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大阪市が全国で初めて男性カップルに里親を認定

5/8(月) 10:18配信

週刊金曜日

 里親制度で、先駆的な判断がなされた。大阪市が同性愛の男性カップルについて里親として他人の子どもを育てることを認めていたことが4月6日に判明したのだ。

 厚生労働省によれば同性カップルの里親認定は全国初。すでに2月から大阪市内で30代と40代の男性カップルが10代の男子の養育をしている。

 国の児童福祉法に定められる養育里親は、18歳未満の子を一定期間預って育てる制度。自治体の定めた研修を受け、外部審議会の審査を経て都道府県知事や政令指定都市の市長が認可して養育費が支給される。混同されやすいが親に捨てられたり虐待された子などのための特別養子縁組(子の戸籍は養親だけになる)とは異なる。民法では特別養子縁組は夫妻にしか認められない。しかし、里親についてはこうした規定がない。実際、シングルマザーやシングルファーザーも立派に子育てをしており両性が揃う環境が必要条件ではない。

 大阪市のこども相談センター(中央区)は2015年に「LGBT(性的少数者)当事者の方を排除することはないのでぜひ里親登録してください。合うお子さんがいればマッチングします」としていた。2人はこの頃に里親を申し出、昨年12月に認可された。センターの岩佐和代さんは「おふたりは市の研修を受けられ、子どもへの愛情、里親制度への理解や経済的に安定していることなどを専門家の審議会が認め、最終的に市長が認めました。子どもさん本人も納得されています」と話す。

 吉村洋文大阪市長も「LGBTのカップルでは子育てができないのか。僕はそうは思わない。里親は子どものための制度。子どもの意思確認もした。養育里親制度の趣旨も理解され、経済的にも安定、愛情を持って養育してくれている」とツイート。昨年6月に児童福祉法を改正し「家庭に近い環境」を強調した厚労省の塩崎恭久大臣は「同性カップルでも男女のカップルでも子どもが安定した家庭でしっかり育つことが大事で、それが達成されればありがたい」と歓迎する。

【他の自治体に広がるか】

 同性カップルの里親実現に取り組む一般社団法人レインボーフォスターケア(さいたま市)の藤めぐみ代表理事は「それぞれ個人で里親認定を受け後に一緒に養育している同性カップルなどはあった。以前は里親を申し出た同性愛の女性が役所から『男性と結婚してからにして下さい』と言われたりしたが、熱心だった淀川区長さん(榊正文前区長)と私たちが意見交換を重ねたことを機に実現した」と喜ぶ。同性カップルに育てられる子どもがいじめられかねないとの懸念もあるが「現実には施設に通う子どもさんがいじめられるケースが多いと聞く。社会全体の問題であるいじめを理由に委託をしないのはおかしい」と話す。藤代表理事は「里親になろうという人が少ない中、法律で同性カップルの受け入れが禁じられていないのに特別養子縁組と混乱して諦める人もいた。他の自治体も積極的に広報してほしい」と期待する。

 元参院議員でかつて同性愛を告白した大阪市の尾辻かな子氏は「まだ同性婚が認められなかったフロリダ州で、虐待されていた子をレズビアンカップルが受け入れて成功していた。米国では同性パートナーに育てられたことによる育ちの違いはないという研究がある。日本の大都会は里親が不足しているが、特に大阪が不足しているのは虐待が多いからでは」と見る。

 尾辻氏は「カップルが子どもを欲しがっているからではなくあくまで子どもさんのため。里親は経済的にも時間的にも子どもの世話が充分できることが大事」とする。

 里親制度の運用は地方自治体に委ねられ、東京では異性の配偶者がいることが条件で事実上、夫妻だけ。札幌市子ども未来局児童相談所の担当者は「まだ札幌ではいませんが希望者には大阪と同じような手続きを考えています。偏見などが持たれないような地域社会での理解が大事」と話す。今回、大阪で里親となった男性カップルは「コメントはしない」という。恵まれない子たちを守るのは法や制度ではなく背景を理解する社会だ。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、4月21日号)

最終更新:5/9(火) 14:18
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