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憲法改正で何が変わるのか --- 池田 信夫

5/4(木) 16:40配信

アゴラ

このごろ朝日新聞の「一強」キャンペーンを初め、自民党が右傾化しているという議論があるが、きょう出された首相メッセージ(http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK03H16_T00C17A5000000/)は、むしろ公明党や維新に接近して「左傾化」した印象を受ける。

“9条の平和主義の理念については、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければなりません。そこで9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います。”

これは公明党の「加憲」に似た感じだが、第2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と規定する条項を残したまま、第3項で自衛隊をどう書き込むのだろうか。たとえば今の政府見解にそって「自衛のための必要最小限度の実力を確保するため、自衛隊を保持する」と書くのは「実力」という日本語の使い方がおかしいし、実態はほとんど今と変わらない。

「教育無償化」を示唆するような話もあるが、これは日本維新の会へのリップサービスだろう。今でも政府が無償化しようと思えばできる。憲法に書き込むと文部科学省の予算が5兆円ぐらい増え、財政赤字がふくらむだけだ。維新を抱き込む多数派工作のために、こんな安っぽいポピュリズムを憲法に書き込むのは本末転倒である。

もちろん憲法を改正できるなら、したほうがいい。今の憲法は変則的な状況で占領軍がつくったもので、独立前に改正することが暗黙の了解だった。それを阻止したのは吉田茂(http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51969454.html)であり、当時の情勢判断としては必ずしも悪くなかったが、その後は改正のチャンスがなくなった。第9条は期せずして日本人の平和ボケに適合し、戦後日本の国体(http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51986049.html)になってしまった。

ただ日米同盟がある限り日本は実質的に核武装しており、憲法を改正しても抑止力に大した違いはない。しいていえば米軍の後方支援に制約があることぐらいだが、それも集団的自衛権についての「解釈改憲」で、ほぼ達成されたといってよい。それは望ましくないが、法的安定性は高い。

改正の必要があるとすれば、日米同盟のなくなるときだろう。逆にいうと、憲法改正を主張する安倍首相は、在日米軍基地を撤去して日本が「自主防衛」する未来を描いているのかもしれない。そのときは核武装が重要な課題となろう。それも一つの考え方なので、国会で自由に議論してはどうだろうか。

追記:公明党の山口代表(http://www.sankei.com/politics/news/170503/plt1705030050-n1.html)は「意欲的な意見だ」と肯定的に評価したという。公明党が安倍首相の改正案に賛成すれば両院の2/3を超えるので、改正の可能性が出てきた。

池田 信夫

最終更新:5/4(木) 16:40
アゴラ

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