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“考えさせる”と“悩ませる”は違う|水島精二監督 『鋼の錬金術師』『機動戦士ガンダム00』など

5/11(木) 11:10配信

Wedge

議論ばかり繰り返していっこうに結論が見えてこない――そんな不毛な会議を経験したことのあるビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。水島精二監督が語る、不毛な会議に陥らないための秘訣とは・・・?

スタッフの力を引き出す方法

――水島監督は1998年の『ジェネレイターガウル』で監督デビューしましたが、監督としての“仕事の仕方”が定まったのはいつごろでしょうか?

水島:『ジェネレイターガウル』の後の『地球防衛企業ダイ・ガード』(1999)の時には、もう今と同じようなスタイルになっていたと思います。それはあまり大げさなことではなく、誠実に仕事をするっていうことなんですけれど。

 自分が面白いと思っている企画に参加してくれるようにスタッフを口説く。おもしろいアイデアを出してくれたらそれをちゃんとフィルムに定着させるようフォローする。言いにくいこと、謝らなくてはならないことが出てきたら、なるべく早く相手に報告する。

 100%完璧にできているとは言いませんが、そういうことは常に意識していますね。


――水島監督はスタッフに作品の方向性を説明する時にはどんなふうに伝えますか。

水島:それはスタッフとたくさん話すしかないですね。たとえば、イメージを伝えるために写真集や画集、あるいは過去の映画とか、そういうものを“参考”として示す方法もあります。

 でも、それだと“参考”に似せることが“正解”だと思われてしまうかもしれない。そうなると、その人ならではのプラスアルファが出てこないこともある。

 言葉で方向性を説明すると、そこに曖昧な部分や隙間があることで、その人が自分の感性を発揮してくれるんです。アニメは集団で作っているから、こういうプラスアルファで作品が広がっていくことがとても大事なんです。

方向性の違いをリカバリーする方法

――とはいえ、スタッフから上がってきたものが方向性とは違うという場合もありますよね。

水島:それはあります。いくつかの対応方法があるんですが、まずひとつめは、「ごめんなさい」とこちらの指示が分かりづらかったことを謝って、そのうえで「こういう方向性じゃなくて、こっちの方向性だった」と改めてディレクションし直すことです。

 大事な部分は、自分がチェックしてリテイクを出す時間的余裕があるように段取りを組みます。限られた時間で作品をつくるわけですから、アニメの監督は、この全体を見通したスケジュール感覚を持つことがクオリティの維持には欠かせません。

――スケジュールはやはり大事なんですね。

水島:監督がいくらこだわりを持っていてもそれだけじゃダメなんです。作品としていい仕上がりにするには、監督から手離れした後の工程にもちゃんと時間を用意しないといけない。

 これはいわゆるカリスマ性があるといわれる監督でも同じです。後工程に時間を確保しなければ、作品のクオリティは当然ながら下がる。そこは、カリスマ性で乗り越えられるわけではないんです。


――ちなみに、リテイクではない対応策もあるのですか?

水島:そうですね。もうひとつは、相手の上げてきた成果物を使って、どういうふうに自分の作りたい画面に到達するかを考えるという方法ですね。こういう時はまず自分が手を動かさないとダメですね。


――もうちょっと具体的に教えてください。

水島:たとえば……方向性が違ったわけではないんですが『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(2015)という作品の時にこんなことがありました。この作品では、背景をグラフィカルで平面的なテイストで描いてもらう挑戦をしたのですが、美術スタッフさんも事前の打ち合わせ通りその方向性で描いてくれました。

 ところが、これにキャラクターをのせてひとつの画面にしようとするとうまくいかない。平面的なスタイルの背景なので画面の奥行きが伝わりづらく、登場人物が“その場所”に立っているように見えないんです。背景のどの部分を微調整したらグラフィカルなスタイルなりに自然な奥行き感が出るか、画面作りをしながら自分でテストを重ねました。

 そして「こう描いてもらえればうまくいく」というポイントを改めて仕様書にまとめ、美術さんにフィードバックしました。『コンクリート・レボルティオ』という作品のスタイルはこうしてつくっていったんです。

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最終更新:6/2(金) 16:28
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