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広告の内容よりも、直前の心理状況が重要?:マーケティングの常識を覆す『プリ・スエージョン』

4/29(土) 8:10配信

DIGIDAY[日本版]

本記事は、WPPグループ最大のデジタルエージェンシー、VMLの日本法人の代表と、株式会社FICCの代表取締役を兼務する、荻野英希氏による寄稿コラムとなります。

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広告や販促活動の影響から、説得に至るまでの心理的プロセスを解説した『影響力の武器』から32年。ロバート・チャルディーニ博士がまたもや、実験データから人間の不合理な心理バイアスを解明し、マーケティングの常識を覆す新著を発表しました。『プリ・スエージョン』(説得以前)と題された本作では、説得が行われる前の心理状況の重要性が焦点となり、マーケティング効果を向上させるさまざまな手法が紹介されています。いまだ和訳の発表はされていませんが、皆さんに少しでも興味を持ってもらえるよう、冒頭部分からいくつかのポイントを紹介します。

チャルディーニの調査結果からは、成績優秀なセールスマンほど、セールストークを始める前の言動や行動に多くの時間をかけていることがわかっています。扱う商品や、販売条件を自由に変更することができないセールスマンにとって、相手の心理状況こそが、成約率をもっとも大きく左右する要因でした。優れたセールスマンは、セールストークの内容を工夫するのではなく、その受容性を高めることに努めていたのです。

コスト感覚に対する影響

あるコンサルタントは、7万5000ドルのフィーを提示するたびに、クライアントから減額を要求されていました。しかし、提示前に「100万ドルはかかりませんが…」と、一度非現実的な金額を述べることで、一切減額を要求されなくなったのです。高級チョコレートの販売実験では、事前に9桁の社会保障番号を書いた被験者が、対照群に比べて高い金額で商品を購入しました。私たちのコストに対する感覚は、相対的で、曖昧なものです。そして、一見無関係なものにも、大きく左右されてしまうのです。

好みや共感への影響

一見無関係なものは、私たちのコストの感覚だけでなく、商品やサービスの好みや、共感へも大きな影響を与えています。ワインの販売実験では、店内にドイツ系の音楽が流れているあいだはドイツワインが売れ、フランス系の音楽では、フランスワインの売上が伸びました。MOMA(ニューヨーク近代美術館)が「年間100万人以上が来館」という広告を、バイオレンス映画とともに配信した結果、ブランド好意度が大きく上昇しました。しかし、同じ広告をロマンス映画と配信した際には、好意度が低下したのです。チャルディーニの説明は、映画の内容によって、便益の受容性が変わるというものです。バイオレンス映画のような、恐い刺激を受けた相手は、安心を求め、周囲に馴染むこと(fit-in)を促すメッセージに共感してしまうのです。反対に、ロマンス映画の場合は、自身の独自性を示したいと感じるため、周囲から目立つこと(stand-out)を促すメッセージに共感しやすくなります。

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