ここから本文です

マット・デイモンが舞う!『グレートウォール』と“ブラックパウダー”が変えた兵器史

5/6(土) 21:00配信

おたぽる

 武器で見る映画、第11回は、『 HERO』などで有名なチャン・イーモウ監督最新作品、『グレートウォール』(原題:The Great Wall / 長城 2016)です。中国とアメリカの合作映画で、主な舞台は中国の万里の長城でありながら、主演をマット・デイモンが演じています。万里の長城を舞台に「トウテツ」という存在との壮絶な戦いを描いたアクション映画です。

アサシンブレードは存在しなかった? 『アサシンクリード』で学ぶ“武器と暗殺の歴史”

 グレートウォール、長城、これは、万里の長城のことなのですが、そもそも、「城」とは何か? ということですが、当然のように決して観光名所になるために作られたものではないのです。敵に攻め込まれた際の防衛拠点であり、要塞であり、砦である、それが城。場所や年代で、目的や様式が大きく異なりますが、抑止も含め、戦闘のための建造物、それは万国共通しています。

 それでは、万里の長城の説明をしましょう。ギネスにも登録されている人類が建造した最長の建築物。学校でも習ったと思いますが、中国から見た北方の遊牧民である「匈奴」などの侵攻を防ぐため、そして、シルクロードの貿易を保護する防衛施設として築城されました。紀元前770年代、周の時代から築城が開始されたとの記録が残っています。しかし、大部分が明の時代(1368~1644年)に作られたんですね。現存する部分だけで6,259.6kmとされています。長ぇ~!! ひょっとしたら、もっと長い時代もあったかもしれないわけです。

 古来の戦争の中で「城攻め」と呼ばれた戦闘では、兵力が要します。攻め落とすためには、守りの兵力の3倍の軍事力が必要だと言われていて、考えていただければわかると思いますが、防御の壁に守られている中から銃弾や矢が飛んできて、対する攻撃側は、壁を越すため、ハシゴや櫓を設置しようとする。皆さんなら、どちらを選ぶでしょうか? 僕なら、城の奥にいて、門が破られたら即刻降伏しますね……。

 さぁ、映画の話を進めましょう。映画の時代ははっきりと言われていませんが、宗の時代、フビライ・ハーンの元寇・元の前時代とのこと。歴史の授業で日宋貿易とか習った、あの時代です。マット・デイモン演じるウィリアム一行は、とある「最強の武器」を求めて、中国にやってきました。「最強の武器」とは何か? これはネタバレとかではないんで、言います。ブラックパウダーです。

 このブラックパウダーこと、黒色火薬は世界三大発明の一つで、中国で6~7世紀に発明されたとされています。今現在使われている銃器は無煙火薬が使用されているのですが、昔の火薬は煙が多く出たんですね。

 火薬の軍事利用が盛んになったのは、宗の時代です。なぜか? これにはさまざまな説がありますが、僕が有力だと思う説を紹介します。当時、馬の産地は宗の隣国のみで、宗は常に周囲の遊牧民や馬賊の脅威にさらされていました。宗は、ほとんどの兵士が歩兵という状況です。普通に戦ったら騎馬兵が圧倒的に強く、歩兵はひとたまりもありません。

 しかし、騎馬兵には、というか、馬には弱点があります。火薬の音に驚いて指示を聞かなくなる、という動物本来の反応。騎馬兵が少ない宗の軍は必然的に火薬に頼ることになるわけです。といった経緯から宗の時代に、世界初の火薬兵器が生まれました。その名も「火槍」です。構造は簡単で、火薬や投擲物の入った竹筒です。チープですが、これで馬はびっくりするわけです。そして、これがやがて、大砲や銃、ロケットへと進化していきます。その名残は2010年代でも確認でき、今現在でも、中国では銃のことを「槍」と表記します。中国人民解放陸軍の装備として、92式手槍(ハンドガン)や03式自動歩槍(アサルトライフル)などがあるのは、そういうことです。火槍も今の銃器と基本的な構造は一緒なのを思うと、人類は、三大発明から大して進化していないのかもしれませんね。

 さてさて、他の登場武器も紹介しましょう。前述した通り、対騎馬戦ともなると、次第に兵士の武器は遠距離武器になっていきます。「火槍」はまだまだ秘密兵器で、主力はというと、弓や弩です。同作品の主人公も弓使いです。使っている弓の種類は「複合弓、コンポジットボウ」と呼ばれる代物。

 弓の歴史を簡単に言いますと、まず「単弓、セルフボウ」が発明されます。木材と紐の簡単なもので、石器時代から狩りに使われていました。より強く、より遠くへ、それを目指すと、弓は大きくなります。当たり前ですが、そうすればより大きく“しなって”強い矢が放てるわけです。それが「長弓、ロングボウ」です。強く遠くを実現すれば、次に望むものは、そう、軽さ、小ささとなっていきます。なんとかコンパクトで長弓並みの強さを実現できないか? その解答が「材質を変える」こと。一種類の木材ではなく、動物のツノ、腱、骨、さらには鉄や銅などを“複合”させる弓、「複合弓、コンポジットボウ」が発明されたわけです。ただそうなると、一つの複合弓を作るのが大変になり、コストがかかってしまいます。一長一短ですね。

 そのほかにも槍や剣、盾などを駆使するわけですが、中でも目を見張った兵器は、「巨大投石機」でしょう。ひょっとしたら、人類が最初に手にした武器、それは落ちていた石だったかもしれません。手で投げるだけで、対象の遠方から大きなダメージを与えられます。

 投石機は、中国では、唐の時代から使われていました。そして、火薬を使うようになった宗の時代からは、炸裂弾を飛ばすようになりました。攻撃範囲も広がりを見せたわけで
す。映画内では、巨石に油のような可燃性の液体をかけ、火をつけて飛ばしていました。

 僕は、城を見ると、どうやって攻めたんだろう? とか、どうやって守ったんだろう?とかさまざまな想像を巡らせてしまいます。歴史に思いを馳せる、なんて言いますが、その取っ掛かりとして、まず、武器や兵器などから入ってみる、なんてのもいいのではないでしょうか。
(文=二木知宏[スクラップロゴス])

最終更新:5/6(土) 21:00
おたぽる