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『Fate/Apocrypha』から学ぶ! 一番わかりやすい『FGO』原典紹介(中編)

5/4(木) 17:01配信

おたぽる

 3月下旬に開催された「AnimeJapan 2017」にて、『Fate/stay night』(TYPE-MOON)のスピンアウト小説『Fate/Apocrypha』の』(著:東出祐一郎、画:近衛乙嗣)アニメ化が発表されました。『Fate/Grand Order』(TYPE-MOON、アニプレックス)も次々にイベントやストーリーが進んでおり、さらなる発展が期待できそうです。

 前回記事に引き続き、『Fate/Grand Order』にも参戦が濃厚であろう、またはすでに参戦している、『Fate/Apocrypha』に登場するキャラクターから数名をピックアップ、その原典などをご紹介していきます。


■赤のセイバー:モードレッド(アーサー王伝説)

 モードレッド(モルドレッド)と言えば「アーサー王を裏切り、主君を殺した邪悪な騎士」として広く知られているところであり、ある意味でアーサー王とは最も長く付き合っているキャラクターです。

 モードレッドというキャラクターの源流は、イングランドの古い文献に記されている、6世紀にアーサーという名の王と共に死亡した、メドラウドという関係不明の人物だと考えられています。

 また12世紀の偽史書『ブリタニア列王史』には、アルトゥールス王の甥モードレドゥスとして登場しており、王を裏切って王権を得ようとしたものの敗れて戦死、王もまた重傷を負いアヴァロンへと帰還した、と書かれています。


・不義の子は予言通りすべてを終わらせた

『アーサー王の死』のキャクストン版完訳となる『アーサー王物語』(筑摩書房)におけるモードレッドは円卓の騎士のひとりです。アーサー王とアーサー王の異父姉モルゴースとの近親相姦によって産まれた不義の息子で、モルゴースとその夫ロット王の息子であるガウェイン兄弟とは異父兄弟にあたります。

 近親相姦という罪の元に産まれたモードレッドは、その直後から災難に遭います。アーサー王の側近であった魔術師マーリンが「5月1日に産まれた子供が、将来アーサー王と王国を滅ぼす」と、暗にモードレッドの誕生を予言したため、5月に産まれたモードレッドを含めた子どもたちはすべて集められ、船で海へと流されてしまったのです。

 ほとんどの子どもたちは死んでしまったと思われますが、モードレッドは奇跡的に助かっており、親切な漁師に拾われ育てられます。そして成長したモードレッドはアーサー王の元へ行き、円卓の騎士の一員となるのです。

 原作中でのモードレッドは、確かに騎士道にもとる後ろ暗いことを少なからず行っています。ですが、若すぎる騎士の腕前について「馬に乗るのは熟練が必要、彼とて徒歩ならば立派に戦える」と擁護したり、仲間の冒険の旅を補佐するなど、円卓の騎士たちからは信頼を得ており、基本的には騎士道や正義に基づいた行動を取っています。

 そして物語の終盤、モードレッドを含めた12人の騎士が、円卓の騎士最強の存在であり、アーサー王の親友でもあるランスロットと王妃の不倫現場に乗り込み、不貞の証拠を掴み事実を暴きます。

 ランスロットは口封じのため、何とか逃げ延びたモードレッド以外の騎士を全員殺害します。さらに不貞の罪によって処刑される直前の王妃を助け出し、その際にも円卓の騎士たちを数多く殺害し、逃走するのです。

 これによってアーサー王とランスロットは完全に決別、円卓の騎士も2派に分裂し、アーサー王軍とランスロット軍との全面戦争へと至るのです。

 この戦争の最中、外国へと逃げたランスロット軍を追うため、アーサー王はモードレッドに国の留守を任せ出撃します。モードレッドはその隙を突き「アーサー王は戦死した」と偽の情報を流し、戴冠式を行って国を乗っ取ってしまうのです。

 モードレッドは孤独に蜂起したと思われがちですが、実のところ孤立無援などではありませんでした。国にはアーサー王の治世を良く思わない者も数多くおり、国内のほとんどの貴族はモードレッドに味方しています。

