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70歳の初産、80歳の本気の恋 「セブンティ、エイティ」を描くマンガ CREA 2017年5月号

5/3(水) 12:01配信

CREA WEB

今月のテーマ「セブンティ、エイティ」

■【MAN】
70歳(セブンティ)の妻が
初産(ウイザン)に挑む

 65歳で会社を定年退職した日、江月朝一は、5つ歳上の妻・夕子から衝撃的な告白を受ける。「妊娠しました」。夫婦の間に子どもはなく、とうの昔に諦めていた朝一は、おろおろした挙げ句にコメントする。「お、俺の子か?」。70歳で初産を迎えた妻と65歳の夫という、ほとんどファンタジーだけれど可能性がゼロではない状況設定を、リアルにシミュレート。超高齢出産にまつわるネガティブな想像力をできるだけ排除するかわりに、倒れた妻を見て夫が思わず「脳梗塞!?」「つわりだっつーの!」など、コミカルさをプラス。

 生まれてくる子どもと一緒にいられる時間が、2人には絶対的に短い。子どもが大きくなった時、自分たちはもういないのかもしれない。でも――「誰よりも長い時間望まれて生まれてきたことを忘れないでください」。70歳の初産となったからこそ放たれたメッセージが、人が子をなし親となる奇跡と感動を高めている。

『セブンティウイザン~70才の初産~』(既刊3巻) タイム涼介

ギャグと叙情性(泣き)を同居させる作風で知られる漫画家が手掛けた、長篇ストーリー。70歳の妻が、65歳の夫のサポートのもと、初産に挑む。作中で触れられている、インド人女性が70歳で初産を果たしたというニュースは昨年起こった事実。「くらげバンチ」連載中。
新潮社 580円

■【WOMAN】
主人公は80歳のおばあちゃん
恋に仕事に、出直し戦が開幕

 長寿のお祝いのひとつに数えられる傘寿は、80歳を指す。

 夫に先立たれ、息子夫婦と孫家族と4世代同居をしている傘寿の幸田まり子は、家の中に居場所がないことを痛感する。「終の棲処」を求めて家を出、不動産屋に足を運ぶものの、80歳の店子はどこも受け入れてくれない。辿り着いたのは、漫画喫茶。「気楽だけどさびしい さびしいけど気楽」。ベテラン作家で、文芸誌でエッセイ連載を持つまり子は、1畳あまりの新しい仕事場で原稿を書く……。

 人は、毎日少しずつ、老いる。肉体的にも社会的にも、毎日少しずつ、弱者になる。だとしたら――「弱者の自分を 乗りこなせ」。世間が見つめろ考えろと突きつけてくる「残りの人生」という想像力をはねのけて、今の自分を生きろ! 時には立ち止まってしまいながらも、前を向き続けるまり子の東京サバイバル・ストーリーは、1巻ラストで急展開を果たす。何歳になったって、本気の恋はできるのだ。

『傘寿まり子』(既刊2巻) おざわゆき

太平洋戦争下の名古屋やシベリア抑留を生き抜いた日本人の物語を描いた作者が、がらっと作風を変え80歳のおばあちゃんをヒロインに。編集者、不動産屋、捨て猫、あこがれの人……。新しい出会いを重ねながら、人生の充実を得ようと格闘する姿を描く。『BE・LOVE』にて連載中。
講談社 580円

吉田大助

最終更新:5/3(水) 12:01
CREA WEB

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CREA

文藝春秋

2017年9月号
8月7日発売

定価780円(税込)

100人の、人生を豊かにする1冊、1曲、1杯
本と音楽とコーヒー。

岡村靖幸×ほしよりこ
高橋一生「ひとり、静かな生活」

ほか