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【英国人の視点】浦和・森脇の暴言騒動、処分確定も深めるべき議論。レオ・シルバ「言葉の暴力も根絶を」

5/11(木) 11:09配信

フットボールチャンネル

 Jリーグは9日、浦和レッズに所属するDF森脇良太が試合中に相手選手に対して不適切な発言を行ったとして、2試合の出場停止処分とする決定を発表。試合映像を基に検証を行うとともに、森脇本人へのヒアリングも通して事実関係を確認した末での処分決定となった。だが果たして、これでこの問題は一段落といえるのだろうか。(取材・文:ショーン・キャロル)

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●他者への言動・行為がもたらす影響についての意識の欠如

 Jリーグの規律委員会にとって、ここ数週間は慌ただしい日々が続いている。ピッチ内外での様々な事件がネガティブなニュースとして世間を騒がせてきた。

 例えば4月29日には、徳島ヴォルティスの馬渡和彰が、ジェフユナイテッド千葉とのアウェイゲームでボールパーソンへの暴力的行為により退場処分に。その翌日のさいたまダービーでは、大宮アルディージャに0-1の敗戦を喫した浦和レッズの一部サポーターが緩衝帯の柵を蹴るなどの行動に出た。これらは単純に個人の愚かな判断や、馬鹿げた行為にその原因を求めることができる。

 だが一方で、より精細かつ慎重な調査を必要とするような問題も存在している。浦和のDF森脇良太をめぐるスキャンダルもその一つだ。他者への言葉や行動がもたらす影響についての意識の欠如を示す出来事であったからだ。

 森脇は5月4日に埼玉で行われた試合で、鹿島アントラーズのブラジル人MFレオ・シルバに対して侮辱的な言葉を吐いたとして、鹿島の主将である小笠原満男からの非難を受けていた。火曜日にはその森脇に2試合の出場停止処分が言い渡された。

 試合の78分に起きた小競り合いの中で、小笠原は明らかに何かに対して腹を立てた様子で、浦和のGK西川周作に押さえつけられていた。38歳のベテランMFは、試合後にはメディアの前で自ら足を止め、衝突の中で森脇がレオ・シルバに向けて「臭いんだおまえ」と言っていたと主張した。

「試合が終わったあとにレオ・シルバと話したところ、『森脇選手はいつもあのようなことを言ってくる』と言っていました」

「これまでの対戦でも、カイオやダヴィに対しても同じようなことを言っていて、そういうことが繰り返されています。もう限界というか、立派な言葉の暴力ですし、差別と捉えられてもおかしくないと思いますので、報道のみなさんで検証するなりしていただきたいなと思っています」

「今回に限ってではないですし、どう検証していいのか分からないけど、どうしても許せないので。フェアプレーの議論がされていますが、言葉の暴力はあってはならないことだと思います」

●政治的あるいは差別的な意図に基づいた行為だったのか?

 決して軽く捉えることはできないし、軽く捉えるべきではない主張だ。この話がすぐに大きな反響を引き起こしたのは、同様に不快感を引き起こすような出来事がここ最近相次いでいたためでもあった。

 ガンバ大阪は、4月16日のセレッソ大坂とのダービーマッチで、ファンがナチス親衛隊SSを連想させるデザインのフラッグを掲げていたとして処分を受けた。その9日後には川崎フロンターレのサポーターが、ACLの水原三星とのアウェイゲームで旭日旗を掲げたことで、AFCからクラブに170万円の罰金処分が下された。違反が繰り返されたとすればホームゲーム1試合を無観客試合とする処分も下されている。

 どちらのケースも、何らかの政治的あるいは差別的な意図に基づいて実行された行為だというわけではなさそうだ。むしろ、あるイメージを掲げることがどう受け止められるかについての理解力の欠如に起因すると言える。これはサッカーに限った問題ではなく、社会全般の広範な問題が反映されたものではあるが、こういった問題についての啓蒙を試みる上でサッカーがイニシアチブを取ることは可能かもしれない。

「子どもみたいな喧嘩かなと反省していますけど、それが僕から言えるすべての事実だと思っています」と森脇は埼玉での試合後に話し、レオ・シルバに対して何らかの差別的な言葉を吐いたという疑いについては否定した。彼の説明によれば、森脇の言葉はブラジル人MFに向けられたものではなく、小競り合いの中で自身の顔に向けてツバを飛ばしてきた小笠原に向けられたものだったのだという。

「むしろ、その場面にテープレコーダーがあって、すべてが録音されていた方が僕にはありがたいなと思います」と彼は続けた。「僕のことをよく知っている人はわかると思いますけど、カッカして『クソ!』とかそういう子どもじみた発言はするかもしれないですが、誰かに対して侮辱するような、ことを大きくするような発言は今まで一回もしたことがありません。それが日本人であろうが、ブラジル人であろうが、どこの国の人であろうが、僕はそういうことを一切言ったことがないので」

●軽率で、攻撃的で、子供っぽい振る舞い自体がひとつの問題

 出場停止処分を下され、行為のもたらした影響について謝罪した森脇だが、自身のスタンスを変えてはいない。総合的に考慮すれば、彼の言葉は受け入れるに値するものだ。

「人生の中では色々なことが起こります」とレオ・シルバは、試合後にこの一件について話していた。

「試合の中で、熱くなっている時には、あらゆるものが現れてくる。試合の中でのそういったものを受け入れるというのが私の性格です。日本でのプレーも長いですので、日本の人々が本当にそういうことをするわけではないと分かっています。そう考えた上で落ち着いて対応することができます」

 森脇の言葉に何らかの意図が込められていたとすればそれが何だったのか、本当に知っているのは彼本人だけだ。軽率に、攻撃的に、そして彼自身も認めているように子供っぽく状況に対処してしまったというのが、おそらくは最も妥当な説明だろう。

 だが、それ自体もひとつの問題だ。自分たちの振る舞いが、他の誰かを傷つけるものとして受け止められる可能性があるというのは、誰もが肝に銘じて尊重しなければならないことだ。

●「暴力というのは肉体に対するものだけではない」(レオ・シルバ)

 単に覆い隠してしまって済むような問題ではない。議論を深めるべきであり、より深刻な問題へ発展することを防止するよう努めることが不可欠だ。

「そのままにしておくと、将来的には大きな問題になることかもしれません」とレオ・シルバは続けた。「暴力というのは肉体に対するものだけではなく、社会の中で言葉の暴力というものもあります。そういったものを根絶していくべきです。これからサッカー界でもこういったことが起こってくるかもしれませんが、起こるべきではないことです」

「私も子供を持つ父親ですので、他人に対してこういうことをしたいとは思いません。自分がやったとすれば恥ずかしく思うはずです。彼(森脇)に子供がいるのかどうかは知りませんが、我々は子供たちにとってヒーローであり、模範となるべき存在です。人生の中で果たすべき大きな役割があります。彼にもそのことを意識してほしいと思います」

 森脇が自身の振る舞いについて見直すことを強いられたのは間違いない。彼もレオ・シルバも、成熟した姿勢で事件に対処したことは称賛に値する。今後に向けて大事なのは、ここ最近の残念な出来事から一人ひとりが何かを学び、自分たちの行動が他者にどのような影響を及ぼし得るのか選手たちもファンもこれまで以上によく考えることだ。

(取材・文:ショーン・キャロル)

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