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反勉強の哲学――人生で大事なことはぜんぶ「通学中」にまなんだ

5/11(木) 17:00配信

文春オンライン

Q 中1の息子が家を出て進学したいと。経済的にも想定外で……

 小さな町に住んでいるのですが、中1の息子が高校から家を出て、違う地域の高校に進学するつもりでいると最近知りました。経済的に難しいので、家を出て進学するのは大学からと考えていたのですが、そのことを今から本人に告げると、せっかくのやる気を台無しにしてしまいそうで、どうしたらよいかわかりません。(40代・女性)

A 借りて、借りて、借りて、借りて、借りて、借りまくれ。いざとなったら、ケツをまくれ。

 わたしは高校生のころ、埼玉の実家から千葉まで、2時間半かけて通学していた。えらい。むちゃくちゃ大変だったが、いま考えてみると、大事なことはぜんぶそこでまなんだ気がする。学校でじゃない、通学でだ。とにかく朝の通勤ラッシュがきびしくて、ムダに肥え太ったおっさんたちに揉みくちゃにされたり、体調がわるくてちょっとゲロをはいただけで死ぬほどぶったたかれたり、なんか立ったままウトウトしていたら、妙にきもちがいいので目をあけてみると、脂ぎったおっさんにキンタマをさわられていて、ハ、ハウッと腰がぬけそうになったりと、そんなんばっかしだった。ああ地獄ってこういうもんかと、ちょっとわかった気がした。毎日、満員電車につめこまれて、ゼニだ、ゼニだとおいかけているうちに、ひとがひとじゃなくなっていく。労働有罪だ。

 でも、そのおかげもあって、ラッシュがいやだから、ちょくちょく途中駅でおりて学校を遅刻していくようになった。公園のベンチで、MAXコーヒーを飲みながら読書する。たまに本がおもしろすぎて、学校にいくのを忘れたりした。極楽だ。イヤホンをつけて長渕剛をききながら、大杉栄をむさぼりよんだ。体でかんじた大事なこと。あんな大人にゃなりたくねえ。朝夕のラッシュアワー。酒浸りの中年たち。愛よりも夢よりもカネで買える自由がほしいのか。ブタ、ブタ、ブタ。この腐った社会にツバをはきかけろ、ついでにゲロでもはきかけてやれ。当時、そんなことをおもって、いまでもたいしてかわっちゃいない。反勉強の哲学だ。ろくなもんじゃねえ。

 ということで、結論だ。ぜひ越境させてあげてください。おすすめは遠距離通学だ。片道3時間半まではいける。もしおカネがなくて借金をするというのであれば、その心構えとして、こんな言葉をおくっておきましょう。「銀行に10万ドル借りているなら、きみは銀行に所有されている。銀行に1億ドル借りているなら、きみが銀行を所有している」。アメリカのことわざだ。借りて、借りて、借りて、借りて、借りて、借りまくれ。いざとなったら、ケツをまくれ。借りたものがひれふすんじゃない、貸したものがひれふすんだ。労働有罪、借金無罪。いいよ。

栗原 康

最終更新:5/11(木) 17:00
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