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本能寺の変を本格ミステリーに仕立てた快作『密室 本能寺の変』風野真知雄

5/7(日) 8:00配信

Book Bang

 文庫書き下ろし時代小説の雄、風野真知雄、今年はじめての単行本書き下ろし作品である。描かれるのは、ご存知、本能寺の変。もうこのテーマに新しい手はない、といわれて久しいが、作者は何と本能寺の変を本格推理小説として、歴史ミステリーに仕立てたのである。

 さらに驚くべくは、信長殺しの探偵役は明智光秀。光秀は、「上さまをもっとも慕うものが、上さまを討つ資格がある」と、信長が誰かに殺されるのを見過ごすくらいなら、自分の手で挙兵をする。だが、本能寺に辿り着いたときには既に信長は殺された後。

 しかしながら、本能寺における信長の寝所は、中から閂(かんぬき)をかけたら誰も入ることのできぬ鉄の密室。犯人はいかにして密室を破ったのか――。

 物語は、第一部蘭丸と第二部光秀に分かれ、蘭丸は、信長と衆道の関係にあり、わずか三十人の警護しかいないことを案じ、光秀は武将としての美学から信長を慕っており、いわば、恋敵同士の間柄として描かれている。

 そして話をミステリーに戻すと、信長が殺される直前に、闇の中を細長い光が走り、御殿の外廊下に怪し気な白い粉が落ちており、さらに寝所に入ってからすぐ、ぱーんと音がしたという。

 光秀は犯人を殺さなければ、自分が謀叛を起こしたことにはならないと、その夜、本能寺にいた容疑者たちを問い詰めるが、その誰もが、自分こそ、信長を殺した犯人だ、といい出す始末。本当の犯人は誰なのか? 

 加えて、光秀の陰翳のある屈折した心情。『三国志』の魏の曹操を通じての信長の解釈等、読みどころ満載の堂々たる快作歴史ミステリーの登場だ。

[レビュアー]縄田一男(文芸評論家)

光文社 小説宝石 2017年5月号 掲載

光文社

最終更新:5/7(日) 8:00
Book Bang

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