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ACL、日本勢3クラブがGS首位通過の意義。“潰し合い”は回避、「J」の出場枠維持へ

5/12(金) 12:05配信

フットボールチャンネル

 Jリーグの開幕前から行われてきたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で、決勝トーナメントに臨む16チームが出そろった。4チームが出場した日本勢では、鹿島アントラーズ、浦和レッズ、川崎フロンターレがグループリーグをそれぞれ1位で突破する好調ぶりを見せている。12月にUAE(アラブ首長国連邦)で開催されるFIFAクラブワールドカップへの出場権を争うだけでなく、2019シーズン以降のACL出場枠確保がかかっている今シーズンの熱き戦いを中間総括する。(取材・文・藤江直人)

2017年J1在籍選手、通算得点トップ10。1位と2位は同一クラブのFWがランクイン

●「アジアの大会で日本勢同士が潰し合うのはもったいない」(中村憲剛)

 4試合連続ドローからの2連勝で、決勝トーナメント進出を決めた。しかも、同時間帯に行われていた“裏カード”が引き分けたため、広州恒大(中国)を抜いてグループGの1位までもが転がり込んでくる。

 イースタンSC(香港)に4‐0で快勝した9日のACLグループリーグ最終節。等々力陸上競技場の取材エリアに姿を現した川崎フロンターレの大黒柱、36歳のMF中村憲剛が声を弾ませた。

「僕たちが決められることではないので、決まった相手と全力で戦うだけだと思っています。ただ、ACLだからね。アジアの大会で日本勢同士が潰し合うのはちょっともったいないと思うし、だからといってタイに行くのも、それはそれで大変だと思うので」

 この時点でフロンターレは、16チームが進出する決勝トーナメント1回戦・ラウンド16の第1戦を23日にアウェイで、第2戦を30日にホームで戦うことだけが決まっていた。

 相手はグループEの2位チーム。果たして、翌10日の一戦で鹿島アントラーズが、キックオフの時点で首位だったムアントン・ユナイテッドFC(タイ)に2‐1で勝利。グループEの1位突破を決めた。

 敵地でFCソウル(韓国)に苦杯をなめた浦和レッズも、勝ち点で並んでいた上海上港(中国)が試合終了間際に喫した失点で敗れたことでグループFの1位を決めた。

 グループHの最下位でガンバ大阪が姿を消したものの、3つのJクラブが決勝トーナメント進出を果たすのは3シーズンぶり。1位突破が3つを数えるのは2009シーズン以来、実に8年ぶりとなる。

●ACL出場枠の決定要素は、ACLの成績のみに

 現行の32チーム制がスタートした2009シーズンは名古屋グランパス、ガンバ、アントラーズが1位となっている。中村が「ちょっともったいない」と言ったのは、このときに起因しているのかもしれない。

 実はフロンターレもグループHの2位で決勝トーナメント進出を果たし、当時は一発勝負だったラウンド16で前年覇者のガンバを撃破。準々決勝ではグランパスに、2戦合計3‐4のスコアで敗れている。

 準々決勝以降の同国勢対決は、避けられない部分がある。それでも、ラウンド16で“潰し合い”が実現しなかったことは9年ぶりのアジア制覇だけでなく、未来へ向けた視界をも良好にしていると言っていい。

 アジアサッカー連盟(AFC)は昨年12月1日に開催した理事会で、2017および2018シーズンにおける加盟国のACL出場枠を決定。日本はこれまで通り、最大枠となる『3+1』を確保している。

 これはグループリーグからの出場が3チーム、プレーオフステージからの出場が1チームを意味する。ここには2013‐16シーズンにおける、ACLと代表チームの成績が『7対3』の割合で反映されている。

 ACLの舞台でJクラブが続けてきた低空飛行を、ザックジャパン以降の日本代表が補ってきたかたちだ。しかし、件の理事会では日本にとってある意味で衝撃的な決定もなされている。

 ACLと代表チームの成績比率が見直され、2019および2020シーズンの出場枠決定では『9対1』に、2021および2022シーズンのそれに至ってはACLのみが100パーセント反映されることになった。

 しかも、2019および2020シーズンの出場枠は、2015‐18シーズンの成績が対象となる。すでに半分を消化しているわけで、ACLで不振が続く日本が置かれた状況は一気に厳しいものになった。

 2015シーズンは広州恒大が、2016シーズンは全北現代(韓国)がACLを制している。しかも後者では準決勝でFCソウルとの韓国対決が実現し、上海上港と山東魯能の中国勢もベスト8入りしている。

