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ユーベ、熟練の戦術的対応力。モナコの変則的攻撃にも円滑対応。無情なほどの安定感

5/10(水) 11:27配信

フットボールチャンネル

 現地時間9日、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝2ndレグが行われ、モナコをホームに迎えたユベントスが2-1で勝利を収めた。2点のアドバンテージをもってこの試合に臨んだイタリア王者は、今大会数多くの番狂わせを引き起こしてきたモナコの“奇策”に対し鮮やかに対応。その戦術的レベルの高さを示したゲームとなった。(取材・文:神尾光臣【トリノ】)

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●ユーベの右とモナコの左。同一サイドに集約された攻防

 1stレグにおいて、モナコはユベントスの緻密な組織守備によって戦術的に抑えられていた。それがもっとも象徴的に現れていたのがモナコから見て左、ユーベから見て右サイドの攻防だった。ユーベはアンドレア・バルザーリを充当してサイドに蓋をし、モナコの強力な左サイドアタックを潰した。

「ユーベは我われのストロングポイントを全てブロックした。明日結果を出したいと思うなら何かを変えなければならない。さもなくば1stレグの繰り返しになる」

 ユベントスvsモナコ戦2ndレグの前日記者会見で、モナコのレオナルド・ジャルディム監督はこのように語っていた。

 彼らが逆転を狙うには、まずユーベの組織守備を壊すことを考えなければならなかった。マッシミリアーノ・アッレグリ監督は熟慮の末に1stレグのフォーメーションの踏襲を決断した一方、それを読んだジャルディム監督は、守備で固めたユーベの右サイドを真っ向から潰すための戦術をとった。ユーベの右とモナコの左。リードを守るか逆転をもぎ取るか、2ndレグの攻防はここに集約されていた。

 モナコは、大胆な変則フォーメーションを取った。まず、1stレグでは左で封じられていたトマ・ルマールをスタメンから外す。そして2トップの一角であるキリアン・ムバッペを思いっきり左に開かせて、カバーリングは上手いが身体的なスピードに優れているとは言えないバルザーリの裏を狙わせたのである。パスセンスに長けたベルナルド・シウバもトップ下気味に中央に絞らせて、ピャニッチにプレッシャーを掛けつつ、モウチーニョとともにサイドへパスを出させた。

 さらにジャルディム監督は、ウォームアップでナビル・ディラルが故障したことに伴い、代わりに故障上がりでベンチ入りした超攻撃サイドバックのベンジャミン・メンディーを左SBに起用する決断を下した。裏を突かれる不安はあるが、彼らはそれに賭けた。マンチェスター・シティやボルシア・ドルトムント相手に番狂わせを起こしてきたのも、そういった大胆な戦略あってのことだった。

●変則システムにプレスはかみ合わず。しかし即座の修正で対応

 そして試合開始後、モナコは思惑通り左サイドからペースを掴んだ。キックオフ直後にムバッペの縦突破からのクロスでコーナーキックを獲得。さらに5分には、そのムベッパが左からゴール前に絞ってシュートを放ち、ポストに直撃させている。

 モナコの組んだ変則フォーメーションに対して中盤ではプレスがかみ合わず、早いタイミングでパスを出されてはムバッペやメンディーに走りこまれていた。このままゴールにつながれば、流れが一気に傾きそうな雰囲気もあった。

 しかしユベントスが見事だったのは、すぐに修正を図ったことだ。前半10分にはサミ・ケディラが故障で交代を余儀なくされるアクシデントが発生するが、その際に投入されたクラウディオ・マルキージオにアッレグリ監督から的確な指示が飛んでいたのだろう。チームはバランスを取り戻し、モナコの左サイドアタックの抑制にも成功したのだ。

 守備の際には、4-4-1-1の並びでコンパクトな布陣を保つことを今一度徹底。特に最終ラインの枚数をしっかり整えて、バルザーリが右で安定したポジションを取れるようにする。もちろんその右サイドには、ダニエウ・アウベスが戻ってバルザーリをサポートする。

 早速その効果が現れていたのが16分のプレーだ。左に張ったムバッペはバルザーリを狙ってドリブルで裏へ抜けようとするが、そこにアウベスが戻ってきてカバー。スライディングタックルで正確にボールを奪い、ファウルを犯さずにカウンターを阻止した。

 さらに全体の組織守備を締め直したことは、左クロスへの対策も強化した。ベルナルド・シウバらにしっかりプレスを掛けて、展開のスピードをダウンさせる。その一方でユーベは相手よりも先に、ゴール前で陣形を整える。

 メンディーが左サイドでボールを持っても、味方FWがマークされ、後方からMFが走りこむスペースも消された状態では出しどころがない。仕方なく放たれたクロスは、ユーベの守備陣にヘディングで弾かれ続けた。

●前半で事実上決した勝負。モナコに番狂わせ演出させず

 そうして活路を封じられたモナコに待っていたのは、変則的なフォーメーションを取っていたが故の残酷な結末だった。ボールを拾ったユーベは、攻撃的になっていたモナコの左サイド裏のスペースを狙い撃ちにしたのだ。

 1stレグでもユーベは、ここを攻めて2得点を挙げている。さらにこの日はジャルディム監督が中盤の底の守備をティエムエ・バカヨコに一任していたため、その脇にはより広大なスペースができていた。そこを使ってユーベの攻撃陣はワンタッチでパスを繋ぐと、迷うことなく右のスペースへと振った。その先には、予め分かっていたかのようにアウベスが走り込み、次々にチャンスを作り出した。

 33分の先制点は、まさにその集大成といったものだった。CKの守備からGKジャンルイジ・ブッフォンの素早いスローで攻撃をスタートし、あっという間に左を破る。そしてモナコの守備陣がボールサイドに寄ったところで、一気に右へと展開。そこには例によってアウベスが走り込んでおり、クロスが放たれる。これがファーへと走り込んだマリオ・マンジュキッチに通り、ゴールへ繋がった。

 左の攻撃に一縷の望みを託すも、ユーベの右を潰すどころか逆にやられてしまったモナコ。42分にはメンディーが強引にアウベスをドリブルで引き剥がし鋭いクロスを放つが、それもゴール前でジョルジョ・キエッリーニに冷静に処理されてしまう。アウベスの豪快なミドルで追加点を決められたのはその2分後のことだった。前半で2ゴール、事実上勝負はここで決した。

 相手の変則的な攻撃もピッチ内で守備を修正して処理し、練習で入念に準備した戦術上のプレーを忠実に実行するユーベのチーム力。数々の番狂わせを演出したモナコ相手に間違いを犯さず、カーディフ行きのチケットを勝ち取った秘訣は、そこにあった。

(取材・文:神尾光臣【トリノ】)

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