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【よくわかる講座:人材派遣】人材派遣の「歴史」

5/2(火) 7:30配信

日本の人事部

(1)新たな労働形態の誕生

●1985年までの人材派遣「前史」では、「業務請負」の形態

人材派遣は、企業で欠員の生じたポジション(職務)に適切な人材を提供する事業として、1948年に設立されたアメリカのマンパワー社が始めた人材ビジネスに由来する。日本では、そのマンパワー社の出資により、1966年にマンパワージャパン(現在のマンパワーグループ)が設立され、企業の事務処理を行ったのが最初とされる。ただ当時は「労働者派遣法」がなかったために、現行のような人材派遣という形態を取ることができず、依頼先の発注内容に従い自社の雇用する社員を自社で指揮命令する「業務請負」の形態を取って、対応していた。

やがて、国内系の商社や銀行もそのような形での人材サービスを利用するようになり、社会的に人材派遣に対するニーズが高まっていった。それに応える形で、テンプスタッフ(1973年設立)やパソナ(1976年設立)をはじめ、現在大手といわれている国内系人材派遣会社が1970年代に誕生した。

●労働者保護の趣旨の下、1986年に人材派遣が誕生

1980年代に入ると、人材派遣というサービスがビジネスシーンに定着し、ユーザーからも一定の評価を得るようになった。そのため人材派遣を合法化して、適切に管理した方が労働者保護につながるという考えが政府内でも主流となり、1985年に「労働者派遣法が」成立し、翌年、施行された。ここに来て、ついに人材派遣が日本社会において正式にスタートすることになった。

それまで、それぞれの会社が独自のスタイルで行っていた人材派遣は、派遣先が直接スタッフに指揮命令することができるという権利を獲得し、「労働者派遣」という統一した法律の枠の下、一つの事業として行われることになった。ただし、初期の「労働者派遣法」は労働者保護の色彩が強く、直接雇用の労働者が派遣スタッフに置き換えられる可能性が少ない専門的な13業務に限って派遣を認める、という内容に限定された。その後、機械設計なども加えて16業務となったが、それでも非常に限定的な解禁である。そのままでは、業務請負時代からニーズの高かったオフィス業務(一般事務)のスタッフなどは派遣できないため、一般事務をファイリングや事務用機器操作(OA事務)として派遣するといった“折衷的”な手法が取られた。
●1990年代、規制緩和の流れで人材派遣の活用が広まる

バブル景気の影響もあって、1986年の「労働者派遣法」施行後、人材派遣市場は順調に拡大していった。しかし、バブル崩壊後の1990年代から2000年代にかけて一転、多くの日本企業が売上を減少し、金融危機、デフレの長期化といった低成長期に直面することになる。閉塞的な経営状況を打開する対応の一つとして、直接雇用の「人件費(固定費)」を、人材派遣の活用による「変動費」に置き換えたいという産業界のニーズが高まった。さらに、規制緩和によって民間の活力を引き出すという当時の政府の基本方針もあり、この時期には幾度かに渡って「派遣業務の対象範囲拡大」や「派遣期間延長」などの法改正が行われた。

その中でも、1999年の「対象業務の原則自由化」と2004年の「製造派遣解禁」は、産業界にとって非常に大きなインパクトを与えるものだった。これらは営業、販売、一般事務、製造といった専門業務以外の業務に対する企業の派遣ニーズの高まりや、経営戦略にアウトソーシングが大きく組み込まれるようになった時代背景に沿ったものと言える。
●リーマンショック後、「派遣切り」などが社会問題化し、規制強化の流れへ

ところが、2008年のリーマンショック以降、製造業を中心に派遣切りや雇い止め、人材派遣をめぐる違法行為の発覚などが相次いだ。さらに、職を失った若者が日雇い派遣で生計を立てながらネットカフェで寝泊まりするような状況が一部メディアで報道され、若年層の貧困化やワーキングプアの存在が社会問題化した。

このような社会問題の一因に、人材派遣という雇用スタイル(働き方)があるのではないかという議論が高まり、人材派遣業界に対して“逆風”が吹き始める。これまでとは打って変わり、2012年の改正派遣法では、人材派遣に対する規制を強化する方向性が示された。具体的には、日雇い派遣の原則禁止、専ら派遣の規制強化、離職後1年以内の人材を派遣スタッフとして元の職場で働かせることの禁止など、労働者保護、直接雇用の促進などを強く意識した内容である。ただ、同時期に議論されていた製造派遣の禁止や、登録型派遣の禁止といった人材派遣業界により大きい影響を与える改正に対しては慎重な見方が取られ、見送られることになった。

紆余曲折を経て、2015年には人材派遣事業の適正な運営のために「労働者派遣法」の大幅な改正が行われた。注目されるのは、規制強化と緩和の二面性のある改正となっていることだ。規制強化の一面としては、派遣業者は全て「許可制」となり、派遣労働者が希望すれば派遣先への直接雇用を依頼しなくてはならないなどの「雇用安定措置」が義務化された。一方、規制緩和の一面では、「何年でも派遣労働者を受け入られるようになる」など、全ての業務で人を変えれば継続的に派遣を利用することができるようになった点が挙げられる。ここには人材派遣を健全な形で成長させていこうとする、政府の思惑が感じられる。

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最終更新:5/2(火) 7:30
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