ここから本文です

「木村拓哉さんは次世代の三船敏郎になる」 『無限の住人』プロデューサーが“予言”

5/3(水) 12:00配信

リアルサウンド

 第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した沙村広明のコミックを、監督・三池崇史、主演・木村拓哉で映画化したアクションエンターテインメント『無限の住人』が4月29日に公開された。不死身の肉体を与えられた侍・万次(木村)が、剣術道場を潰された少女・凜(杉咲花)の仇討のため、剣客集団との戦いに身を投じていく姿が描かれる。

 リアルサウンド映画部では、本作のプロデューサーを務めたジェレミー・トーマス氏にインタビューを行った。ベルナルド・ベルトルッチ、ヴィム・ヴェンダース、デヴィッド・クローネンバーグ、そして『戦場のメリークリスマス』の大島渚。世界各国の錚々たる映画監督たちと仕事をしてきたジェレミー氏の目に、俳優・木村拓哉はどう映ったのか。映画プロデューサーの仕事術から、『無限の住人』の魅力まで、熱く語ってもらった。

■木村さんは完全に“万次”となっていた

--本作の主人公・万次を演じた木村拓哉さんはあなたの眼にどう映りましたか。

ジェレミー・トーマス(以下、ジェレミー):木村さんは身体性に優れ、とてもハンサムな役者だ。そしてなにより強い信念を持っている。すべてのシーンでスタントを使わずに、完全に“万次”となっていた。大きなポイントだったのは、三池監督が手取り足取り演出をするのではなく、木村さん自身が演じるために余白を与えていたこと。彼もそれに応えた。木村さんが出演していたウォン・カーウァイ監督の『2046』は観ていたけど、万次のような演技ができるとは思ってもみなかった。彼にとって、役者として進歩していく中で、価値のある大きな1本になったと思う。これまでも素晴らしい経歴をもっているけど、この作品で国際的な役者としての扉も開かれるんじゃないかな。世界の映画ファンは「次の三船敏郎は誰だ?」とずっと待っている。もしかしたら、木村さんがその役目を担う可能性は十分あると思うよ。

--『十三人の刺客』、『一命』に続き、三池監督とは3作目のタッグとなります。あなたは三池監督のどういった点に魅了されているのですか。

ジェレミー:三池監督はとてもユニークな映画作家であり、世界中の誰よりも多作な監督だ。つまり、自分の“芸”といえるものを世界で最も磨いている作家とも言える。僕はケン・ローチ監督の編集助手から始まり、映画制作のすべてを経験して知ることができた。だからこそ、三池監督の作品は、どの作品を観ても「映画作り」のレベルの高さを強く感じる。特徴として、三池監督はカメラを1台しか使わない。『無限の住人』でも、あれだけのカットをわずか1台で、しかも質の高い映像として撮りきることができる。世界を見渡してもこれだけの力を持つ監督はなかなかいない。

--三池監督とはどういったきっかけで?

ジェレミー:僕がいちファンとして彼に会いたいと思ったことがはじまりだった。特に『オーディション』は素晴らしい傑作だったよ。三池監督の作品を初めて観たとき、日本だけではなく世界の人々にも絶対に届くと感じたんだ。そして、僕ならその力添えができると。

--あなたは日本人監督では大島渚監督とも仕事をしています。ふたりの共通点は?

ジェレミー:作風やテーマとしてきたものの違いはあるけど、ふたりは似ていると感じる。大島監督は、他人の目を一切気にすることなく、自分の描きたいものを描き通す、その強さがあったように思う。自分の信念を貫き通す強さは三池監督にも共通する点じゃないかな。三池監督は人としても監督としても、とても“ワイルド”。だからこそ、彼が生み出す作品は、わたしたち観客を驚かせることができるんだ。

■映画には“酸素”が必要だ

--あなたはプロデューサーとして監督とはどう接しているのですか。

ジェレミー:作品や監督によって接し方は変わる。例えば、英語が言語の作品であれば、企画から脚本開発、そして監督との対話も綿密にやりとりを重ねる。『戦場のメリークリスマス』のときは、基本的には英語だったということもあり、毎日現場に足を運んでいたよ。でも、本作の場合は言語が日本語だったからね。コメントをすることはあったけど、内容について大きくは踏み込んではいない。それよりも、この作品をいかに多くの人に届けることができるか、それが僕の使命だった。映画には“酸素”が必要だ。作品が観客の元に届くまで、動き出す酸素がね。プロデューサーの仕事は、酸素を作り出し送りこむことだと思う。『無限の住人』は、その仕事を、自信をもってできる作品だったよ。

--あなたがプロデューサーとして一番大事にしているものは?

ジェレミー:偉大な監督と一緒に仕事ができることはとても光栄なことだ。自分の手がけた作品を観てもらえば分かると思うけど、一番重要視しているのは作品のテイスト。つまり、誰が出ているとか、市場が何を求めているかとか、そういったことは二の次で、監督を務めるのは誰なのか、そして何を描こうとしているのか、この2点で僕は関わる作品を選んでいる。監督なしには素晴らしい作品は生まれない。そしてプロデューサーは監督のことをよく理解しなければいけない。どんなに素晴らしい主題があっても、監督との相性が悪ければいい作品は生まれようがない。作り手のことを理解し、必要な素材と題材を提案すること、それこそがプロデューサーにとって一番大切な仕事だ。それは僕の特技でもあるんだ。

(取材・文=石井達也)

最終更新:5/3(水) 12:00
リアルサウンド