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「もう戻れないと思った」森崎和幸が、苦境のサンフレッチェを救う

5/12(金) 7:50配信

webスポルティーバ

 机の上で震えているスマートフォンの画面を見て、驚きを隠せなかった。反射的に通話ボタンを押したが、あまりに久しぶりだったから、適切な第一声が思い当たらなかった。

【写真】双子の兄・和幸(左)と弟・浩司(右)、涙のストーリー。

 おそらく「どうしたの?」と、当たり障りのない言葉を発したように記憶している。相手は「一応、報告しておこうと思って」と切り出すと、「明日、練習場に行って監督と会ってきます」と話してくれた。

 電話の主は、サンフレッチェ広島のMF森崎和幸だった。

 冬の寒さがようやく緩み、春の陽気が感じられるようになってきた3月20日のことだ。その時点でリーグ戦4試合を消化していたサンフレッチェは、1分3敗で17位に低迷していた。

 昨年の5月に身体の不調を感じはじめた森崎は、その後も騙しだましプレーしてきたが、シーズン前のタイ遠征中に限界に達すると緊急帰国。その後は、練習場はもちろん、外出すらままならない状況が続いていた。それだけに、タイに出発する日を最後に途絶えていた森崎からの連絡は、苦しむチームにとっても明るい材料になるのではないか、と感じた。電話を切ってから、まるで冬眠から目覚めた熊みたいだなと、思わず微笑んでしまった。

 森崎はその後、練習場で軽いジョグができる状態にまで回復すると、4月上旬になってチームメイトと同じ時間帯に練習するようになる。同月24日には、今季初となる紅白戦に参加。その姿は、急ピッチで復帰を目指しているようにすら映った。

 というのも、サンフレッチェは4月7日のJ1第6節、対ガンバ大阪戦でようやく今季初勝利を挙げたものの、明らかに攻守の歯車が噛み合わず、その後も黒星が増え続けていたからだ。3度のJ1優勝のベースとなった守備は崩れ、FW工藤壮人ら比較的新しい選手たちが顔をそろえる攻撃は連係を構築している段階で、チームとして機能不全に陥っていた。

 顕著だったのが、2-0から追いつかれ、結果的に3-3で引き分けた第8節のベガルタ仙台戦である。堅守を軸に失点を避け、スキを突いて先制することで試合を優位に進めていくのが、サンフレッチェの必勝パターンだが、自信を失っていたチームは、その常套手段すらできなくなっていた。

 2-0とリードしているのにもかかわらず、さらに前がかりになると、逆襲を受けて立て続けに3失点を喫する。前線は連動性がなく、無闇に仕掛けてボールを失うため、持ち味であるDFラインからの縦パスが入らなくなった。必然的に攻撃は、突破力のあるウイングバックの柏好文を頼ってサイドに偏っていく。だが、クロスを挙げてもヘディングに強い選手がそろっていないため、相手DFに弾き返されていた。

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