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9条と教育無償の抱き合わせ改憲を懸念 --- 中村 仁

5/6(土) 9:26配信

アゴラ

2つの5兆円予算はポピュリズム

安倍首相が憲法記念日に、2020年に憲法改正を施行するとの目標を明らかにしました。その柱は9条で自衛隊の存在を明文化するとともに、教育の無償化を高等教育(高校、大学)にまで広げるよう憲法で制度化するというのです。大学までの教育無償化は政権の人気取りそのもので、警戒されがちな9条と、歓迎されそうな教育無償化の抱き合わせ改憲といえます。

防衛予算は約5兆円、教育無償化の費用も4,5兆円ですから、「2つの5兆円が憲法改正の目玉」とでも、いつか言い出すのですかね。「防衛予算にかけている5兆円と同じくらいの金額を、教育無償化に投入する」と、きっと強調するでしょう。タカとハトの抱き合わせで、国民の警戒感を緩めようという計算は、一種のポピュリズムです。抱き合わせにすると、9条問題の矛盾に正面から向き合う機会を国民から奪うことになりかねません。

平和ぼけという表現は、自衛隊違憲論、安保法制反対の勢力への批判として、よく使われます。タカとハトの抱き合わせ改憲は、今度は自衛隊容認派、安保法制支持派の平和ぼけを招いてしまうのです。首相の最大の狙いは自衛隊の明文化でしょう。財政的にも問題がある私学救済みたいな教育無償化をおとりにするのは止め、憲法改正の主目的こそ国民投票で問うべきなのです。

多くの国民はすでに自衛隊の存在を認知し、海外紛争でも国内災害でも活躍していることを評価しています。それなのに、憲法9条は「戦争放棄、武力行使の放棄、戦力の不保持」を明記しており、安倍首相が言うように、「政党や憲法学者の中には、自衛隊の存在は違憲とする議論が今もなお存在している」原因になっています。他国の侵略から国を守る自衛権はどの国にも認められています。そのための自衛隊ですから、憲法9条との整合性を明文化することは重要です。

押し付け憲法論を理由にするな

改憲論の根拠に、占領軍による押し付け憲法論を根拠にする人たちがいます。安倍首相もその一人です。2012年(自民党総裁当時)に「みっともない憲法です。日本人が作ったのではないですからね」と、語りました。第一次大戦の惨禍があまりにも悲惨だったため、1928年(昭和3年)に米英独仏日などがパリで、戦争放棄に関する不戦条約(パリ条約ともいう)を結び、日本も署名しました。平和憲法の源流です。

9条の基本的精神は、不戦条約の「国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、平和的手段で解決する」に由来します。占領軍が日本の新憲法の柱にしようとしたのです。新憲法の原案には、日本側の意見も取り込んでいるし、日本の国会で議決されましたから、「押し付けだから改憲を」は正しい主張ではないでしょう。

では、どのように9条を変えるか。首相は「一項、二項は残しつつ、自衛隊を明文で書きこむ」と、述べました。第三項として、自民党案にあった「ただし、自衛権の発動を妨げるものではない。国防軍(あるいは自衛軍)を保持する」とでも変えるのでしょうか。その場合でも、「国権の発動たる戦争」(一項)、「陸海空の戦力は保持しない」(二項)と、付加される条項と整合性をどうつけるか、膨大な作業になるでしょう。国権の発動、戦力をどう定義するか、です。

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最終更新:5/6(土) 9:26
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