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おむつCMの「ワンオペ育児」に母親たちが悲鳴

5/12(金) 8:11配信

Wedge

 本田圭佑選手は子どもが生まれた際に「子どもは社会からの預かりもの」と言った。社会からの預かりものだからこそ社会で育む視点が必要だが、日本ではいまだに「子育ては母親の責任」という意識が強いのかもしれない。

“怒り”よりも“諦め”を感じた炎上

 炎上といえば怒りとともに記事が燃えるイメージだが、今回の炎上は少し趣が違うように見えた。ユニ・チャームが制作したおむつ「ムーニー」のCM動画。女性シンガーソングライターの歌声に合わせて、生まれたばかりの赤ちゃんと母親が登場する。動画にはほぼ母子しか登場せず(バズフィードの記事※によれば、2分1秒の動画のうち父親が登場するのは約4秒)、夜泣きを必死にあやす様子や、散らかった部屋の中で泣き声を聞きながら呆然と座り込む様子などが描写されている。

 動画の結末は、子どもに寄り添って眠る母親に「その時間が、いつか宝物になる」という文字がかぶさるもの。

※おむつCM動画のワンオペ育児に賛否 メーカー「理想と現実の違いを伝えたかった」
(5月10日)

 ツイッターでは保育事業を手掛けるNPO法人フローレンスの駒崎弘樹氏が「感動ムービーのつもりで作っているのだろうが、ワンオペ育児賛美にしか見えない。おむつ会社なら、『母親は1人で頑張るべきだし、それが美しい』という社会的抑圧と戦うべきだ。そういう抑圧が、産後鬱を生み、児童虐待を生み、少子化を生むのだから」とコメントしている。

※ワンオペ育児=母親・父親両方ではなく、どちらか一方だけが育児を行い、祖父母や周囲のサポートも得られていないような状況。

 ツイッター上に並ぶコメントを見ると、言及しているのは女性、特に子育て経験のある女性が多そうだ。彼女たちのコメントからは怒りというよりも、過去のツラさを思い出しての痛みや、ワンオペが未だに育児の前提であることについての諦めのようなものを感じた。たとえば次のようなツイート。

「話題になってたムーニーのCM、こういうの過剰に騒がれがちだしな…と思って軽い気持ちで見てみたら、息子乳児期のワンオペ時代をフラッシュバックしてうっかり吐きそうになった。あれはつらい。まさに育児のリアルだな…と思ったけど制作側の意図とは違うよねこれ。」

「みた、ムーニーのCMみた。みた。うーん。これは私にとってもリアルだった過去で、しんどさを思い出すしそれを美化したい気持ちもわからなくもないけど、でも、なぁ。あれを今美しく流されると正直、通ってきた者としては頼むやめてくれよそこで立ち止まらせないでくれよと思った。」

「TLに流れてくるムーニーのCMへの反応を見てると、乳児を育てていた頃の記憶は「宝物」というより「生傷」に近い人が結構多いんじゃないかと思う…」

 上記はどれも数百以上リツイートされており、共感した人が多いと思われる。

 また、パンパースのCM動画と比較する声も多かった。こちらは同じように歌声に合わせて母子が登場する動画でありながら、父親やそのほかの家族はもちろん、地域の人たちのサポートや愛情を受けながら子どもが育つことを示唆するもの。どちらが母親の不安を払拭する動画か。どちらが現代に合った動画か。どちらがターゲット層に受け入れられやすい動画か。これはもう一目瞭然だろう。

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最終更新:5/12(金) 8:11
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