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ハイブリッド・ガスタービンシステムの正体

5/8(月) 11:20配信

Wedge

 今年1月、テスラとの提携による80メガワット時の巨大な蓄電施設、バッテリーパークをロサンゼルス近郊にオープンさせた電力会社、サザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)。4月18日にはジェネラル・エレクトリック(GE)との合弁による世界初のハイブリッド・ガスタービンシステムを発表した。

 ハイブリッド・ガスタービンとは、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせた車のハイブリッドと同様に、最新型のリチウムイオン電池がグリッドにエネルギーを供給、その間にガスタービンを回して後に切り替える、というものだ。電池はチャージして繰り返し使用できる。システムは「ハイブリッド・エンハンスド・ガスタービン・システム(ハイブリッドEGT)」と呼ばれ、SCE、GE、そしてウェルヘッド・パワーソリューションズの提携により生まれた。

 ハイブリッドEGTが設置されたのは、ピーカー・プラントと呼ばれるピーク時の過剰需要に対応するための発電所で、ロサンゼルス近郊にはノーウォーク、ランチョ・クカモンガの2カ所がある。実際の稼働は3月30日に始まっており、今後さらに3カ所に設置を予定している。

 システムはピーク時の需要が起きた時、まずバッテリーによる起動で待機時間ゼロで即時に電力供給を行う。その間にバッテリーの支援によりガスタービンを回し、さらなる需要に対応する、というもので、これによりガスタービンが休眠中から再稼働するまでの時間は半分に短縮され、大気中へのCO2などの地球温暖効果ガス排出量は6割削減できる、という。通常のピーカー・プラントの場合、ガスタービンがフルに稼働するまでにかかる時間は最大で12時間だ。さらに再稼働時間が短縮できることでオペレーティングコストも節約できる上に、プラントそのものの寿命が伸びる、というメリットもある。

 4月18日のオープニングセレモニーで、SCE社長ロン・ニコルズ氏は「このようなタイプのプラントは世界初であり、ピーク時のジェネレーターとバッテリー蓄電システムを結合させることにより環境にも優しく、また再生可能エネルギーをより多く電力に利用することが可能となった」と語った。システムには10メガワット時の蓄電システムが含まれ、ソーラー、ウィンドなどによって作られた電力を蓄えることでこうした自然由来のエネルギーが利用できない時にも電力を有効に保存供給できる。

 SCEがこのようなプラントの開発を急ぐ背景には、2015年にロサンゼルス郊外のポーターランチにあるサザン・カリフォルニア・ガスのアリソ・キャニオン・ガス貯蔵施設からのガス漏れ事故がある。112日間で10万トンものメタンガスが流出し、付近住民の避難など大規模な事故となった。しかしサザン・カリフォルニア・ガスは同施設の再稼働を目指しており、その理由として「ナチュラルガスの不足は電力不足につながる」と主張する。つまりアリソ・キャニオンの貯蔵ガスはSCEのピーカー・プラントへの供給が目的であり、緊急時に使えるガスがなければピーク時の電力需要に対応できない、という。

 しかしハイブリッドEGTを広く導入することにより、とりあえずのピーク需要には蓄電システムからの電力で対応できるようになる。ハイブリッドEGTの設置箇所が増え、バッテリーからの供給だけでピーク時がしのげるようになる時代もそう遠くない将来実現するかもしれない。

 興味深いのは今回SCEが提携相手に選んだのがGEだ、という点だ。既存のガスタービン発電システムにバッテリー支援を結びつける、という重工業的技術が必要なだけに電機メーカー大手であるGEが選ばれたのだろうが、テスラとのバッテリーパークの契約は2015年に結ばれている。つまりアリソ・キャニオンの事故を受け、緊急時の電力確保が必要、とSCEが考えた結果と予測できる。

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最終更新:5/8(月) 11:20
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