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クルマは丸目──ぼくたちが古いクルマに惹かれる理由

5/11(木) 22:01配信

GQ JAPAN

「最近気に入ったクルマありますか?」と訊かれて困るのには理由があった!? クルマと社会の交差点にある「クルマ文化」にストップかゴーの判定を下す好評連載。今回のテーマは古いクルマの魅力について。

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■“いまのもの”と“過去のもの”

ぼくは古いクルマについて書くことが時々ある。いっぽうで新車についても書く。自分のなかでは、新車は旧車の延長線上にあるものと思っていた。しかし……。

どうもそれは思い違いだったかもしれない。最近そう思うようになってきた。というのも、ぼくと若いひとたちの見解のそごが目立つからだ。ちょっと意味不明かもしれないのでもう少しわかりやすく書くと、若者はクルマを“いまのもの”と“過去のもの”とで、はっきり区別するということだ。

いっぽうで、ぼくは、さきにも触れたようにゴルフなら74年の初代から現在までのモデルを一直線にとらえている。

たとえば初代ゴルフは、それまで主流だったビートルが、リアエンジン/後輪駆動だったのに対し、フロントエンジン/前輪駆動になったし、丸っこいビートルに対して直線基調のスタイルになったのも衝撃的だった。そしてなによりハッチゲートを備え、機能的だった。

83年の2代目は、大きなエンジンに加えパッケージングの改良で“まっとう”な乗用車になった。91年の3代目は狭角V6など先進技術が採用された。そういう具合に、ゴルフは時代に合わせてさまざまに変わってきた。でもハッチバックのミドルクラス乗用車という核に大きな変化はない。

ところが、そんなぼくの意見も若者には通用しない(!)。 若者は「そんなことより、いまのゴルフとまったく違うクルマとして、初代や2代目をとりあげるべきなのです」と言う。

それで、ぼくにも分かってきたことがある。

■このクルマのかたち、本当に好きになれるか

古いクルマといまのクルマ。若いひとは、はっきり線引きする傾向にある。理由は簡単。自動車の継続的進化に興味がないからだ。

かつてぼくは自動車デザイナーに「1960年代にほぼ完成の域に達したクルマがあるのに、なぜ新車をデザインするのか?」と尋ねたことがある。たとえばオリジナル・ミニ(マニュアルは5段欲しいが)や、シトロエンDS(ウィンドウまわりに改善の余地はあるが)や、アルファロメオのスパイダー(トバすにはステアリングがやや不確かだが)が、その代表例だ。

答えは「これで終わり、って決めたらぼくたちの仕事がなくなってしまう」というものだった。もちろん衝突安全基準を満たすための車体大型化なども要件だ。ぼくたちはそれを聞くと納得する。ゴルフならゴルフなりに変化する理由があるのだ、と。でも若いひとと話しをしていて気づいたことがある。

実はぼくたちは、クルマの美に盲目になっていたかもしれない。だって、たしかに初代ゴルフといまのゴルフ、審美的にどちらがすぐれているか純粋に較べたらどうだろう? あきらかに勝負は初代ゴルフだろう。ゴルフに限らず、ほとんどの新型車で話は同じはずだ。LEDヘッドランプに普遍的な美なんてあるだろうか。

「このクルマのかたち、本当に好きになれるか」そうやって自問するとおもしろい。ぼくが認めていいと思ったモデルはそう多くない。MINIとアウディとマセラティとランボルギーニ、そのほかに数モデルは新車でも魅力的なカタチをしている。

音楽でもメロディ有限論というのがある。耳に心地よいメロディは80年代で使い尽くしたというものだ。それで音楽は終わりかというと、そうではない。ビートなど、時代感覚に即した表現があると業界のひとは反論する。

クルマにも同じような意見があるわけだ。でもやっぱりクラシックやジャズを含めて80年代までの音楽は耳に心地よい。そんな目で改めてクルマを見てみると、魅力の要件のひとつは丸目、つまり丸型ヘッドランプにあるように思えてくる。もっともLED、そしてレーザーへと向かう傾向のある最近のヘッドランプは、省エネなどを考えると避けられない傾向かもしれないが……。

環境にいいことこそ“善”。そう考えるのがクルマ業界のマジメなところである。でも生活を楽しくしてくれないと、はじまらない。若いひとに限らず、みんなが好きになれるカタチのクルマ。その再来を待ちつつ、今回はかつての魅力的な丸目たちにGOを。

文・小川フミオ

最終更新:5/11(木) 22:01
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