ここから本文です

東京・ホテルストーリー:恋人に裏切られた夜。知らない男に、驚くほど無防備になった私

4/29(土) 5:20配信

東京カレンダー

東京の女には、ホテルの数だけ物語がある。

「ホテル」という優雅な別世界での、非日常的な体験。それは、時に甘く、時にほろ苦く、女の人生を彩っていく。

【この記事の全ての写真】

そんな上質な大人の空間に魅了され続けた、ひとりの女性がいた。

彼女の名は、皐月(さつき)。

これは、東京の名だたるホテルを舞台に、1人の女の人生をリアルに描いたストーリー。

埼玉出身のごく普通の女子大生だった彼女の人生は、少しずつ東京色に染まっていく。

「誰にも引け目を感じることのない、上質な都会の女になりたい」

私はいつからか、こんな目標を強くかかげて生きてきたように思う。もちろん、心の中でだけ、こっそりと。

大学1年生のときに経験したアフタヌーンティーでの洗礼をはじめ、東京という街は、煌びやかな場所に近づこうとすればするほど、己の未熟さを思い知らされ、敗北感を味わうことだらけだ。

都心で過ごした学生時代の4年間で、私は多くのことを学んだ。

一流企業に勤める社会人の彼に恋をしたときは、心ときめくロマンチックなデートや豪華なプレゼントと引き換えに、愛する男に裏切られるという痛みを知った。

我が物顔で港区を闊歩し、芸能人や経営者と毎晩のように宴を繰り広げる女子大生のグループの仲間入りを果たしたときは、上限が果てしなく続くマウンティングの世界を目の当たりにし、途方に暮れた。

それでも、都会の魅力からは離れられない。

一体どうすれば、東京のど真ん中で、胸を張って立っていられるのか。

必要なのは、職業という肩書なのか、自慢できる恋人なのか、どう頑張っても手に入らない、家柄なのか。

答えが分からぬまま走り続け、私は社会人になった。

年上の恋人から、別世界への招待

都内の高級ホテルを自然と使いこなせる女になるのは、私の理想とする大人の女性像の、一種の指標のようなものだった。

―いつか、パークハイアットに泊まれるような大人になる―

そして、18歳のときに自分に誓った約束は、社会人になって間もなく果たされた。

私は年上の、力のある恋人を手に入れたのだ。



社会人になったばかりの私は、上質な大人の女を演じるため、とにかく必死だった。

就職先は色々と悩んだが、大手弁護士事務所の秘書を選んだ。「一般職」的なお給料としては悪くないし、聞こえもいい。

服のサイズは7号をキープ、ヒールは7センチ以上。まつ毛とネイルのメンテナンスは3週間おきで、髪はサロンモデルをしている美容院でマメに艶を保ってもらう。

大人の仲間入りをしたばかりで、背伸びをしたい年頃だった。

緒方さんと出会ったのは、そんな気の張った生活を送っているときだった。

その夜は、仕事後に学生時代からの友人である優子と合流し、仲の良いIT系経営者の男たちと、西麻布の『ボヘミアン ニシアザブ』で食事をしていた。

会員制で電話番号非公開というこの店は、秘密の隠れ家感があり、私たちのお気に入りだった。有名人も何度か見かけたことがある。

1/3ページ

最終更新:4/29(土) 5:20
東京カレンダー

記事提供社からのご案内(外部サイト)