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衝撃の世界デビューは83歳!ニューヨークの素顔を撮った求道の写真家ソール・ライター展

5/4(木) 18:10配信

サライ.jp

取材・文/池田充枝

2006年、ドイツのシュタイデル社から『Early Color』という一冊の写真集が出版されました。写真家の名はソール・ライター(Saul Leiter 1923-2013)。1940年代から50年代にかけてニューヨークで撮影されながら、長い間未現像だったカラー写真の数々には、まるで画家の眼を通して描いたような繊細かつ鮮烈な色彩世界が広がり、見る人々に衝撃を与えました。

写真集の出版を機に、ライターの元には世界中から展覧会や出版のオファーが殺到しました。83歳にしてようやく訪れた世界デビューでした。

ユダヤ教のラビ(教師)の子として生まれながら、聖職者より絵の道を選んだソール・ライターは、ニューヨークに出ると、実験的写真を使って作品を描いていた画家のリチャード・プセット=ダートと出会い、その親交を通じて写真術を身に着けていきました。

おりしも1940年代後半のニューヨークは「ニューヨーク・スクール」と呼ばれる画期的な写真を生み出す写真家が輩出し、ライターもその一人とみなされていました。

1960-80年代は『ハーパーズ・バザー』『エル』『ヴォーグ(英国版)』などのファッション誌で活躍しましたが、ライターが真に撮りたかったのは、自身が「写真は、終わることのない世界の中にある小さな断片と思い出を創り出すものだ」と語るような、内省的な写真でした。やがてファッション誌の仕事から身を引いたライターは、自分のためだけに作品を撮る隠遁生活に入っていきました。

そして、その後ようやく訪れた83歳での世界デビュー。2012年にはドキュメンタリー映画『写真家ソール・ライター いそがない人生で見つけた13のこと』が公開され(日本公開は2015年)、その名と作品はさらに多くの人が知るところとなりました。

そんな「都会の田園詩」ともいえるソール・ライターの写真を日本で初公開する展覧会「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」が、東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開かれています(~2017年6月25日まで)。

本展は、ニューヨークのソール・ライター財団の全面的な協力を得て、同財団所蔵の200点以上の写真作品(モノクロ、カラー)、絵画作品、その他貴重な資料を一堂に集め、天性の色彩感覚によって「カラー写真のパイオニア」と称されたライターの創造の秘密に迫る日本初の回顧展です。

本展の見どころを、Bunkamuraザ・ミュージアムの上席学芸員、宮澤政男さんにうかがいました。

「まさにこの展覧会のキーワードは“発見”だと思います。初期のカラー作品群が発見されたことで改めて注目を浴びることとなったということもさることながら、その作品のモチーフはこの写真家の発見の賜物であり、それを見る私たちも発見を共有できるのです。

日常のニューヨークで出会うなにげないシーンがこれほど魅力的なのは、その瞬間を切り取ることができたソール・ライターの才能以外の何物でもありません。そしてニューヨークという街に行ってみたいという衝動に駆られます。日常の中に隠された極上の瞬間を、会場で体験してください」

急がない人生をまっとうした写真家の作品と対話しに、ぜひ会場へ足をお運びください。

『ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展』
■会期:2017年4月29日(土・祝)~6月25日(日)
■会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
■住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
■電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)

取材・文/池田充枝

最終更新:5/4(木) 18:10
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