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新入社員を「5月病にさせないため」に、先輩が心がけるべき3つのこと

4/30(日) 16:30配信

HARBOR BUSINESS Online

 ゴールデンウィークを迎え、この春から新社会人として仕事を始めた若者たちも、少しは職場の雰囲気に慣れたころではないでしょうか。同時に、この時期はいわゆる「5月病」に悩む人が多くなる季節でもあります。

 この手の話は、新人の側に責任を求める論調が幅を利かせがちです。しかし、中小企業診断士・経営コンサルタントとして主に中小企業の人事制度に関わる機会が多い私から見ると、企業側にも問題があるケースが多々見受けられます。

 今回は構造的な人材難が叫ばれる昨今、せっかく採用した新入社員を5月病に陥らせず、立派な職場の戦力として育てるための3つのコツをお伝えしたいと思います。

◆1.何かあっても冷静になる

 何事もそうですが、感情的になって良いことなどひとつもありません。新入社員の仕事ぶりを見てイライラすることも多いでしょうが、ここは鷹揚に構えて、じっくりと指導することを心がけましょう。怒鳴りつけたりするなどもっての外です。

 これは医学的にも適切なことらしく、人間は感情的になると脳の一部である大脳辺縁系が活発に働き、頭が混乱して合理的な判断ができなくなるのだそうです。先輩や上司に怒鳴られれば部下の方も感情的になりますから、たとえ言われたことが正しくても、その内容が頭に残りにくくなるようです。

 私のサラリーマン時代の若い頃を思い出しても、怒鳴り散らす上司が言ったことで覚えていることなどほとんどありません。覚えているのは、「あの時は悔しかった」「腹が立って仕方なかった」というような感情面のことばかりです。逆に、今でも仕事をする上で役に立っているアドバイスや金言は、やはり落ち着いた状況で語られた言葉が多かったように思います。

 一昔前ほどではありませんが、今でも部下を怒ったり怒鳴ったりするのが「情熱的」「真剣に仕事をしている証拠」だと勘違いしている人を見かけます。個人的な偏見を言えば、40代後半から50代半ばくらいの、日本が最後に景気がよかったバブル期に社会に出た人たちにこの傾向が強いように感じます。

 本人としては「俺たちもこういう風に鍛えられた」「部下を叱咤激励して何が悪い」と思っているのかもしれませんが、メンタルヘルスケアの重要性が叫ばれる昨今、このような態度を続けてもあまりいいことはないような気がします。

 組織を円滑に運営するためにはコミュニケーションが不可欠ですが、感情が表に出ることは間違いなくコミュニケーションの阻害要因です。コミュニケーションが取れなければ、経験のない新入社員に十分な指導はできません。特に中小企業の場合は社員同士の関係が密になりがちな一方、相談できる同期は少ないことから、一度、関係構築に失敗すると過度に新入社員を追い詰めることになります。

 仕事のできない新人クンを見てカーッと怒りがこみ上げたら、何か言う前に一度深呼吸してみましょう。それが新人クンのみならず、自分も助けることになります。

◆2.「なぜ」と問わない

 コミュニケーションで言えば、新入社員のような現代の若者と会話するのが苦手だ、という人は多いと思います。しかし、円滑な関係構築のためには、上司の側から話しかける必要があります。個人の性格にもよりますが、普通は新入社員のほうから上司や先輩には話しかけづらいものです。

 難しく考える必要はありません。話題は仕事のことだけで十分です。下手に趣味や流行りの音楽のことを話題にしても、それで会話が進むなどということはまずありません。

 この際に気をつけるのは「なぜ」という質問はできるだけしないことです。「なぜこうしたんだ?」「なぜこうしなかったんだ?」という問いは相手の取り方次第で心理的に圧迫する言葉になってしまい、その後の意思疎通に悪影響を与える恐れがあります。

 しかし、厄介なことに、今ビジネスの現場ではこの「なぜ」という問いを発することが、妙にもてはやされています。トヨタ生産方式における「『なぜ』を5回繰り返す現場改善(なぜなぜ分析)」や、ビジネスマンに人気のある元プロ野球監督の野村克也氏が「なぜ」と考えることの重要性を繰り返し著書で強調していること等から出てきた風潮です。

 確かに、ある程度経験を積んだ社員が大した考えも持たずに仕事をしていることは問題でしょう。それを改める意味では「なぜなぜ分析」も有効かもしれませんが、これを経験の乏しい新入社員に当てはめることは危険です。多くの場合、気の利いた返答などできるわけもありませんから、ムダに自信を失わせるだけです。

◆3.「何を」「どのように」を質問の中心に

 そのかわり、私がおすすめするのは、「どこに」「誰に」「何を」「どのように」という質問を意識的に多用することです。例えば営業担当の部下であれば、「今日はどこの得意先に行ったの?」「そこで誰と話したの?」「担当の××さんは何か言ってた?」「××さんってどういう印象?」という感じです。

 これらは答えやすく、かつ単なる「はい/いいえ」で終わる質問ではありませんから、会話を続けやすいという利点があります。もし、「××さんって、少し怖い感じですね」という答えが返ってきたら、「そうだね。でもあの人は一見取っつきにくいけど、ウチのことをいつも気にかけてくれてる大事な人だよ」という風に、自然な会話の中で重要な業務情報を伝えることもできます。このほうが頭ごなしに言われるよりも記憶に定着しやすいことは前項で述べた通りです。

 新人との会話が苦手だ、という人は、いきなり会話をしようとするのではなく、まずは「簡潔な質問」をしてみよう、と考えてみたらどうでしょうか。

 以上、新入社員を育てるための3つの簡単な心がけをお伝えしてきました。

 今の日本は完全失業率2.8%という完全雇用に近い労働市場、すなわち売り手市場です。加えて、少子化のため若い労働力は今後ますます貴重になっていきます。そのような状況で、育成力のない会社、指導力のない上司が若者に見切りをつけられる可能性はどんどん高まるでしょう。

 確かに、人材育成は企業支援の中でも難しいテーマのひとつです。時間もかかります。でもこれに真剣に取り組むか否かは、5年後、10年後の会社の発展に大きく影響してくると思います。

<文/多田 稔>

【多田 稔】

中小企業診断士、経営アナリスト。「多田稔中小企業診断士事務所」代表。経営コンサルティング・サービスに携わる傍ら、「シェアーズカフェ・オンライン」などで企業分析・会計に関する記事を執筆

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最終更新:4/30(日) 16:43
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