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MLBでいまだに人種差別が横行!米国の現実が発覚し大騒ぎに

5/8(月) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 今米国でMLB(メジャーリーグベースボール)界を揺るがし、ひいては米国社会全体に波紋を広げる衝撃の事実が明るみとなり、メディアを賑わせている。21世紀の、この2017年という現代で、いまだに驚くほどの人種差別行為が横行しているというのだ。

 それは、ボルティモア・オリオールズのアダム・ジョーンズ外野手が5月初旬にボストンに遠征しレッドソックスとの4連戦を戦った際、グラウンドで起こった。試合中にスタンドの観客から何度も「Nワード」と呼ばれる黒人に対する差別語を浴びせられ、ピーナッツが入った袋を投げつけられたのだという。ボストンで差別的罵声を浴びせられたのは今回に限ったことではなく、過去にも「両手、両足を使って数えても足りないくらい」あったとジョーンズは明かしている。なぜ今、メディアに話すことで世間に訴えたかといえば、その罵声がこれまでにないほど酷いものだったため、堪りかねてのことだった。

 ジョーンズといえばメジャー12年目の経歴を持ちオールスターに5度も選ばれたスター選手で、今年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)にも米国代表として戦っている米国選手の代表格。そんな選手がまさか差別語で汚いヤジを飛ばされていたとは、よもや想像もしていなかった。

◆イチロー選手も「数多く起きている」と証言

 MLBには現在、米国生まれの黒人選手が62名いるが、ジョーンズの話が球界に広まると「僕もボストンで同じ目にあった」と声を上げる黒人選手が続出した。ヤンキースで長年エースを務めてきたCC・サバシア投手は「ジョーンズの話には驚かない。ボストンに行ったときはそういう目にあうとわかっているから」と明かしている。レッドソックスとヤンキースという伝統の一戦では球場内の警備が強化されているためヤンキース移籍後は被害にあったことはないが、他球団に所属していた時代にはボストンへ遠征に行くたび、酷い差別語の罵声を浴びたという。

 実は同じ経験をしたというのは米国生まれの黒人選手にとどまらず、中南米出身など他のマイノリティ選手の間からも出てきた。2001年に日本人初の野手としてメジャーに移籍したイチロー外野手(当時はマリナーズ、現マーリンズ)も、フロリダ州マイアミの地元メディアに経験談を明かしている。それによるとイチローは「こういうことは数多く起きている。ただ選手が口に出さないだけ。もし客席からどんなことを言われたかをみんなが口に出して言えば、大騒ぎになる。僕自身にもあった。氷やコインを投げつけられたこともあるし、頭に当たったことも何度かある。彼らは聞きたくないような言葉を浴びせてくる」と話している。

◆「トランプ」から始まった

 多くの選手が証言するように球場での差別語を使った罵声は昔から続いていたようだが、ジョーンズが今回特に酷くなったというのは、米国内の政治的背景も影響しているのではないかという見方も出ている。差別的発言で物議を醸しながらも当選したドナルド・トランプ大統領の誕生前後から、米国内では差別的な行為やヘイトクライムが増加していると伝えられている。ヤンキースなどで活躍し1993年に野球殿堂入りしたレジー・ジャクソン氏も、今回のジョーンズの騒動に落胆し「我々黒人はいまだにそんな差別の中で生きなければならないとは、残念でならない。今の政治の状況から、こうしたことが社会の流れのようになってしまっている」と嘆いていた。

 ジョーンズの騒動は米国の現実を浮き彫りにし、多くの人々を動揺させている。人種差別語に対して規制を強化しようという動きも出ており、ジョーンズの代理人ネズ・バレロ氏は選手を不適切な言葉の暴力から守るため何らかの方策を取るよう大リーグ機構に働きかけていくと話している。MLBで一番の大物代理人として知られるスコット・ボラス氏は「球場には次世代を担う子供たちもいる。立法府や議会が動けば、この違法行為に対して適切な処罰を受けるのだということが周知できる」と、米国議会に球場等での差別語使用に対して法規制を設ける必要性を主張しており、今後は政治も巻き込んだ大きな動きとなっていく可能性もありそうだ。

 ところで今回の騒動でボストンがクローズアップされたが、マサチューセッツ州の州都であるこの街は1630年に誕生し、米国の中でも最古の都市の1つに数えられる。多くの一流大学が存在する学術都市でもあり、世界中からあらゆる人種の研究者、学生も集まっているが、白人が多く住む街でもある。2015年の統計では白人が全人口の52.9%(ヒスパニック系白人も含む)、ヒスパニック系を含まない白人が44.6%、黒人が25.3%、アジア人が9.4%、ヒスパニック又はラティーノが19.5%となっている。他の都市と比較してみると、例えばロサンゼルスは2010年の統計だがヒスパニック系を含まない白人が28.7%、黒人が9.6%、ヒスパニック又はラティーノが48.5%、アジア人が11.3%と、ボストンとはかなり差がある。都市部とはいえ白人の多い街でこうした問題が顕在化したのは、やはりトランプ大統領下の社会背景と密接に結びついている気がしてならない。

<取材・文/水次祥子 photo by Francesco Crippa via flickr(CC BY 2.0)>

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