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「問い」投げて:糸井重里さんの指摘から社会起業を考える

5/12(金) 18:37配信

オルタナ

先日、「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰の糸井重里さんにインタビューした。企業の社会貢献活動に対する印象を聞いたとき、「答案用紙に間違わないように『答え』を書いているようだ。『答え』を追いかけるのではなく、『問い』を投げかけてみては」という指摘を受けた。そのとき、オランダで生まれたあるチョコレートブランドが頭に思い浮かんだ。「児童労働によってできたチョコレートを食べた」として自身を告訴し、話題になったジャーナリストがつくったブランドである。(オルタナS編集長=池田 真隆)

そのブランドは、「トニーズ・チョコローリー」。立ち上げたのは、オランド人ジャーナリストのテェゥン・ファン・カェゥクン氏(英語名トニー)。トニー氏は2004年児童労働によって栽培されたカカオからできたチョコレートを食べたことがあるとして、自身を訴えた。
オランダでは、児童労働など製造過程で不法行為があるにも関わらず消費者が黙認して購入した場合、4年間の実刑になるという法律が存在する。のちにチョコレート会社を設立するのだが、この訴えはそのための話題づくりのためではなかったという。トニー氏は自らを裁判にかけることで、児童労働の問題を世の中が考えるきっかけになればと思い、行動に出たのだ。

現在、日本に輸入されるカカオの8割がガーナ産だ。同国のカカオ生産を支えるのは、小規模農家。その中には、家庭を支えるために、学校に通わずに働く子どもも少なくない。その数は90万人に及ぶ。子どもたちを長時間、低賃金で働かせることで、安価な価格帯で販売できる。

子どもたちは学校に通わないため、読み書きができず、大人になっても就ける職が限られる。自分たちが教育を受けなかったことで、教育に対するプライオリティは低く、子どもができても学校よりも、働き手となることを優先させる。こうして、貧困の連鎖は続いてしまう。

こうした状況の改善につながればとトニー氏は裁判の判決を待ったが、結果は「不起訴処分」になった。「ほかにも児童労働によってできたチョコレートを購入した人はいるはずで、トニー氏一人だけを裁くことはできない」という理由からだ。

トニー氏は、確実にチョコレートを購入し、児童労働に加担していたのに裁かれないのはおかしいとして、次の行動に出た。チョコレートの製造会社を訪問し、児童労働していないカカオからチョコレートをつくることを依頼した。

当時、映画「チャーリーとチョコレート工場」が2005年に公開することを知り、その映画で出てくる「ウォンカチョコレート」を製造するネスレにも話をした。

しかし、どの企業もトニー氏の訴えを受け入れては聞いてくれなかったという。そこで、トニー氏は自らチョコレート会社を立ち上げることを決意した。児童労働で作られたカカオではなく、生産者と話し合い、適正な賃金を前払いする「フェアトレード」で作ったカカオからチョコレートを開発した。

初めてつくった5000個のチョコレートはすぐに完売し、現在も販売を続けている。

最終更新:5/12(金) 18:37
オルタナ

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