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【甲府】「崩し切ろうなんて思ってない」最下位候補筆頭のJ1処世術

5/8(月) 16:42配信

SOCCER DIGEST Web

名波監督は「我々が『1』拾って、相手(甲府)が『2』失った試合」と振り返ったが…。

 開幕前、『サッカーダイジェスト』のアンケート企画で多くの解説者や識者がJ2降格候補どころか、最下位候補にも挙げたヴァンフォーレ甲府が意外な健闘を見せている。シーズン約3分の1となる10試合を終えて勝点13の12位。中位は団子状態で、まだまだ今後の展開も予断は許さないが、ここまでは上々の経過。果たして、最下位候補筆頭のチームはJ1をしぶとく生き抜くために、いかなる術策をもってシーズンを乗り切ろうとしているのか?(取材・文:大島和人)
 

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 押し込む甲府と、押し込まれる磐田――。両チームのサポーターが事前に予想していた展開と逆の構図が、山梨中銀スタジアムのピッチに描き出されていた。
 
 甲府は守備が耐えて、カウンターから少ないチャンスをモノにするスタイル。しかし7日の磐田戦は中村俊輔が復帰した技巧的な相手に対して、ボールの保持率、プレーエリア、チャンスの数とすべての要素で上回っていた。
 
 吉田達磨監督はこう振り返る。
「ランニングやシンプルに背後を取る動きを繰り返すことで、アグレッシブなラインコントロールをしてくるジュビロのディフェンスラインを少し下がらせることができた」
 
 甲府は前半から兵働昭弘、畑尾大翔らが後方から相手DFの裏、脇に長いボールを振り、磐田側に後ろ向きの対応を強いる場面を頻繁に作った。相手が間延びしたことで、次はボールを持てるようになった。押し込んだ結果として小椋祥平らが前向きにいい形でボールを「刈る」場面も増え、それは宮崎智彦の2度目の警告(63分)にもつながった。
 
 ただしゴールを決められなければ勝点3も奪えない。結果はスコアレスドローだった。磐田の名波浩監督が「我々が『1』拾って、相手が『2』失った試合」と引き分けを喜ぶ展開になった。
 
 確かに「甲府が取りこぼした」「攻撃の質を欠いていた」と評するのは容易だろう。「決め切る力」や「したたかさ」の不足を批判するのも簡単だ。しかし甲府が一朝一夕に浦和に生まれ変わることはないし、小椋が中村俊輔に化けることもない。試合後に「相手を崩し切れなかった」ことについて問われた吉田監督は、こう返していた。
「僕たちはそもそも崩し切ろうなんて思ってないんです。そういうチームですから、はき違えちゃいけない」
 
 ゴール前の密集でボールを動かす特別な戦術眼、技術があればエリア内を細かく崩してもいい。しかし磐田戦の甲府は河本明人、田中佑昌といった“頑張り屋さん”を前線に配置していた。それなら強引でも仕掛ける、打つことで“何か”を起こした方が確率も上がる。
 
 小椋はこう分析する。
「相手がひとり退場してから、自分たちのボールを持つ時間が長くて、でも中をしっかり固められていた。もっとサイドから縦に勝負してセンタリングを上げてCKとか、セットプレーをどんどん狙っていけば良かった」
 
 今季の甲府が挙げた8得点のうち、4得点はセットプレーから。そこは甲府の強みでもあり、CKやFKを取ることは“近道”にもなるからだ。

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最終更新:5/8(月) 18:06
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