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欅坂46がわずか1年で築いた独自の“型”、そして2年目の表現に寄せる期待

5/10(水) 14:03配信

リアルサウンド

 欅坂46が4月6日に、東京・代々木第一体育館でデビュー1周年記念ライブを開催した。昨年のデビューシングル『サイレントマジョリティー』発売と同じ4月6日に合わせて既発曲すべてを披露するスタイルのこのライブは、先輩である乃木坂46が恒例にしているバースデーライブを想起させる。ただし、デビューからの一年間を、ライブを通じて振り返ることで得られる感触は、乃木坂46のそれとは趣きが大きく違っていた。

 このライブで明確になったのは、なにより欅坂46がすでに独自の表現の「型」を築いているということだ。乃木坂46の最初の一年間がオリジナリティを構築するための模索期であったことを思えば、自らの定式のようなものをこの時期に獲得していることは驚異的でもある。もちろん、乃木坂46が年月をかけて試行錯誤してきた蓄積こそが欅坂46の礎になっているため、並列的な比較にはなじまない。しかしともかくも、この一年を時系列で描ききることであらためて確認できたのは、欅坂46が現在手にしている型の強さ、そしてその表現の幅がすでにデビューシングルで構築されていたことだ。

 ライブはデビューシングル表題曲「サイレントマジョリティー」で開演する。2016年のアイドルシーン最重要曲になった同曲による幕開けは、単にグループの原点を振り返るだけではない、象徴的な意味をもつ。臆面もないほどに直球な言葉を用いてレジスタンスを描いたこの楽曲が、その字面を遥かに超えて豊かなインパクトを持ち得たのは、衣装やMVなども含めた制作陣とメンバーとによる総合的なクリエイションの賜物である。この一年、たびたび注目されてきたTAKAHIROによる振付は、坂道シリーズが育ててきた演劇性を進化させ、群像によってしか表現できないパフォーマンスに昇華させた。その旗印となる曲がライブ冒頭に据えられることで、グループの方向性は早くも突きつけられる。

 続いて、同じくデビューシングルから「手を繋いで帰ろうか」が披露される。表題曲とは対照的な曲調やモチーフでありつつも、菅井友香と守屋茜を主人公に据え、他のメンバーたちが二人を見守るギャラリーのように、あるいはコロスのように機能する同曲は、やはりグループ全体で群像としての表現を突き詰める点で、「サイレントマジョリティー」と通じている。一年前、東京国際フォーラム・ホールAでのデビューカウントダウンライブですでに手にしていたこの基調は、その後シングルリリースを重ねながら洗練されていく。1stシングルから4thシングルまで、順を追ってライブが進行する中で見えてくるのは、そのような欅坂46の表現の型が磨かれてきた軌跡である。

 今泉佑唯・小林由依による“ゆいちゃんず”のフォークデュオ的路線、あるいは「乗り遅れたバス」から布石を打ってきた長濱ねる特有のポジションや、けやき坂46(ひらがなけやき)への発展も、一年分を一本のライブとして構成することで、その意義が明確になる。シングル表題曲にみるような群像の表現だけでなく、グループ内の派生的な物語やユニットも、デビュー時からある程度、定まった方向性を持ちながら展開されてきた。時系列のライブ構成で披露されるそれらの楽曲たちは、この一年の歩みの確かさを物語るものだった。

 そして、「サイレントマジョリティー」で掴んだ型はこの日の本編ラストの曲、4thシングル表題曲「不協和音」へと還ってくる。彼女たちのパフォーマンスがとりわけ圧倒的な強さを持つのは、やはりこの群像としてのうごめきである。統制されてみえる集団でありつつ、同時に各メンバーレベルではそれぞれが自己主張する個であることが見てとれる凄み。そんなグループによる表現は、大会場でも十分に映える。というより、大きなステージでさまざまな角度から、あるいは遠目から観てこそはっきりわかるものかもしれない。

 欅坂46が早々に築いた表現の型はこの一年で、想像以上の勢いで反響を呼んだ。もちろん、その中心には象徴としての平手友梨奈がいる。急速にカリスマ的なアイコンになった彼女は、受け手の解釈をさまざまに喚起する存在になった。この日のライブでも、言うまでもなくその立場は揺るがない。欅坂46が彼女に宿した超越性は、グループの大いなる武器である。けれども、もしくはだからこそ、平手のみを絶対的な軸としない表現の提示も不可欠だ。現時点でも、シンボルとしての平手をセンターに戴きながらも、このグループが実現しているパフォーマンスの幅はそれのみに収斂するものではない。その意味でも、“青空とMARRY”や“FIVE CARDS”といったユニットの楽曲がライブの要所で存在感を持ったことは、2年目の展開に向けて重要である。

 また、欅坂46に関してしばしば注目されるようなレジスタンスとしてのイメージも、このグループがもつ総合的な表現の性質を考えれば、あくまで一側面にすぎないはずだ。グループが育ててきた群像としてのパフォーマンスを別次元へと押し上げた「二人セゾン」での達成をみるとき、欅坂46が一面的なイメージのみで解釈していいほど可能性の小さなものではないことがはっきりとわかる。

 だからこそ、2年目を走ってゆく欅坂46にとって、メンバーと制作陣によって培われたこの表現の型を用いて、いかに多様なモチーフ、多様な方向性を見せていくかは鍵になるだろう。少人数ユニット曲の増加や、アンコールで発表されたひらがなけやき増員などは、その萌芽を見せるものである。一年という短い期間で明確な基調を打ち出し、トレードマークとなるイメージを作り上げた欅坂46。その成果を突きつけた1周年記念ライブを経て、次はよりロングスパンを見据えた表現への期待がかかる。

香月孝史

最終更新:5/10(水) 14:03
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