ここから本文です

「EV版フェラーリを目指す」京大発EVベンチャーの挑戦【GLM小間裕康社長インタビュー】

5/9(火) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

「和製テスラ」。おそらくその言葉を期待して集まった多くの記者たちだが、会見で語られたのは、「和製テスラではなく、EV版フェラーリを目指す」という新たな宣言だった――――

 4月18日、京都を拠点に活動するベンチャー企業GLMが新型EV「GLM G4」の発表会を行った。高効率で高出力なモーターを車両前後に2機搭載、最高出力は400kW(540馬力)、最大トルク1000Nm、0-100km/h加速は3.7秒、最高速度は250kmというスーパーカーだ。2019年までの量産化を目指し、1000台を生産、想定価格は4000万円だ。

◆大物投資家が支援する京大ベンチャー

 GLMは2010年に当時、京都大学大学院生だった小間裕康社長らが設立。母体となったのは、京都大学のベンチャー・ビジネス・ラボラトリーのEV開発プロジェクト「京都電気自動車プロジェクト」だ。

 創業にあたってはソニー元会長の出井伸之氏や、江崎グリコ創業家の江崎正道氏、X JAPANのYOSHIKI氏らが出資者に名を連ねるなど、大手メーカーの独壇場だった自動車業界に風穴を開ける存在として注目を集めた。創業5年目の2014年には同社初となる2人乗りEV「トミーカイラZZ」を販売。この頃から「和製テスラ」という異名がついた。

「テスラ」というのは、イーロン・マスクが2003年に創業した「テスラ・モーターズ」のこと。世界中で最も知名度のあるEVメーカーだ。2008年にはEVのスーパーカーである「テスラ・ロードスター」を販売。今年4月には、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードを時価総額で抜くという快挙も成し遂げた。

◆「和製テスラと呼ばれることも多い」

 だが、冒頭の記者会見に登壇したGLM取締役の田中智久氏は「我々は和製テスラと呼ばれることも多い。しかし、あえて言えば、我々はEV版のフェラーリを目指している」と語った。

 G4のコンセプトについて、「荒々しい波の中を、力強くも優雅に走るロードヨット」と語った小間社長だが、その真意はどこにあるのだろうか。後日、港区芝公園にあるGLMのショールームにて、本人に話を伺った。

――まずは、あえて4000万円のスーパーカーを販売する理由を教えてください。

小間:EVスーパーカーのマーケットには競合が少なく、高価格帯の車を小規模生産で投入しても収益を上げられると思いました。フェラーリやランボルギーニ、マセラティなどの高級車にEVはありませんし、今後5年を考えても、スーパーカーのEVは出てこないはず。また、ブランド戦略的にも、一度下げたブランドを再び上げるよりも、ハイブランドからラインナップを徐々に広げていくほうが効率的であるためです。

――G4はどのような車になるのでしょうか?

小間:特別な空間やクラス感を体現できる車を世の中に出していきたい。トミーカイラZZの製造工程で、日本にはまだまだ世に出ていない先端の技術があることに気づきました。生産規模10万台という大手自動車メーカーでは、品質もさることながら、非常に高いコストダウン目標を要求されます。ただ、ハイブランドのG4なら、そうした技術や製品も調達し、あるいは共同開発できると思いました。

――今後のEV市場についてどのように見ていますか?

小間:2015年にドイツのフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正が明らかになって以降、欧州の自動車は完全にEVに舵を切りました。もうこの流れは止められないでしょう。特にこれまでネックだった電池のバッテリー問題が技術革新で解決される見込みがでてきたのが大きい。EVは1kWhあたりの発電コストが1.5万円になると、ガソリン車と変わらないと言われていますが、今は1.7万~1.9万円まで下がってきている。また、充電スタンドの問題も、現在3万機ある国内の給油スタンドを、充電スタンドの数が上回ってきている。自宅のコンセントでも充電できますし、その感覚が理解されれば、EVは一気に広まると思います。

――他の競合EVメーカーについてはどう見ていますか?

小間:今、中国でEVメーカーが次々と立ち上がっています。彼らがターゲットとしているのは、テスラより安価な、普及価格帯のEVマーケット。ただ、そこはレッドオーシャンなので、我々としてより上の価格帯を狙いたい。ターゲットを絞ることで、フェラーリやランボルギーニのような加速の良さや、どぎつい運転性能が実現できると思っていますし、スーパーカーならEVのそうした性能をもっと引き出せるはずです。

――EVを普及させるためには原発の問題もあります。

小間:EVに傾注している企業はみな、発電というものに対して責任を持たなければならないでしょう。私は仕事柄、最先端技術に出合うことも多いですが、まだ実用化や量産化されていないものの、発電効率に関してはかなり高いレベルで技術革新が起こっています。治験が蓄えられ、ある瞬間にブレイクスルーが起きるのではないでしょうか。一昔前は違ったものの、今の時代は儲かることと、タメになることを技術でリンクすることができる。これだけ多くのリソースがあれば、解決策はきっとあるはずです。

――会見では「G4を日本の最先端技術の集合体にしたい」と語っていました。

小間:私たちはまだ発展途上の企業ですが、優秀なエンジニアがどんどん集まっている。少数でさまざまなジャッジができるので、今は尖った製品が作れる最良のタイミング。エンジニアだけでなく、部品メーカーも良質な企業が集まっているので、まずはハイエンドのG4を完成させて大量生産し、いずれはコストダウンにもチャレンジしたい。

――G4のようなスーパーカーを買う人たちはどんな人たちだと思いますか?

小間:平日は仕事で忙しくしている一方、休日は非日常的な空間を過ごしたいと感じている人ではないでしょうか。昨年、フランス・パリのモーターショーに参加させてもらったのですが、多くのお客様にG4のブースを見ていただき、彼らのような飛び抜けた富裕層が何を求めているのか、直に感じられました。G4の販売価格も当初3000万円を想定していたのですが、反応を見て4000万円に上げることができた。その後、香港でも発表会を行いました。

――量産化の時期を2019年に設定した理由はなぜでしょうか?

小間:安全性のテストというのは小規模であったとしても徹底的にやる必要があります。ましてG4は生産規模も大手メーカークラス。ひとケタも、ふたケタも高い開発費をかける必要があったため、それだけ念入りに行います。同時に、電気自動車の技術開発は、昨年、一昨年でようやくスタートラインに立った程度。最先端技術の開発には2019年まで待つ必要があったため、2019年に設定しました。

※次回、後編は近日公開予定

<取材・文/井野祐真(本誌)>

ハーバー・ビジネス・オンライン