 そして慌てて戻ってきたアーサー王軍とモードレッド軍は、アーサー王最後の戦いとなる「カムランの戦い」を引き起こし、双方の兵士が殆ど死に絶えるほどの壮絶な戦いを繰り広げます。最終的にはアーサー王とモードレッドの一騎打ちとなり、モードレッドは戦死、アーサー王は致命傷を負い異世界アヴァロンへと旅立つのです。

 この時アーサー王は、何故か愛剣エクスカリバーではなく「槍」をもって、騎乗してではなく徒歩(かち)での一騎打ちを挑んでいるのですが、それに関しては機会があればご紹介したいと思います。

 余談となりますが、モードレッドが反乱を起こした理由や事情について、作中ではまったく触れられていません。自分の兄弟を多数殺したランスロットの肩を持つ父に不満を持ったのか、産まれてすぐに捨てられたことを恨みに思っていたのか、単なる気の迷いからなのか。その理由は読み手側が想像するしかないのです。


■黒のバーサーカー:フランケンシュタイン(小説)

 フランケンシュタインと言えば、大抵の場合「身体にボルトが刺さり、ツギハギだらけの顔をした、頭が弱い代わりに怪力を持つ大男」という特徴で、昨今さまざまな創作作品に登場している、日本でも馴染み深いキャラクターと言えるでしょう。

 ですが、原典となる小説『フランケンシュタイン』(日本出版協同)において、この怪物はそれら創作作品とは全く異なる存在であり、そもそも「フランケンシュタイン」という名前ですらないのです。


・フランケンシュタインという名の大学生が造った怪物

 まずこの怪物は、自然科学を学んでいた「ヴィクター・フランケンシュタイン」という大学生が、生命の謎を解き明かし自分自身で生命体を作り出そうと考え、「材料は納骨堂や屠殺場、解剖室からかき集めた」「手足はつりあいがとれ、顔つきは美しいものを選んでおいたのだ」という記述から、おそらく死体を組み合わせて作った肉体に生命が吹き込まれた人造人間です。

 ヴィクターはこれに名前を付けておらず、作中では「怪物」「被造物」「鬼」「悪魔」などの一般名詞でしか呼ばれていません。また外見は非常に醜い、とされていますが、作中にその具体的な描写はありません。また身体能力と知性は非常に高く、自己の存在や孤独に悩む繊細な心を持っており、言葉を発しての人間との対話や怪物自身の独白シーンも数多く見られます。

 フランケンシュタインを元ネタとした作品にしばしば見られる「結合した死体に高圧電流を流すことで怪物は生命を得る」「面長で平らな頭部に広くせり出した額」「首や頭にボルトが刺さっている」「知性は低く、非常に凶暴」という設定や外見は、1931年の映画『フランケンシュタイン』ではじめて描かれたものです。この映画が大ヒットしたことによって、「この外見を持つ怪物の名前はフランケンシュタインなのだ」という、原典にはない要素が誤解されたまま広まってしまった、と考えられています。


・親を求める怪物と、育児放棄をした生みの親

 小説『フランケンシュタイン』では生命を得た怪物の醜さに恐れをなし、ヴィクターは怪物を捨てて逃げ出してしまいます。怪物は森の中で生活しながら、火の使い方や食べ物の調理方法など、生きる術を独学で身に付けていきます。やがては言葉も扱えるほどとなり、拾った書物なども読み、知識を付け思考能力をどんどん高めていきます。

 ですがそのあまりの醜さに、出会う人間は誰もが怪物を忌み嫌い、迫害します。さまざまに思い悩みながら、やがて生みの親ヴィクターの元へやってきた怪物は、「これさえ叶えてくれれば二度と人間の前には現れない」と、自身の伴侶となる女の怪物を造ってくれるよう頼みますが、ヴィクターはこれを拒否します。これに絶望した怪物は、ヴィクターの友人や妻を次々と殺害していきます。ヴィクターはこれに怒り、復讐を果たすべく怪物を追跡するうちに北極海にて行く手を阻まれ、行き倒れているところを北極探検の船に発見されるのです。

