな作品でしたから。そんな中で、山崎豊子さんの『沈まぬ太陽』の原作と出会って、ボリュームと言い、スケール感と言い、これは地上波ではできない作品だなと思ったんです。航空機事故なども扱いますし、あらゆる面でドラマ化のハードルは高いなと。この作品を制作すると決まったときは久々に高揚感を覚えましたね。初めて連ドラをやったころの緊張感が蘇ってきました」

──テレビ離れが進んでいるとも言われる時代ですが、青木さんは“テレビの可能性”について、どのように考えていらっしゃいますか。

「地上波と比べると圧倒的に後発でドラマを始めたにもかかわらず、ここまで成長したこと自体が可能性の証じゃないですかね(笑)。初めのころはほとんど見られてなくて、社内でもここまで育つとは思われていなかった逆風の中、今ではWOWOWの基幹コンテンツになりましたから。頑張ってきてよかったなと思います(笑)」

最終更新:5/8(月) 17:01
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