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【月刊『WiLL』(6月号)より】習近平は戦争を起こす

5/8(月) 9:00配信

WiLL

追い詰められた中国

石平 トランプ大統領は、就任直前の発言を撤回して、結局「一つの中国」の原則を認めました。3月下旬に訪中したティラーソン国務長官は習近平国家主席と会見して、「中国とは衝突せず対抗せず、相互尊重しウィンウィンを目指す」と頭を下げた。これはトランプ政権にとってアジアにおける緊急の課題が北朝鮮問題だったからです。北朝鮮に軍事攻撃を仕掛けることになった場合、とりあえず中国の黙認をとりつけなければいけない。だから中国に戦いを仕掛けるのは後回しにするしかなかった。
宮脇 訪米した習近平との晩餐会の最中にシリアにミサイルを撃ち込んだでしょう。頭を下げる一方で、トランプは「俺たちは本気だぞ」と脅しをかけた。
石平 習近平への明確なメッセージだ。台湾カードを引っ込め、習近平の言う「新型大国関係」に協調するそぶりをみせた、その見返りが対北朝鮮です。中国がその気になれば、北朝鮮の息の根を止めることができるのだから。
 トランプは「もし中国がやらないのならわれわれだけでやる」と習近平の訪米前に『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで明言し、その後もツイッターに書き込んでいる。習近平は非常に厳しい選択を迫られたわけです。中国にとって第二次朝鮮戦争は悪夢でしかないが、しかし、中国がぐずぐずして北朝鮮問題が解決できないとなると、トランプ政権は貿易や南シナ海問題で再び中国を叩くだろう。どちらにしても中国は面倒な状況に追い込まれた。習近平はトランプの別荘でステーキをふるまわれたそうだけど、まるで劉邦と項羽の鴻門(こうもん)の会だ(笑)。
楊 建前上、中国と北朝鮮の同盟関係は、契約として機能している。それをいかに解釈し、運営するかが問われます。アメリカもそこを見ていると思いますが、もう一つ、韓国の大統領選の問題もある。このままの勢いで左派政権が誕生したら、アメリカは韓国を同盟国として扱うのかどうか。中朝、米韓それぞれの同盟関係が今後どう動くか予断を許さない。北朝鮮を叩くなら、タイミング的に韓国大統領選の前になりそうです。
石平 日本政府は駐韓大使を帰任させたでしょう。韓国の態度が軟化したわけでもないのに、明らかに邦人保護のためです。そう考えると、緊張がかなり高まっていることは間違いない。
福島 トランプならやりかねないと誰もが思っている。トランプ効果とも言えるのですが、冷静に考えたら、それがアメリカの国益に適うかというと、あまり現実的ではない。否定的な意見が圧倒的に多いと思う。日本の世論も反対が多いのでは。報復に日本に核ミサイルが飛んでくる可能性もあれば、北朝鮮のどこかに拉致被害者がいるのですよ。もし居どころがわかって、「空爆と共に救出作戦を展開しましょう」となれば日本も乗るかもしれませんが、国際社会は戦争になるのを食い止めようとするでしょうね。
石平 北朝鮮が核兵器とアメリカ西海岸まで届く核弾道ミサイルを確実に持っているとしたら、アメリカはやらざるを得ない。果たして実際に持っているのか。
福島 持っているも何も、宇宙を支配しているアメリカが北朝鮮レベルの核ミサイルをみすみす打たせるとは思えない。事前に察知して妨害電波で防ぐのでは?
石平 そこが私はよくわからない。北朝鮮が核を持ったとしてもそれがアメリカにとって軍事的脅威にならないという自信があるかどうか。
福島 脅威なのは米国に対する直接の攻撃力よりも、シリアやイランに対する武器輸出、軍事協力の方だと見ているのではないでしょうか。それよりも、今回の件は、トランプ政権と共和党内の路線対立問題と、半島のパワーバランスの視点で見る方がいいと思います。
 アメリカにとっては、半島にTHAAを設置し、アジア太平洋地域の軍事的プレゼンスを中国と奪い合うゲームの中で北朝鮮カードが必要です。
 中国だって、口ではわれわれにとっても北朝鮮の核は脅威だと言うけれど、中国は最低でも250発、ピーター・ナヴァロの著書『米中もし戦わば』には3000発くらいの核弾頭を持っているという推計もありました。その核弾頭を秘密の地下長城で自由に移動させるシステムを備え、高度なミサイル技術と独自の測位衛星システムももっている。しかも人民が何億人死んでもかまわないという感覚の国だから、北朝鮮の何発かのミサイルなど、さほど脅威ではないでしょう。
 それよりもアメリカのTHAADのほうがずっと怖い。台湾の武力侵攻作戦などまず、無理になりますから。金正恩(キム・ジョンウン)が排除されるのは別にかまわないけれど、その後にたとえば金正男(キム・ジョンナム)の息子金漢率(キム・ハンソル)を政権につけて、アメリカが半島をコントロールできるようにすることについては、抵抗するでしょう。要するに、アメリカ主導の武力での半島問題の解決は、中国は何としても阻止しなければならず、だからこそロシアや韓国とも連携して、アメリカの先制攻撃抑止に動いたのだと思います。結果的には、アメリカはTHAAD配備の延期や為替操作国認定の見送りという「飴」を中国に与えて、強いプレッシャーを与えつつ中国の北朝鮮コントロールに下駄を預ける格好になりました。私はこの変化を、トランプ政権内の路線対立の文脈で見ています。

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最終更新:5/8(月) 9:00
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