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忘れられない元彼との再会。未だに甘く響く彼の声に、容赦なく傷つけられた日

4/29(土) 5:20配信

東京カレンダー

私の大好きな彼氏には、結婚願望がない。

それを知ったのは、30歳の誕生日。順調な交際を2年も過ごした後だった。

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東大卒のイケメン弁護士・吾郎との「結婚」というゴールを、疑うことのなかった英里。彼が結婚願望ゼロと知った日から、不安と焦りが爆発。

度重なるケンカの果てに、とうとう吾郎との破局を迎えた英里。傷心を乗り越え、結婚願望のある男・きんちゃんとの交際をスタートするが、早々にプロポーズともとれる発言が飛び...?

「英里ちゃんも、花嫁さんになる?」

親友の咲子の結婚式の最中、きんちゃんの突然の爆弾発言に、英里は思わず息を飲む。

会話の弾みでたまたま出てしまった軽口なのか、それとも本気で結婚を仄めかしているのか。

思わず顔を見上げると、きんちゃんはいつもの優し気な瞳で英里を見つめていた。しかしその表情は、至って真面目だ。

「最初に言ったけど、僕は英里ちゃんとの関係を、長い目で見たいと思ってるんだ」

きんちゃんは、動揺する英里の先回りをするように、丁寧に続けた。

「お互いもう30歳だし、僕は男としての責任もあると思ってて......。英里ちゃんを急かすわけじゃないけど、僕が将来のことも考えてること、覚えておいてくれたら嬉しいな」

最後にニコリと笑い、恥ずかしそうに目を逸らしたきんちゃんに、英里は胸が締めつけられる思いがした。

「きんちゃん、ありがとう」

英里はきんちゃんに、そっと抱きつく。

柔らかで温かな彼のぬくもりが、英里は大好きだ。この優しさに一生包まれていられるなんて、きっと幸せなことに違いなかった。

お互いの将来を自然に意識し合える。優しい恋人への有難み

「あっ、でも、もしプロポーズするなら、もっときちんとするから!今のは打診というか、なんというか...」

しどろもどろするきんちゃんに、英里はさらに愛しさを感じる。

「私もきんちゃんと同じ気持ちだよ。これからは、一緒に将来のことも話し合えたらいいな...」

思い切って英里が言うと、二人の間には、くすぐったいような温かで平和な空気が流れた。

きんちゃんは、本当に素敵な人だった。英里のことを真剣に考えようとする姿勢が、痛いくらいに伝わる。二人の関係は順調そのものだ。

「咲子ちゃん、綺麗だね」

穏やかな眼差しで新郎新婦を見送り、心からの祝辞を口にするきんちゃんの真っ当で素直な心が、英里の心をいちいち癒してくれた。

もしも隣にいるのが吾郎であったら、

―結婚式なんて、やっぱり茶番だな―

なんて嫌味なセリフを、特に悪気もなく口にしたりするだろう。ましてや自分たちの結婚に連想させるなんて、絶対にしない。

お互いの友人の結婚式で、自分たちの将来を意識する。何の障害もなく、そんな会話が自然とできることに、英里はしみじみと有難みを感じていた。

「結婚」という言葉を地雷のように扱っていた吾郎との日々のトラウマは、だんだんと昔話になっていった。

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最終更新:4/29(土) 5:20
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