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ジダンが見せた勝負師としての真価。アトレティコに完勝、2度の布陣変更に込められた意味

5/3(水) 12:13配信

フットボールチャンネル

 現地時間2日、レアル・マドリーはUEFAチャンピオンズリーグ準決勝1stレグでアトレティコ・マドリーに3-0で勝利を収めた。誰もが予想しなかった大差の勝利はなぜ実現したのか。ジネディーヌ・ジダン監督が勝負師としての真価を見せつけた。(文:舩木渉)

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●見慣れないレアルの2トップ。ジダン監督の狙いは

 レアル・マドリーは強かった。とにかく強かった。

 現地時間2日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝1stレグ、本拠地サンティアゴ・ベルナベウにアトレティコ・マドリーを迎えたレアル・マドリーは、3-0で勝利。まさに言うことなしの完勝だった。

 今季3度目のマドリード・ダービーは、ただのダービーマッチ以上の意味を持っていた。4年で3度目のCLベスト4以上での対戦のみならず、2ndレグは来季からホームスタジアム移転が決まっているアトレティコの本拠地ビセンテ・カルデロンでの最後のゲーム。

 マドリーから見れば、史上初のCL連覇を成し遂げるために決勝進出を確実なものにしたい試合で、1stレグをホームで戦えるアドバンテージがあった。故に両チームの本気度は普段の試合とは比べ物にならないほどだっただろう。

 ガレス・ベイルを負傷で欠いたマドリーだったが、その不在を感じさせないパフォーマンスを見せた。特にジネディーヌ・ジダン監督の状況に応じた的確な采配が光る。これまで活躍の場を与えられてこなかったイスコを先発起用してトップ下に据え、クリスティアーノ・ロナウドとカリム・ベンゼマの2トップを採用した。

 前線の“BBC”に象徴されるように4-3-3が代名詞になりつつあったマドリーにおいて、トップ下を置く4-3-1-2は斬新ではあったが、昨今の戦い方を見ればより効率的な布陣であることがわかる。3トップの場合左ウィングで起用されてきたC・ロナウドは、年々ゴール感覚が研ぎ澄まされる一方で運動量は下降気味にあり、攻撃から守備への切り替えの局面で前線に攻め残る傾向がある。

 また、攻撃時も左サイドに張るよりも最前線のゴールに近い位置でボールを受けたがり、以前よりも純粋なストライカーに近いスタイルへと変化してきていた。つまり最初から2トップで前線に据えておけば、余計なエネルギーを使わずゴールを奪うことに集中できるという判断である。

●左利きのアセンシオを起用した確かな理由

 バロンドール4度受賞の男は、ジダン監督の要求に最高の形で応えてみせた。10分の先制ゴールを皮切りにハットトリックでマドリーを勝利に導く。そこにはかつてのようなイケイケのドリブラーではなく、超一流のストライカーがいた。

 終始試合を支配していたマドリーだったが、ジダン監督は90分間で2度布陣変更を決断している。1度目は68分のマルコ・アセンシオ投入時、それまでの4-3-1-2から普段の4-3-3に戻した。だが、C・ロナウドは普段と逆の右サイドに配置され、アセンシオは左サイドに入った。

 この采配にはジダン監督の明確な意図が透けて見える。まず、アトレティコはこの時点で交代枠を2つ使い、フェルナンド・トーレスとニコ・ガイタンを投入していた。ディエゴ・シメオネ監督は1点ビハインドの状況でチーム全体の攻撃意識を高めてアウェイゴールを奪いに出た。

 マドリーのジダン監督はその交代策を見て、前がかりになったアトレティコの背後を鋭利な“ナイフ”で突き刺しにかかった。なぜアセンシオを送り出したかにもしっかりとした理由がある。

 アトレティコは守備陣にけが人が多く、ファンフラン、シメ・ヴルサリコ、ホセ・マリア・ヒメネスといった選手たちが不在だった。それにより本職の右サイドバックが1人もいなくなり、マドリー戦はやむなく左利きのリュカ・エルナンデスを右サイドに据えていた。

 普段ならば以上なまでの完成度を誇るアトレティコの守備陣にほころびが生じていた。左利きのリュカは、対面の選手が内側へカットインしていく動きについていくのは問題ないが、縦方向に仕掛けられると利き足とは逆の足で対応せねばならず、どうしても後手に回ってしまう。

●2度目の布陣変更でトドメ。L・バスケスの高速カウンター炸裂

 ジダン監督は序盤からマルセロに攻撃参加させてリュカの能力を見極めていた。そして左利きのアセンシオを投入して畳み掛けようと考えたわけである。その結果、73分にアセンシオのクロスがC・ロナウドの2点目のきっかけとなった。

 2度目の布陣変更は78分にカリム・ベンゼマとの交代でルカス・バスケスが投入されたタイミングだった。4-3-3の並びに変更はなかったが、C・ロナウドをストライカーの位置に戻し、運動量豊富で攻守に無理がきくL・バスケスを右サイドに配置する。

 そして86分、カウンターからC・ロナウドの3点目が生まれる。マドリーは自陣からカウンターを仕掛けると、最後はルカス・バスケスの折り返しを背番号7が押し込んだ。

 この場面、8分前にピッチに入ったばかりで元気いっぱいのL・バスケスは、自陣でドリブルを始め、一度C・ロナウドに渡して再びボールを受け、ラストパスを出すまで70mほど全力疾走でピッチを駆け抜けた。マークについたディエゴ・ゴディンも一瞬で振り切られてしまった。

 アトレティコが万全でなかったとはいえ、試合開始から終了までマドリーの狙いが全てうまくはまったと言えるかもしれない。ジダン監督の選手起用、配置、布陣変更、戦術プラン…あらゆる要素が噛み合って実現した3-0完勝だった。

 ハットトリックを達成したC・ロナウドの功績は賞賛されるべきだが、それ以上にチーム全体の完成度と選手たちの献身、指揮官の采配といった周辺の様々な要素があってこその3ゴールだったことを忘れてはならない。

(文:舩木渉)

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