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時代に合わせて進化する「ハイアール」式マネジメント

5/8(月) 15:00配信

Forbes JAPAN

日本を代表する大企業が経営に苦しむなか、中国発のグローバル企業が日に日に存在感を高めている。その一つが、代物家電メーカー世界最大手「ハイアール」だ。



ハイアールは1984年の創業以来、ブランド構築(84~91年)、多角化(91~98年)、国際化(98~2005年)、グローバル化(06年~現在)と確実に成長してきた。

同社について研究してきたIESEビジネススクールの李逸庭教授は「(ハイアールは)7年ごと会社の構造を変えてきた」と指摘する。今回、李教授にハイアールのマネジメントや戦略について訊いた。

─数ある中国企業の中、ハイアールが急成長を遂げた要因は何でしょうか。

ハイアールは典型的な中国企業とはだいぶ異なります。これは張瑞敏(チャン・ルエミン)会長兼CEOによるところが大きいでしょう。彼はよく、「ハイアールの社員は全員がCEOであるべき」というようなことを話しています。
 
つまり、社員それぞれに「説明責任」を求めているのです。一人ひとりが個人事業主のように働けば、周りの社員との協働が不可欠となります。そのように、社員から競争意識と協調性を引き出しているのです。

─競争と協調を両立させている、と。

主に、3つの特徴があります。まずは、「社員間の協調性を引き出す組織構造」です。もちろん、各自のパフォーマンスは大事ですが、他の社員と協力して付加価値を生み出すことを求められ、それが評価される仕組みになっています。次に、「協調性に対する説明責任」です。一方的に助けを得るだけでなく、どれだけ同僚の仕事に貢献できたかも評価の対象となります。
 
そして、「共同体意識」です。張CEOの企業文化の築き方や経営ビジョンへの信頼もあって、社員の多くがハイアールの社員であることに誇りを持っています。「自分の個人的な利益だけではなく、他の社員のためにも働く」仕組みもあって、自然と協力的な企業文化が醸成されているのではないでしょうか。

─張CEOの影響が大きいようですね。

彼は大変な読書家で、常に学び続けています。これが社員にも刺激になっているようです。CEOに「この本を読んだか?」と聞かれた場合に答えられなくては困りますからね。その結果、会社全体が学習意欲の高い組織になります。だから、彼らは常に、それも劇的に変化し続けられるのです。ハイアールはだいたい7年おきに会社の構造を変えて、企業として成長しています。

例えば、同社は08年までは一般的な社員、管理職、経営陣からなる伝統的な正三角形型ピラミッドの組織構造でしたが、「顧客の声が経営陣にまで届かない」ことから、「ZZJYT」と呼ばれる逆三角形の自己管理型組織構造に変えています。「研究開発」「製造」「マーケティング」の3部門を「ZZJYT」という一つの組織にまとめることで、顧客のニーズを汲み取って独自の判断で動ける小規模のユニットを次々と生み出したのです。
--{その後の進化とは...}--
─その後も進化したのでしょうか。

今では、よりフラットな構造の「エコシステム」を志向しています。三角形ではなく、ネットワークのような組織を目指し、社員やユニットが社内外で顧客のために価値を生み出そうとしているのです。社内起業家の育成を進め、「ミクロ企業」という社内企業を立ち上げることを奨励しています。

─社員間の競争意識の面ではいかがでしょうか?

ハイアールは厳しく結果を求めることで知られています。特に、ユニットを率いるリーダーに対して厳しいです。リーダーはメンバーによる投票で選ばれますが、仮に不適格と判断された場合、交代させられる制度があります。

─そうした投票制度は、社内政治につながりそうですが。

多少はあるでしょう。しかし、先ほど述べたように、ハイアールには協調性を評価する組織構造と企業文化があります。それに、社内政治で個人の利益を追求するよりも、適切なリーダーを選び、支える方が長期的にはメリットがあるのです。
 
また、この投票制度には、1人の社員に権力を集中させない機能があります。加えて、多くの社員で責任を共有し、リーダーを育成するという点でも効果的です。

─12年には三洋電機の白物家電部門がハイアールに買収されています。

私が見た限り、買収当時はまだ多くの社員がハイアールの文化に対して懐疑的であるように思えました。ところが昨年に行った調査では、社員たちがシステムを理解し、それをよりよく活かす方法を考えていました。

例えば、研究開発部門の社員からは「本社からリソースや支援を得られる」というコメントが出るなど、12年当時と比べて前向きです。

─今後、ハイアールはどのように進化するのでしょうか。

企業文化について尋ねたところ、ある社員から「どんなときも挑戦せよ」という答えが返ってきました。ハイアールはいつの時代もテクノロジーの進歩を追いつつ、市場のニーズに応えてきました。彼らの戦略は常に進化しています。マネジメント手法もそれに合わせて進化させてきたのです。だから、数年後にはまた構造を変えて前に進むのではないでしょうか。

李 逸庭◎IESEビジネススクール准教授。専門は組織論。ローザンヌ大学、サンダーバード国際経営大学院ヨーロッパ、龍華科技大などを経て現職。2011年のハイアールによる三洋電機の白物家電部門買収と統合に関するケーススタディを執筆。

Forbes JAPAN 編集部

最終更新:5/8(月) 15:00
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