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【いいね!源泉かけ流し】強酸性の湯が一晩で傷をかさぶたに!? 殺菌力でテカテカ光る脂性も解消!

5/2(火) 7:30配信

旅行読売

御宿万葉亭(福島・中ノ沢温泉)

 1分間に1万3400リットルもの源泉が湧く様子を想像できるだろうか。一般的な家庭の浴槽では1回の入浴に約200リットル入れるので、わずか1分間に約67回分を満たす量である。
 これは磐梯山の東方、安達太良山麓にある中ノ沢温泉と沼尻温泉が共同で所有する1本の源泉の話だ。中ノ沢温泉11軒と、沼尻温泉3軒で分け合っている。もったいないが、自然湧出のため使い切れない温泉は捨てている。
 一帯にはかつて硫黄鉱山があり、1968年に閉山するまで3000人以上が住んでいた。「黄色いダイヤ」と呼ばれた硫黄は医薬品や火薬などの原料として重宝され、運搬と生活のために鉄道が敷かれ学校や病院もあった。当時、労働者を癒やしたのがこの温泉である。
 訪れた中ノ沢温泉・御宿万葉亭の専務・渥美慎司さんは、「私の曽祖父も鉱山で働いていました。閉山とともに鉄道は温泉やスキー客向けに使われ、隣の沼尻温泉にあった沼尻駅まで客を迎えに行ったと聞きます」と話してくれた。
 1897年、温泉街で「小川屋」の名で料理屋を始め、時折、常連客を泊めていた。当時から源泉を引湯し、大正期に入って宿として営業開始。1991年、にオープンしたのが、御宿万葉亭だ。全14室、16歳未満は泊まれない静かな宿である。

湯守がマメに源泉管理。静かに湯の華と戯れて

 風呂は男女別に内湯と露天風呂、それに無料で入れる貸切露天風呂がある。源泉かけ流しだ。共同源泉が安達太良山の火口近くにあり、木の樋(とい)を通して宿まで直線距離で約7キロを引いている。
 「泉温が70度近くもあり、樋の中で湯もみされ、宿に着く頃には角が取れたまろやかな源泉に。泉温も55度~58度まで自然に下がります」と渥美さん。
 内湯は総木造りで、壁や天井、床はヒバや松、湯船にはヒノキを使用。天候により湯が白濁する日もあるが、ほぼ透明。とはいえ、湯船の底には一面に湯の華が溜まり、つま先でかき混ぜるように触れると静かに舞う。湯口から注がれる源泉の量はそう多くない。湯量は豊富でも湯船に注ぐ源泉の量で温度を調整しているためだ。宿には湯守がいて、適温になるようマメに微調整している。宿泊客が帰った後に湯船を空にし、再び時間をかけて源泉を注ぐ毎日を繰り返している。
 「pH2.1の強酸性なので殺菌力は高く、すり傷程度なら一晩でかさぶたができ、自然に治癒します。角質をとって肌の再生を助けてくれるので、体を洗う際も強くこすらないように。洗い過ぎると、かえって温泉の刺激が肌に強過ぎます」と、渥美さんが教えてくれた。第二次世界大戦後、横須賀に戻った東北出身の兵が郷里へ帰る際に、上官から「途中、中ノ沢温泉で殺菌してから帰るように」とすすめられたという話も残っている。
 その成分力を確かめたくて、コップにくんだ源泉に10円玉を入れて一晩寝かせた。翌朝、10円玉の半分ほどがピカピカの輝きを取り戻していた。あぶらとり紙を愛用する私は、脂ぎった鼻のテカテカもなく、翌朝までその状態は保たれていた。
 肌の弱い人や乾燥肌の人は、湯上がりにシャワーで余分な温泉を流すといい。成分が強く、多く付着したままだと肌がより荒れることがあるという。適応症にも挙がっているが、中ノ沢温泉のある地元には糖尿病の住民がいないという。温泉に繰り返してつかることで実際に糖尿病にもいいようだ。
 そんな中ノ沢温泉では、年に4回ほど源泉から引湯する木の樋を整備し、湯の華を採取する。その時は大量の湯の華が宿の風呂まで辿り着き、どろどろに近いにごり湯になるという。源泉かけ流しの風呂が好きな人は、「温泉につかる」ではなく「湯の華につかる」、そんなぜいたくを体感してみてはどうだろう。
 その機会を待たずに、1泊でも驚いたのは家に帰宅した際のこと。息子が玄関で出迎えるや、「あっパパ、温泉の匂いがする!」と。宿では、夕食前と就寝前、それに早朝に各10分ほど入浴したに過ぎない。それでも匂いが残っているとは。源泉かけ流しパワー恐るべし。

文/松田秀雄

■温泉データ
泉質:酸性・含硫黄―カルシウム・アルミニウム―硫酸塩・塩化物泉
適応症:高血圧、皮膚病、糖尿病など
泉温:68.3度
湧出量:1万3400リットル/分(共同所有)
ペーハー値:pH2.1
加水:なし
加温:なし

御宿万葉亭
電話 0242・64・3789
住所 猪苗代町蚕養沼尻山甲2855-166
料金 1泊2食1万7430円~
交通 磐越西線猪苗代駅から達沢・高森行きバス38分、中の沢下下車徒歩3分/磐越道猪苗代磐梯高原ICから国道115号経由16キロ

最終更新:5/2(火) 7:30
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