ここから本文です

末期の胃がんと闘う「がん専門医」が描く“理想の医療”〈dot.〉

dot. 5/4(木) 7:00配信

 金沢市の中心部、兼六園の近くにがん患者とその家族・友人などが集まり、専門家の支援を受ける開かれたスペース「元ちゃんハウス」がある。オープンして約5カ月で訪問者は延べ500人。足を運ぶと、陽光の差し込む室内で十数人がテーブルを囲み、抗がん剤の副作用や術後の経過などについて話していた。表情は皆、穏やかだ。

 人の輪の中で「うん、うん」と何度もうなずきながら話を聞いているのは「元ちゃん」。金沢赤十字病院副院長を務める大腸がんの専門医・西村元一さん(58)で、胃がんの患者でもある。同ハウスは、がんになったからこそ見えた「がん患者に必要な支援体制」を体現した場といえる。患者になった医師が思い描く理想の医療とは?
 
 西村さんは2015年3月26日、肝・リンパ節転移を伴う胃がんの診断を受けた。病期はステージIV。青天のへきれきである。気分が悪くなりトイレに駆け込むと、タール便が出て、吐き気がした。診断が出るまでの過程では、症状から冷静に分析を進める医師の視点を失っていなかった。

 6年間、胃がん検診を受けていなかったとのこと。医師として可能な限りの時間を割いて患者に向き合い、学会で全国を飛び回っていた。休日もがん予防に関する公開講座の講師を務めたり、医療・介護関係者の勉強会・交流会に参加したり……。理由はいろいろあるが、「結局、がんを人ごとだと考えていた」という。その末に受けたがん宣告だった。

「医者の不養生とは、このことだね……」(西村さん)

 乾いた笑いに、後悔がにじむ。とはいえ、どんなときにも喜怒哀楽の「喜」と「楽」を忘れない「元ちゃん」。がんになっても変わらない明るいキャラクターは健在である。

 西村さんと初めて会ったのは12年10月である。「金沢一日マギーの日」というがん患者の支援を進める催しだった。「マギー」とは、英国のがん患者支援施設「マギーズセンター」を指す。西村さんは13年3月に「金沢にマギーを」との目標を掲げて「がんとむきあう会」を創設した際の中心メンバーだった。「議員さんや行政に、どう働きかければいいか?」などと構想を巡らせ、活発に動き回る日々。当時、西村さんは次のような思いを力説していた。

「手術を担当した自分が、その後もじっくりと話を聞いて患者に寄り添っていければいいが、なかなか難しい。また、治療以外の部分では分からないことも多い。看護師、栄養士、カウンセラーなどさまざまな専門職が常駐し、多方面からがん患者の悩みにこたえられる相談の場が欲しい。患者や家族が自由に集まる所が必要であり、金沢らしさを備えた、ゆったりと過ごせる空間ならば、いうことはない」

1/3ページ

最終更新:5/11(木) 11:15

dot.

記事提供社からのご案内(外部サイト)

dot.(ドット)

朝日新聞出版

「AERA」毎週月曜発売
「週刊朝日」毎週火曜発売

「dot.(ドット)」ではAERA、週刊朝日
アサヒカメラの記事や、dot.独自取材の
芸能記事などを読むことができます。さらに
アサヒパソコンのオンライン版もあります!