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茄子紺、モスグリーン、赤ブラウン メイク効果を作り出す隠し色の秘密 CREA 2017年5月号

5/2(火) 12:01配信

CREA WEB

遊びはゼロ、人の顔の上だけで意味を持つ色のグループがあった

 メイクには、いつの時代もこんな提案がある。「ルールは何もない。自由奔放に色を遊びましょう」。でもそう言われていい気になって、自由に色を遊ぶとだいたい失敗する。ひとえに、顔の上だからである。

 実は、人間の顔ほど厳密なものはない。例えば、口の位置が2ミリ下にあっても、目と目の距離が2ミリ近づいても、印象が大きく変わるほど人の顔は極めて微妙なパーツと配置の集合体だからこそ、本来は多くのタブーとルールがあり、自由で奔放な色の遊びなどありえない。でも大丈夫。昔は、危険な色がいっぱい出回っていたが、試行錯誤を繰り返して、失敗を呼ぶ色は次第に排除され、今は色を遊べるまでに絞り込まれているから。

 そんな中、遊びはゼロ、人の顔の上でだけ重要な役割を果たす色のグループがある。最近、アイライナーやマスカラに改めてブラウンが目立つが、その多くは赤みを含んでいて、ただ馴染むだけじゃなく、黒以上に目を大きく見せてくれたりするはず。

“顔の上だけで成立する微妙な色彩学”のキモ

 一方、今時のネイビーは濃紺に赤みを混ぜた茄子紺系が多く、これもまた、黒以上に目を際立たせ、大きく見せる効果がある。この微妙な赤みが人の顔に含まれる血色と同調しつつも、前に出る色だから、目もとに華をもたらして強調。ダークカラーにおける赤みは極めて重要なのだ。

 同様に、モスグリーンもマークしなくてはならない色。絵画の世界では、人の肌の影を茶色ではなくモスグリーンで描く。つまり最も馴染む影色は、このモスグリーンなのだ。アイカラーに使えば不思議なほど顔と一体になって、完璧な影の役割を果たしてくれるし、下瞼のラインなど、モスグリーンをほのかに引くと、本当に自然で見事なクマドリになる。まさに“顔の上だけで成立する微妙な色彩学”のキモは、ここにあるのだ。

 物の影は、グレーか茶。でも肌の上ではモスグリーンが影の色として最も自然になる。それも肌色は、極めて特殊な色。絵の具に“肌色”という色名がなくなったのも、人種問題への配慮だけじゃない、肌色は肌色という色ではないのだ。もっとその奥にある様々な組織の色を複雑にはらんでいる、一面的ではない色。タンパク質の色、血液の色、脂肪の色、それらが相まって奥行きある色を作っているから、微妙な色使いが意味を持ってくるのだ。

 その肌の色においてとても重要なのが、黄色。黄色をおしろいとしてのせると見事にキメが整い、均一で透明感もある、ロウのような美しい肌になる。黄色人種の肌だから? いやむしろ黄色はキメそのものの色なのだと考えても良い。だからキメに馴染んで、キメも毛穴も見えなくする。

 これこそ、実際に肌の上に置けば意味が分かるはずだが、まさにそれが理屈では説明しきれない顔の上の色彩の不思議。こんな微妙な色彩学があること、きっと覚えていてほしい。隠し技の達人になるために。

齋藤 薫 (さいとう かおる)
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『“一生美人”力』(朝日新聞出版)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか? 』(マガジンハウス)など、著書多数。近著に『されど“男”は愛おしい』(講談社)がある。

齋藤 薫

最終更新:5/2(火) 12:01
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