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史子の心理学:うまくいかない上司を手玉に取る方法、教えてあげる

5/8(月) 5:20配信

東京カレンダー

なぜか急に、意中の相手から連絡が来なくなる。

なぜかある日を境に、友達がよそよそしくなる。

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あなたにも、こんな経験はないだろうか。

普段のなにげない言動が実は、相手の心を閉ざす引き金になっているかもしれない。

心理カウンセラー・史子(アヤコ・32歳)は、そんな日常の言動に切り込み、解決策を提案するのが趣味。

前回は、高学歴の人間が無意識にしがちな非モテ発言についてメスを入れた史子。さて、今回の相談者は…?

たった一目で相手の問題点を読み取る女、史子

「史子先生。今度、僕の友人と飲みにいきませんか」

クリニックで史子の秘書をつとめる将生(マサキ・27歳)から唐突な誘いを受けたのは、先週末のことだった。

「それは何目的?私の婚活に協力してくれるの?それとも、タダで友達の相談にのらせるという魂胆かしら?」

「どちらもです」

クールなイケメン秘書は無表情のまま、にべもなく言い放った。

「友人って、同い年?私より5つも下じゃない。恋愛対象外だわ」

「では、悩み相談だけでかまいません」

うっすらと笑みを浮かべる将生に、本当はそっちが目的でしょ、と史子は心の中で毒づく。

「分かった、いいわよ。あなたの友人だし、特別に友達価格で聞いてあげる。ただしイケメンに限るわよ」

「もちろんそこは、ご心配なく。では、来週お店を予約しておきます」

将生はすぐに無表情に戻り、丁寧に一礼して部屋を出て行った。



将生が予約してくれたのは、『銀座うかい亭』だった。

案内された席に向かうと、先に来ていた男が席を立ち、史子に向かってお辞儀する。

「史子先生。こちらが僕の大学同期の、周平です」

将生に紹介された男性を一瞥して、ああ…、と史子は瞬時に理解した。

あなた、出ちゃってるのよ。プライドの高さが。

太く一直線にのびた眉と、意志の強そうな瞳。その端正な顔には、仕事ができるタイプ特有の自信とプライドがみなぎっている。

―これは間違いなく、職場の上の人間と1度はこじれるタイプね。

史子の予感は当たっていた。

聞けば、周平はITベンチャーで企画営業を担当して5年になるという。

これまで順調に成績を上げてきたが、この春の人事異動で新しくやってきた上司とまったくそりが合わず、最近は営業成績も伸び悩んでいるらしい。

「すごく仕事が速くてデキる人なんですけど、冷徹なんです。勢いのある俺を見下してくるんですよ。例えば…」

その後しばらく、周平は強い口調で不満を語り続けた。史子はだんだん募るイライラを、抑えきれなくなってきた。

「あなたさ」

周平の話を途中でさえぎり、史子は鋭く言い放った。

「出ちゃってるのよ。プライドの高さが、表情にも、態度にも」

突然の奇襲に、周平はあっけにとられた顔で史子を見つめる。

「プライドの高い上司にプライドではりあったら、火花を散らすどころか大炎上よ。相手の方が年齢も社会的立場も上なんだから、対等に接しようとするのが、そもそも間違っているの」

「でも、俺の言ってることって、間違ってないと思…」

「そこよ。あなたは自分が正しい、相手が間違っているって決めつけているけど、相手も同じく、いえそれ以上に、そう思っているの」

しどろもどろに言い訳をしようとする周平を、史子は容赦なく一蹴し、さらに続ける。

「俺は優れているって思い込んでいるうちは、上司との関係は改善できないわ。ヘタするとあなた、次のボーナスも下がるかもしれないわよ」

周平はボーナスという言葉にびくっと反応し、みるみる青ざめた。

「それだけはだめです…!俺、結婚資金を貯めていて…」

―…ちょっと。彼女どころか、婚約者がいるんじゃない。

史子は、ぎろりと将生をにらむ。将生はこちらを見ずに、涼しい顔をしている。

ため息をついてから、史子は周平に向き直り、さとすように言った。

「仕方ないわね。上司を手玉に取るアプローチ法、教えてあげる」



史子からアドバイスを受けて、2ヵ月後のことだった。突然上司から会議室に呼び出され、周平はどきどきしながら部屋に入った。

「実はな。今度周平に、新規の大型クライアントの提案を任せようと思う」

―え…本当に!?

驚きのあまり言葉が出ない周平を見て、上司は目元をふっとゆるめた。

「おまえ最近、本当に変わったよ」

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