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恋よりも、コミットしたいものがある!?自分磨きに狂う女の知られざる過去

5/11(木) 5:20配信

東京カレンダー

恋をしない男女が増えている。

それは、決して感覚値ではない。

国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、18歳から34歳の独身男性約7割、独身女性約6割に交際相手がいないという。

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しかし今や、デーティングアプリなどでも異性と簡単に出会える時代。

何もかもが揃った、2017年の東京。

いや、何もかもが揃ってしまったからこそ、人は、恋に落ちなくなったのかもしれない。

東京から、恋が消えかかっている。

東京から恋が消える日も、遠くない。

-だいぶいい感じになってきたな。

お風呂上りに鏡の前に立ち、聡美は惚れ惚れと自分の身体を眺めた。

うっすらと浮かび上がる腹筋に、きゅっとくびれたウエスト。そこからつながるお尻も、つんと上を向いている。

しばらく満足げに自分の身体を眺め、ゆっくりと部屋着に着替えた。

パーソナルトレーニングを始めたのは、半年前。
それは、聡美の恋が終わった時でもあった。

5歳上の次朗さんとは、イベント好きの友人のパーティーで知り合った。30歳を目前に出会いが減っていることに対する焦りもあり立ち寄ったものの、来ると言っていた知人は見当たらなかった。

聡美は、大音量の音楽にかき消されまいと皆が大声で話している雰囲気にどうも馴染めず、ものの5分で帰りたくなっていた。

-挨拶だけして、帰ろう。

わっと笑い声をたてる男女グループをぼんやり眺めながらため息をついている時、話しかけてきたのが次朗さんだった。

「こういうパーティーでそつなく振舞える人っていいなあ、っていつも羨ましく思うんですよね。」

恥ずかしそうにくしゃっと笑う顔を見た時にはもう、恋に落ちていた。

そう、左手の薬指にある指輪には気付いていながら。

邪魔者は、私の方だった。

のめり込んではいけない。

そう思えば思うほど、恋というものはどうして、加速してしまうのだろうか。

外資系メーカーに勤めている次朗さんとは、2週間に1度の頻度でデートを重ねていた。もっぱら平日にしか会えないが、たまに土日に小旅行に連れて行ってくれたりもした。

「本当に、大丈夫?なんて言い訳したの?」

つい聞くと、彼は優しく答えた。

「聡美は、何も気にしなくて大丈夫だから。」

そんな関係が1年半続くと、聡美のなかで彼の存在は大きくなっていた。

「私と奥さん、どっちの方が好き?」
「なんで、毎週末会えないの?」

そんなことを言ってもなんの解決にもならないとわかりながら、ただただ彼を困らせたくなっていたのだった。

ある日、事件は起こった。

その日、聡美は仕事を終えた後同僚と六本木ヒルズで映画を見ていた。感想を言い合い、予約してある店に向かおうと歩いている時だった。

向こうから次朗さんと女性が歩いて来たのだった。

一目で奥さんとわかった。同じ雰囲気をまとい、同じような笑顔で笑い合っていた。どこから見ても美男美女で仲睦まじい、それは完璧な夫婦だった。

すう、と心が冷えていく。それは、いつも自分に見せる次朗さんの優しい笑顔ではなかった。その顔は、安心し信頼しきっているパートナーにだけ見せるものだった。

いつも奥さんが邪魔だと思っていた。「妻とはうまくいっていないんだ。」常套句のそのセリフを心から信じているわけではなかったが、自分の方が奥さんより上の立場にいると思っていた。

邪魔者だったのは、自分だったんだ。

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最終更新:5/11(木) 5:20
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