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【月刊『WiLL』(6月号)より】移民のせいでドイツが亡(な)くなる

5/8(月) 9:00配信

WiLL

ドイツがトルコの「植民地」に

 この春先、ドイツは「トルコ問題」で揺れていた。
 トルコのエルドアン政権は、大統領権限強化に向けた憲法改正案の是非を問う国民投票への支持を求め、在独トルコ系移民を動員する選挙集会を計画したが、ドイツ当局は治安上の理由を挙げて集会開催を認めず、次々に中止に追い込んだ。これによって元々ぎくしゃくしていたトルコとの関係は一段ととげとげしいものになった。
 ドイツ側の対応に激昂したエルドアンは、メルケル政権をナチスになぞらえる発言まで繰り広げ、メルケルが「ナチスとの比較を決して許さない」と色をなす一幕もあった。同様の軋轢はドイツだけでなく、隣国オランダでも起きた。
 ──以上の経過は、わが国の大多数の人たちにとっては退屈なニュースかもしれない。
 昨年7月のクーデター未遂事件後、強権支配を加速するエルドアンを快く思わないドイツが、自国をその権力拡大のための「貸座敷」に使わせてなるかと立ちはだかる図式は何も目新しいものではない。
 しかし、トルコの側にドイツへの新しい視角が生まれていることには留意すべきだ。
 300万人のトルコ系移民を擁するドイツは、トルコにとってはもはや移民の送り出し先ではなく、一種の「植民地」として発想されている。
 このことは、エルドアンの不気味な発言によって裏付けられている。
 エルドアンは「ドイツ政府があくまで自分の選挙戦を阻止するつもりなら、『民衆蜂起』に直面するだろう」と威嚇した(BBC放送電子版)。エルドアンの意に添わないドイツ政府に対し、トルコ系移民が立ち上がるというのだ。換言すれば、ドイツは移民という民族問題を半世紀かけて無邪気にもせっせと輸入していたことになる。
 大量のシリア難民が欧州に押し寄せていた昨年初め、北大西洋条約機構(NATO)のブリードラブ最高司令官は、ロシア大統領プーチンとシリア大統領アサドが欧州の弱体化を狙い、あえて大勢の難民が出るように爆撃を繰り広げ、難民を「武器」として使っていると証言して世界に衝撃を与えたが、長年、ドイツで暮らしながらついにドイツに同化せず、「パラレル社会」を形成しているトルコ系移民もまた、ドイツを揺さぶり、ドイツを弱める武器になるとエルドアンは考えている。そのことを知っているドイツは、自国領土内でトルコ系移民を通じて政治パワーを投射するエルドアンに強く立ち向かわざるを得ない。国家の主権が問われる事態であるからだ。
 トルコの情報機関はドイツの領土内で反体制のトルコ系移民に対する監視活動を続けており、今ではそのことを隠そうともしなくなった。ドイツをまるで自分の中庭のように扱い始めている。
 およそ60年前、大量の出稼ぎ労働者を受け入れ、明確な自覚のないまま、なしくずし的に移民大国となってしまったドイツは、「移民の統合」に失敗した。それは単に、国内の社会的不安定因子になるばかりでなく、外交・安全保障上の弱点であることがはっきりしてきた。

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最終更新:5/8(月) 9:00
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