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アニソンとJ-POPの境界線はより曖昧に 『関ジャム』最新回に見た構成とキャスティングの妙

5/8(月) 17:00配信

リアルサウンド

 “アニソン”というジャンルがここ十数年で成し遂げてきた革新は、誰の手によってどのように起こったのか。それらがさらにJ-POPと接続し、ポピュラーなものとしての可能性をどこまで拡張しようとしているのか。5月7日に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の特集「よく知らない方も苦手な方も聴けばきっとハマる!実はスゴいアニソンの世界特集!」は、余計なフィルターを通さずにアニソンという特異ジャンルの音楽的な凄さを知らしめ、アニソンに関わってきたクリエイターすべてが“報われた”と言えるような回だった。

 この日ゲストとして登場したのは、代表作が多すぎて抜粋するのも難しいくらい、アニソン界で数多くのヒットを叩き出している音楽プロデューサー神前暁氏、LiSAや花澤香菜、『物語』シリーズなどの音楽プロデュースを手がける山内真治氏、音楽評論家・プロデューサーとして幅広く活躍する冨田明宏氏。

 これまでアニソンが音楽番組で紹介される際には、ヒットしたアニメ作品を主軸に解説。それに付随する音楽として楽曲がオンエアされ、歌唱者が少しだけ楽曲や作品について語り、周りのJ-POP系アーティストがそれを苦笑いしながら見守る、というケースが多く見られてきた。音楽を取り上げるにあたって一般的な「大きな文脈のなかでこの楽曲はどの系譜か」という位置付けはアニメ専門番組ですら行なうことが少ないにもかかわらず、この回では序盤から分析パートへ突入。山内氏がアニメ音楽を「アニメタイアップソング」「アニメソング」「劇伴」と分類し、さらに「アニメソング」内でアニソンシンガー・声優アーティスト・キャラソンを振り分けた時点で、これまですべてを十把一絡げにされてきた多くのアニソンファンが感嘆の声を上げただろう。

 そしてアニメタイアップ曲をネガティブに語らず、「リライト」(ASIAN KUNG-FU GENERATION)と『鋼の錬金術師』(TBS系)の成功例も提示しながら「いかにアーティストとしての世界観を崩さずに、アニメの世界を表現できるか」というアニメタイアップ曲の真髄を一言で表現した山内氏、70年代からの系譜をしっかりと解説して“アニソン原理主義者”への目配せも忘れない冨田氏の分析はお見事だった。

 その後の「アニソン」を紹介するパートでは、武道館アーティストが多数輩出されている例を挙げ、視聴者にわかりやすく説明。ここでは『ラブライブ!』のヒット要因を分析し、自身の活動ともリンクさせて説得力をもたせ「『ラブライブ!』はアイドルの教科書」と言い放った宮田俊哉(Kis-My-Ft2)のプレゼンテーション力、カラオケで「もってけ!セーラーふく」(『らき☆すた』)を歌ったり、『ポポロクロイス物語』でガミガミ魔王のキャラソン(「The 男のロマン」)を担当するなど、アニソンとの関わりもある古田新太が活躍するなど、アニソンに関しては門外漢のMC・関ジャニ∞(=視聴者)に代わって、レギュラー・ゲスト陣が橋渡しになっていたこともキャスティングの妙を感じさせた。

 中盤からはますます『関ジャム』ならではの取り回しが目を引く。「TVアニメの主題歌は89秒」論や、鉄板のコード進行紹介(マイナーコード多めのA→Bからメジャーコード多めのサビで盛り上げるという転調の使い方)、「ようこそジャパリパークへ」(『けものフレンズ』)のテクニカルな面を解説するという、CSの深夜番組かと錯覚させるほどマニアックな神前氏による「アニソン楽曲分析」パートは、既存のアニソンファンすらもう一段階前のめりにさせる内容だった。

 特に「ようこそジャパリパークへ」の解説パートにおいて、渋谷すばるから「いい曲やね。J-POPっぽい。みんなやりたくなる感じ」という言葉が出てきたことも大きい。ここ数年のポップシーンでは、アイドルポップスやバンドサウンドが高速化し、人間が歌えない音程・音域をボーカロイドに歌わせてきた作家陣がJ-POPの舞台へ上がり、アニソン側もバンド畑の人間が制作する機会が多くなるなど、裏方も含めてエポックメイキングな出来事が次々と起こり、楽曲単位においてはJ-POPとアニソンの境界線が徐々になくなりつつある。渋谷の発言はそれを象徴している重要なポイントのように感じられた。

 番組の後半では、LiSAと関ジャニ∞が「oath sign」をセッション。この回に現在アニソンシーンから飛び出し、ロック・ポップスという戦場へ打って出ている彼女がゲストとして出演し、同じステージへ立つという意義も大きい。LiSAとこの日のゲスト3名、そしてキスマイ宮田というラインナップで地上波の夜に1時間の番組を放送するというのは、この番組でなければ成り立たなかったキャスティングだろう。

 かつて、番組プロデューサーの藤城剛氏はリアルサウンドでのインタビューにて、「“よく分からないマニアック”ではなく“みんなが興味の持てるマニアックな感じ”をどうお伝えするか」と話していた(参考:『関ジャム』プロデューサーに聞く、“マニアックでポップ”な音楽番組の作り方(http://realsound.jp/2017/03/post-11734.html))。現役ヒットメーカーとしての神前氏、制作側としての山内氏、少し引いた視点から解説できるジャーナリストとしての冨田氏、ファンと同じ温度感を持っている宮田というこの日のゲストのバランスも、この信念に基づいたものということだろう。番組としての確固たるスタンスが透けて見える傑作回だった。

 番組の最後に、関ジャニ∞が『関ジャム』に関わったクリエイターたちと作り上げた新作『ジャム』の続報として、新曲「今」の作詞作曲を星野源のライブでおなじみ“ニセ明”が務めると発表された。その編曲にクレジットされていたのが、この日の「劇伴」パートでも名が上がった菅野よう子というサプライズ。番組放送後もまだ、この物語は続くようだ。

中村拓海

最終更新:5/8(月) 17:00
リアルサウンド