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同窓会という名の人生自慢大会を乗りきる方法 横澤夏子×辛酸なめ子

5/5(金) 11:00配信

文春オンライン

 時代を先取り過ぎて、社会から「ヨコモレ」気味な珍スポットを発掘、するどい観察眼で紹介する「週刊文春」の人気コラムが『ヨコモレ通信MAX マニアック編』、『ヨコモレ通信MAX セレブ編』として電子書籍化されました。発売を記念して、本書に収録の横澤夏子さんとの対談「女たちの同窓会」を特別公開します。

◆◆◆

辛酸 横澤さんは今春発売されたムック『文藝芸人』の中で、「私が同窓会の帰りに泣く理由。」というエッセイを書かれていますね。私も読ませていただいて、同窓会というテーマをここまで掘り下げて書ける方がいるのか、とびっくりしました。

横澤 ありがとうございます。私、コンプレックスの塊なので、中学・高校の同窓会では、自分と友達をいちいち比べてしまうんです。友達の近況を聞いて、羨ましいなと思ったり、自分は劣っていると悲しくなったりして、毎回帰り道では涙が……。このことを編集者の方に話したら、「書いてみたらいいんじゃない」と。

辛酸 なるほど。

横澤 見栄っ張りなんでしょうね。同窓会では、話を3割増しで盛っています。芸人1年目の時は、お給料を月に数千円しか貰っていなかったのに、40万貰っていると嘘をついていました。

 そのくらい大変な思いをする同窓会なんですが、呼ばれないのは嫌なんです。だから、私が幹事をしています。

辛酸 え、そうなんですか!

横澤 「私だけ同窓会に呼ばれなかったらどうしよう」と心配になるんです。それで、「こんなに心配なら、自分で幹事をやってしまえ」と。

辛酸 出席した人にとっては、まさか幹事が裏で泣いていたとは知りたくないですよね。

横澤 確かにそうですね。「泣きながらビンゴ大会やっていたのか」みたいな(笑)。

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辛酸 横澤さんが初めて同窓会に参加した時は、かなり気合を入れて行ったんですか?

横澤 はい。テレビに出る時よりも気合を入れていましたね。洋服はそのために新しく買いましたし、アクセサリーは普段しないような豪華なものをつけました。お化粧は「つけまつげ、一体何本つけているの?」というくらいゴテゴテの状態で。もう宝塚レベル(笑)。

辛酸 それは結構お金がかかったのではないですか?

横澤 かかりました。お金がないのに服やアクセサリーを買ってしまうので、「ご祝儀貧乏」ならぬ「同窓会貧乏」でしたね。

 辛酸さんはいかがですか?

辛酸 そうですね。同窓会の前は、私も自分が自分でなくなるような焦りを感じて、普段は持たないようなバッグを買ったりします。この前の同窓会では、ブランド物をレンタルできるサービスに入って、イヴサンローランのバッグを借りました。それを持って同窓会に行ったら、会場に行く途中でバッグに汚れをつけてしまったことに気づいて、「このままでは弁償になる!」と焦って、同窓会中のほとんどの時間はトイレで汚れを落としていました。

横澤 辛酸さんの著書『大人のコミュニケーション術』を面白く読ませていただいたのですが、その中でも同窓会のエピソードが出てきますよね。すごく高い靴を履いていたのに、靴ずれになってしまったとか。

辛酸 そうなんです。4、5万円する靴で同窓会に行ったんですが、靴ずれが痛くて歩けなくなってしまいました。会場を移動するとき、みんな先に行ってしまって、道を一人で歩いている状態に……。同窓会は空回りすることが多いですね。

横澤 いつもと違うから、疲れてしまいますよね。

辛酸 はい。周りの人もこうやって頑張っているのでしょうか?

横澤 絶対みんな無理していますよ! 私はフェイスブックも同じだと思っています。フェイスブックはただの「自慢ブック」。私、その「自慢ブック」にどれだけ一喜一憂したことか。

 この前、友達が「ひな人形出すの、遅くなってごめんね」というコメント付きで、ひな人形と子供の写真をフェイスブックに載せていたんです。私、それを見ただけですごく泣けてきましたもん。ひな人形を買える経済力、おじいちゃん、おばあちゃんが「ひな人形出しなさい」と言ってくれる教育力、周囲を幸せな気持ちにさせてくれる子供の笑顔力。「一体どれだけ力あるの!?」みたいな。

辛酸 すごいですね。フェイスブックを見ることでもストレスを感じるのに、さらに同窓会に行くことで傷つくという。

横澤 自分から傷つきに行っているところはありますね(笑)。

辛酸 横澤さんは芸人として成功していらっしゃるから、同窓会ではヒエラルキーの上のほうにいると思うんですけど。

横澤 私もそう思っていたんですよ。テレビに出ているから、みんなチヤホヤしてくれるのではないかと。でも、全然そんなことはなかったです。地元の新潟県糸魚川では、警察官や消防士、お役所に勤めている子がヒエラルキーの一番上なんです。あとは子供を産んだり、親孝行している子。私みたいな自由業は、「チャラチャラして、いつまで遊んでいるの」という扱いなんですよね。

辛酸 1960年代を代表する女性ロックシンガーのジャニス・ジョプリンも、歌手として大成功を収めたのに、同窓会に行ったらみんなに無視されたそうです。その後、どんどんクスリに溺れていって、そのまま亡くなってしまいました。

横澤 ひぇー。私はクスリ、やってないですけどね。でも、もうすぐクスリに手を出してしまうかもしれないですね(笑)。

辛酸 同窓会はそれぐらい精神的に大変なイベントなんだと思います。

「同窓会」という単語でインターネットを検索すると、よく一緒に検索される単語として「行かない」が表示されるんです。実はみんな同窓会に行きたくなくて、同じように行かない人を探しているのでしょうか。私もそういう単語で検索して見つけたブログとかを読んで、同窓会に行かない人の気持ちに共感しています。

 最近だと、同窓会には参加しないで、後から、行った人の写真だけ見る時もあります。同窓会がどういう流れで進んだのかを把握しておきたいので。

横澤 それ、分かります。「2次会はこんなに汚い店に行ったんだ」とか、把握しておきたいですよね。

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最終更新:6/8(木) 18:51
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