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もうガムは噛まない。DeNA梶谷隆幸が自身を語るロングインタビュー

webスポルティーバ 5/9(火) 8:00配信

 調子がいい時も悪い時も、全打席ライトスタンドを狙うかのような荒っぽさ。ファンからの声に心を痛めて精神的に追い詰められてしまう繊細さ。ストイックな肉体改造でムキムキになる一方、食べることに興味がなく夏場に必ず元に戻るもったいなさ。体重を減らさないように、どら焼きをたくさん食べたり、お酒を控えめにしたり。10年間、自分のスタイルを見つけるために悩みに悩み抜いてきた。

 そんな梶谷から、ここ数年「勝ちたい」という言葉がよく聞こえてくる。最下位が続いていた以前から言わなかったわけではないが、その言葉は月日を追うごとにより切実に、現実味を帯びて聞かれるようになってきた。

「本当に勝ちたいという欲がどんどん大きくなっているんです。最終的にチームを勝たせる選手がナンバーワンですよ。なんでもいい。チームが勝つ方向に持っていける選手が一番すごい選手なんだろうなと思うんです。若いうちは一軍に残るのに必死でした。極端にいえばチーム状況より、とにかく自分の結果が欲しかったんです。でも2年3年とレギュラーで使ってもらっているうちに、チームが勝たないと、自分の存在意義がないということに気がつくんです。昔は自分のことしか考えてないから、ファンの声に本当に落ち込んだり腹が立ったりしていましたけど、今はもう何とも思わないですね。若い選手がファンからの声に腹を立てていても、『いやいや、俺も昔はあったよ。結果を出せば何も言われなくなるよ』なんて言葉も出ますから(笑)。

 やっぱり勝てるようになってきたこと。お客さんが増えてきて、空席がほとんどなくなって……勝ちたいですよ。自分が打てばもの凄く盛り上がってくれるんですよ。本当に応援は力になると実感したし、チームが勝てばどんどん大きくなってくる。そういう意味でも僕はかなりいろんな経験をさせてもらいました。野球界でもなかなかいないんじゃないかってぐらい、結構”味わって”きましたからね。その分成長させてもらえたと思いますよ。腹決めてやればいいという風に思えていますから」

 昨年のCSファーストラウンド。梶谷は見たことがないほど青く染まった東京ドームに震えるほど感動した。死球で左手の薬指を骨折し交代を告げられた際に、プロに入って初めて涙が溢れてきた。自分に克つために抑えてきた感情が抑えられなくなるほどの衝動を感じていた。

「CSの東京ドームは本当に衝撃でした。ああいう風景を見せられちゃったらね……。あ、頑張りたいなって思いますよ。僕、プロに入ってからずっと苦しくて、野球が楽しいと思えたことなんて一度もなかったんです。小学校から高校まで楽しくてしょうがなかった野球が、どこか苦しいものになっていた。それがようやく去年、試合の中で自然と思えたんです。楽しいって。

 あのクライマックスを体験してしまったことで、その先にある優勝というものが、どれだけ良いものなんだろうって想像するようになりました。ちょっと前の僕には絶対にわからなかった感情です。ベイスターズが低迷していた時代、僕は一軍のベンチにも入れない選手でした。父親にも『チームの控えが遊んでる暇はないぞ』ってよく言われて。すごく嫌でしたよ。だからなのか、今は具体的な数字よりも、強いチーム、常勝チームの主力選手と呼ばれるようになりたいんです。ベイスターズ、すごくいいチームですから」

 梶谷にとって勝負の年となる2017年。スタートから打撃が好調の一方で、4月には右太腿の違和感で欠場するなど、危うさも露呈した。この先には魔の6月も待っている。振幅の大小はあれど、今年も山あり、谷ありの1年となるのだろう。

 もう一度、確認しておきたい。横浜の看板は「梶・筒」である。

 天才なんかじゃない。回り道をしてきた誇りがある。だからこそ、こんなもんじゃ終わらせられない。

「I CAN DO IT」。以前より大人になった梶谷は、自分に言い聞かせる。大丈夫。梶谷ならできる。

村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu

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最終更新:5/9(火) 8:00

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