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高騰する住宅と家を失い漂流する人たち

5/5(金) 17:50配信

WIRED.jp

経済成長と都市住宅開発規制の狭間で、都市部に暮らす中流階級の人々が家を失い、漂流している。米国は広がり続ける格差を解消できるのか。住宅事情を通して占うアメリカ経済の未来は──。

【高騰する住宅と家を失い漂流する人たち】

米マサチューセッツ州ボストンの中心地は小高い丘になっている。フォートヒルと呼ばれる小さな地区で、1800年代にフレデリック・オルムステッドが造園したハイランド・パークがある。

アメリカ独立戦争では、要塞として火薬の貯蔵に使われていた。グリム童話を原作としたディズニーアニメ『塔の上のラプンツェル』のヒロインが住んでいそうな塔が、かつての兵士たちの活躍を称えている。そして作家ウィリアム・ロイド・ガリソンは、この丘の上から奴隷制の廃止を訴え、世論と戦ったのだ。

いま、フォートヒルの町は、再び激戦の舞台となった。不動産を高値で維持したい人たちと、経済的な成長が見込める地域に引っ越したい人たち。住宅の売買をめぐる二者の攻防は、活気のある都市ならどこでも見られる光景となっている。米国の縮図だ。

年収1000万円超でも家賃を払えない

世界金融危機以降、主要都市の不動産・賃貸価格は上がり続け、所得格差も拡大している。ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークといった人気の都市に住める人は二極化した。高い家賃を払える富裕層か、住宅補助を受けられる節約上手な低所得者層に限られつつある。

“住宅戦争”の犠牲者となっているのが、中間所得者層だ。恵まれた職に就いており、住宅補助を受けるほど貧しくはないが、上がり続ける家賃を払えるほど豊かではない──。そんな人たちが苦境に陥っている。

大都市に住み続けられず、ある家庭は郊外へ、別の家族はより物価の安い地域へと移住を強いられた。海沿いの街や、デンヴァーやオースティンのような人気の高い都市では、彼らの多くが家賃の支払いさえ困難になってしまった。

「米国のほとんどの都市では、年収10万ドル(約1116万円)の家庭は持ち家を購入する余裕などありません」。テキサス大学の顧問弁護士で、住宅供給と中間所得者層の問題を専門とするメシェル・ディッカーソンはいう。

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最終更新:5/5(金) 17:50
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