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自宅で測る血圧と病院で測る血圧が違う理由

4/29(土) 11:01配信

月刊糖尿病ライフ さかえ

【質問】 自宅での血圧は低いのですが、病院で測るといつも高いのはなぜですか? (2型糖尿病 10 年、 63 歳、男性)

【回答】
 糖尿病患者さんは、腎症や大血管障害などの合併症の発症予防や進展阻止のために、血糖値だけではなく、血圧もしっかりコントロールする必要があります。


【糖尿病患者さんの目標値】
 糖尿病のない若年・中年・前期高齢者の治療の目標値は、外来では140/90mmHg未満、家庭血圧は135/85mmHg未満と設定されています。一方、糖尿病患者さんでは、外来で130/80mmHg未満、家庭血圧は125/75mmHg未満と厳しくなっています(※)。それほど糖尿病患者さんにとって血圧は大切なものです。

 血圧測定は、血圧計の水銀柱を何mm押し上げる力があるかをみています。水銀を使わない血圧計が多く使用されるようになりましたが、いずれもこの水銀血圧計に合わせて設定されています。血圧計自体は精度が良くなっており、出た数字は信頼できるかと思います。不安でしたら、受診時に血圧計を持参して、病院の数字と比べてみるのがよいと思います。

 昨今、手首で測る血圧計もありますが、上腕で測る(肘より上に帯〈カフ〉を巻いて測る)のが正式な測り方※です。手首では、骨や血管が2本に分かれているため正確な血圧ではない可能性があります。


【血圧測定時の注意点】
 ところが、問題は血圧測定時の状況です。日本高血圧学会のガイドラインにある外来での血圧測定の方法・条件(抜粋)をご紹介します(表)。

 実際には、外来での血圧測定はこれに沿って行われていないことが多く、外来での血圧値に疑問が投げ掛けられている(※)のも確かです。待合室の独特の雰囲気の中、上腕を差し込むだけの自動血圧計で測っている施設も多いようです。待合室の雰囲気だけでも血圧は上がることがあります。また、血圧計の加圧器に上腕がきちんと差し込まれていなかったり、腕の高さが心臓の高さになっていなかったり、シャツなどをたくし上げて腕を締め付けたり、厚めの上着のまま腕を差し入れたりしたのでは、正確な血圧の測定ができません。

 看護師に測ってもらう場合でも、血圧測定用の腕枕など使わず、測定する腕に何の支えもなく、手を伸ばしたまま、あるいは話をしながら測ったりすると、正確な血圧が測れたとはいえません。血圧測定は簡単にできる検査だけに、安易になりがちです。本来、慎重に測定する必要があるかと思います。

 一方、家庭血圧がとても大切なことも分かっています。再現性も外来での測定よりも優れていて、信頼も置けるようです。降圧薬の持続時間の評価の参考にもなります。外来では血圧が高いものの、家庭では低い場合を「白衣高血圧」といいます。この場合、脳卒中や心筋梗塞などの発症頻度は、血圧が外来・自宅ともコントロールされている人より明らかに多いとはいえないようです。一方、外来では低いものの、自宅では高い場合は、「仮面高血圧(逆白衣高血圧)」といって、いつも血圧が高い人と同程度に脳卒中や心筋梗塞を起こすとされています。

 なお、家庭血圧の測定方法に関しては、主治医などにお聞きください。測定法が適切であっても、血圧を何度か続けて測っていくと下がってくるのを経験した方は多いと思います。外来では少なくとも2回以上測定し、安定した血圧を採用し、家庭でも少なくとも2回は測定して、その平均をとるとされています。ただ、いずれの場合も静かな環境で安静にした後に測定することになっています。


【血圧は変動しやすいもの】
 また、血圧は変動しやすいものです。特に精神的な緊張やストレスで簡単に上がってしまいます。外来で長時間待たされたり、冷暖房の温度が適切でなかったり、待合室の雰囲気が合わなかったり、悩み事があったりすると高くなってしまいます。

 まず、家庭血圧を記録すること、そして外来での血圧測定の状況を考えて、必要であれば、診察室で主治医にゆっくりと測り直してもらうことも必要かもしれません。

※:「高血圧治療ガイドライン2014」(日本高血圧学会)より


「さかえ」編集委員長/日高病院 糖尿病科 部長
伴野 祥一(ともの・しょういち)

『月刊糖尿病ライフさかえ 2017年1月号より』

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時事通信出版局

2017年8月号
(第57巻・8号)

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