 小説『フランケンシュタイン』は、普通のホラー作品としても楽しく読めます。ですがこの作品は、少し視点を変えるだけで「生みの親(創造主)に名前さえもらえず捨てられたが、それでも必死で生き延び、学び、自己の存在に悩みながら、親の愛を求め続けた怪物の物語」としても読み進められるのです。


■ホムンクルス(錬金術の伝説)
 錬金術や魔術を扱う創作作品にしばしば登場する、錬金術によって作られる人造人間「ホムンクルス」。ただその知名度に反して、本来のホムンクルスとは一体どのようなものなのか、ということはあまり知られていません。

 ホムンクルスとは、ラテン語で「小さな人」という意味であり、15~16世紀に活躍した錬金術師「パラケルスス」のみが唯一製造に成功したもの、と伝えられています。ホムンクルスについては、パラケルススの著書とされている『ものの本性について』に、その製法や外見、特徴など、多くの記述が残されています。

 この『ものの本性について』によって、人造人間ホムンクルスは世に広く知られることとなり、ゲーテの戯曲『ファウスト』などからはじまり、今なお数多くの創作作品へ登場するに至っているのです。


・やってみよう! ホムンクルス製造法

 それではパラケルススの著書から、どのご家庭でも実行可能な、ホムンクルスの製造方法をご紹介しましょう。

1. 蒸留器(球形のガラス瓶)に人間の精液を入れ密閉して保管、40日放置して、精液が生きて動き始めるまで腐敗させる。すると人間の形をした透明な、ほとんど非物体的なものが出現する。
2. これに毎日人間の血液を与えて慎重に養い、かつ馬の子宮の中と同じ温度に保つ。
3. そのまま40週間保存し育て続けると、それは本物の生きた子どもとなる。普通に生まれた子どもと同じく五体健全で、ただ小さいだけである。
4. ホムンクルスの完成。

 このようにして誕生したホムンクルスは、生まれながらにしてあらゆる知識を身に付けており、人間の言葉を理解し、さらには造り主の知らない新たな知識を与えてくれるといいます。


・ホムンクルスの正体とは?

 当たり前のことですが、これを実行に移したところで、名状しがたい謎の液体ができあがるだけです。ですが、パラケルススは錬金術師であると同時に、名高い医師でもありました。生物の生殖についての知識を持っていたはずのパラケルススが、実現不可能な全くのデタラメをわざわざ著書に残すとは考えづらく、この記述には何らかの裏の意味があるはずだ、と考えられています。

 数多くの考察がなされているホムンクルス製造法ですが、中でもフランスの神秘思想研究家「セルジュ・ユタン」の考察は特に興味深いものです。それによれば、ホムンクルスの記述はパラケルススが「賢者の石」に繋がる「金属の胚」の誕生を比喩的に語ろうとした、つまりパラケルススが研究した錬金術の秘技を暗に示している文章なのではないか、というのです。

 この他にも、20世紀最大の魔術師「アレイスター・クロウリー」によるホムンクルス製造法もありますが、要約すると「受胎後間もない胎児には魂が宿っていないので、それに魂が宿る前に精霊を憑依させ、肉体を持った精霊として出産させる」というものです。これは人造人間というよりは人造精霊、あるいは単なる出産と呼ぶべきものであるため、ここでは紹介を省きます。もっとも、こちらのほうがよっぽど確実に生命を作り出せる方法ではありますが。


――さて、いかがでしょうか。元ネタを知れば、キャラクターのエピソードや設定をより深く掘り下げられ、別の角度からも楽しめるようになるはずです。

 次回は、史実に名を残した人物などを原典としたキャラクターを中心にご紹介していきます。

■文・たけしな竜美
 オタク系サブカルチャー、心霊、廃墟、都市伝説、オカルト、神話伝承・史実、スマホアプリなど、雑多なジャンルで記事執筆、映像出演、漫画原作をしています。お仕事募集中です!
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最終更新:5/4(木) 17:01
おたぽる