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中国からの医療ツーリズム、ニーズも多様化。予防医療やアンチエイジングに注目

5/5(金) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 日本政府が2020年までに訪日外国人2000万人を目指すとした目標はすでに達成し、今年は、3月15日からの中国人団体ツアーの訪韓禁止の影響でさらに訪日中国人が増えるのではないかと予想されている。

 そんな中、中国から日本への「医療ツーリスト」が増加しているという現状を2015年12月にもお伝えした。(参照:「インバウンド消費は医療にも。増える中国人医療ツーリスト」)その記事から1年半ほど経過し、そのニーズはさらに多様化し、市場が拡大し続けている。

 中国からの医療ツーリストの目的でもっとも多いのは、PET/CT診断や人間ドックだ。中国では洋食の普及や社会の近代化の影響でがん患者が急増している。もちろん、中国でも、すでに大病院には日本と同水準の検査機器が導入されている。しかし、それでもなお日本でがん検査を行うことを希望する中国人は少なくない。

 というのも、中国国営『新華社』が発表した2015年中国におけるがん患者の5年生存率は36.9%だ。一方、日本は、国立がん研究センター発表、2007、08年調査で69.4%なのである。この数字は、すでに調査から10年近く経過しているので中国では日本の5年生存率は70%を超えているとの見方がメディア等で紹介されている。この数値には、もちろん医療技術の差や、人口比で最新機器が揃った病院の数が少ないこともあるんだろうが、実際のところは中国には国民皆保険制度が確立されていないので定期検診などの習慣も根付いておらず発見が遅れるという事情によることも大きい。しかし、それでも中国の富裕層にしてみれば、生存率7割超というのは魅力的な数値なのであろう。

 そして、いま、PET/CT診断や人間ドックに加え新しいトレンドが生まれているという。

◆中国からの医療観光ニーズ

「最近は、予防医療としてアンチエイジングや栄養学。美容医療としてのプチ整形などが女性を中心にニーズが高まっています」

 そう語るのは、中国からの医療ツーリズムをサポートしている医遊の劉麗娜代表だ。

「アンチエイジングの1つで、自己幹細胞で培養した化粧品を作ったり、注射や点滴を打つなども人気があります。培養期間は1週間ほどなので、1度帰国して、再来日して、化粧品を受け取ってもらいます。自分の細胞から培養したものなので相性がよく安心して使えます」(劉さん)

 ちなみに合計2回の訪日と滞在も含め自己幹細胞で化粧品を作るツアーは約500万円。点滴を打つツアーは約100万円ほどと高額だ。

「また、中国でも腸内フローラ改善に注目が集まっており、善玉菌へ入れ替えることでニキビや便秘改善の効果があり施術費は20、30万円(航空券や滞在費、医療通訳費等を除く)ですが、希望者は増えています」(劉さん)

 さらにがん検査の新しい技術として、早期発見とされる5mm以下の初期のがん細胞を見つけることがでる尿検査がある。手軽にかつ安く、効果的な検査として同社では、女性向けにゴルフ+尿検査の4泊5日ツアーなども提供しているという。

◆いまだ遅れる日本側の受け入れ

 拡大し続ける医療ツーリストのニーズに対して日本側の体制はどうなっているのだろうか。

 日本は、2012年に「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」を設け、現在19か所の医療機関が認証を受けている。しかし、外国人患者受入れの環境は整っているとは言い難く、経済産業省の調査によると、外国人患者の受入れ経験がある。または受け入れ体制があると回答した医療機関は17.6%。受け入れ体制が整っていない。受入れられないは48.3%となる(2015年)。

 この調査は2000年から3回に渡り実施されており、回を重ねるごとに受入れできるは増え、受け入れできないが減っているも受けられない理由としては、医療通訳など人手不足が3回共通してもっとも多い。そこで、外務省や経産省が、「国際医療交流コーディネーター」制度を設け、医療滞在ビザの取得や医療通訳の手配、滞在先の確保などを一括で行える会社を認定しており、現在45社が認定されて外務省のホームページで公開されている。

 まだまだ外国人受け入れ体制が整っているとは言えない日本の医療環境だが、近い将来、外国人患者が当たり前にいるという時代が訪れるのだろうか。

<取材・文/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma 取材協力/医遊株式会社>

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