 翻って日本勢は2015シーズンにベスト4入りしたガンバが最高位。このときは柏レイソルもベスト8入りしたが、2016シーズンはレッズとFC東京がラウンド16で敗退した時点で全滅している。

●村井チェアマンの危機感。中国と豪州の追い上げ

 ACL出場枠はACLと各国代表チームの成績をポイント化して、合算した数字の多寡で決まる。今シーズンを前にして、東アジアにおいて日本は韓国に大差をつけられ、中国とオーストラリアに肉迫されていた。

 つまり、2018シーズンを終えた段階で3位に転落すればACL出場枠が『2+2』に、4位ならば『2+1』と大きく後退する状況に直面する。Jリーグの村井満チェアマンは、こうした状況に危機感を訴えていた。

「2017シーズンと2018シーズンのACLで、Jクラブがどれだけ上位につけられるか。特に2017シーズンは、絶対に譲れない戦いになる」

 ACLは2014シーズン以降、準決勝までは東西のブロックにわかれて開催されている。今シーズンのベスト16の顔ぶれを見ると、東アジアは日本と中国が3、韓国とタイが1という内訳になっている。

 しかもラウンド16では、上海上港と江蘇蘇寧の中国勢が潰し合う。あくまでも可能性となるが、準々決勝の東アジア勢の内訳は日本が3、中国が1となることもありうる。村井チェアマンはこうも話していた。

「目指すのはもちろんACL制覇ですけれども、その前提として東アジア側の決勝、つまり大会の準決勝を日本勢同士で戦う、あるいは東アジアのベスト4を日本勢で独占したい、というのはあります」

 後者の夢はかなわないが、現状ではランキング首位の韓国との差を縮め、グループリーグで全滅したオースラリアを突き放した。中国との差を広げるチャンスも生まれているが、だからこそ生きるか死ぬかの戦いとなる、ラウンド16以降の戦いが言うまでもなく重要になる。

●アウェイ戦についての情報共有。JリーグとJFAのサポート

 アントラーズは広州恒大、フロンターレはムアントン・ユナイテッドFC、レッズはグループHを2位で通過した済州ユナイテッドFC(韓国)とそれぞれ対峙。初戦をいずれもアウェイで戦う。

 180分間での戦いをにらみ、ここから先はアウェイゴールも重要になる。もうひとつ、ラウンド16で日本勢対決を回避できたことで生じるメリットを、フロンターレの中村はユニークな視点から説明する。

「Jリーグだと僕たちに対してやり方を変えてくるチームが多いなかで、アジアとの戦いとなると、僕たちのことを知らない分、相手は相手のスタイルで戦いたがる。広州恒大も水原三星もそうでしたし、その意味ではやりやすさというものも多少は感じていました。もちろんスピードや身体能力、パワーというものを前線の選手たちはもっていたし、本当にやるか、やられるかの世界ではありましたけど」

 広州恒大とのアウェイ戦で試合終了間際に追いつくなど、引き分けを重ねながらも首の皮一枚で可能性を紡ぎ続け、チーム力があがってくるのを待った中村の言葉だからこそ説得力がある。

 加えて、グループリーグで広州恒大、ムアントン・ユナイテッドFC、済州ユナイテッドFCと対戦したときのデータが、アウェイの環境などのハード面を含めて、これからの戦いで共有されることになる。

 日本勢が準々決勝に進み、どちらかが必ず勝ち上がってくる中国勢と対峙するときも然り。こうした点はJリーグと日本サッカー協会がサポートチームを組み、しっかりとフォローしている。

●クラブW杯での鹿島躍進。高められたモチベーション

 昨年末のFIFAクラブワールドカップ決勝で、ヨーロッパの強豪レアル・マドリードとアントラーズが延長戦にもつれ込む死闘を展開。日本中を熱狂させたことで、ACLの立ち位置が変わった。

 もちろん、これまでも重要な大会と認識されていた。それでも、頂点に立った先にFIFAクラブワールドカップがあり、アジア代表として世界の強豪との真剣勝負に臨める事実が選手たちを奮い立たせる。

「正直なところ、悔しさとうらやましさが半々の心境で決勝戦を見ていた。鹿島がJリーグの力というものを見せてくれたし、来シーズン以降は世界の目がさらにJリーグへ向けられてくるとも思う。お互いにしのぎを削り合って、Jリーグそのもののレベルをあげていきたい」

 MVPを受賞した昨年末のJリーグアウォーズで中村が明かした、プロ選手ならば誰でも抱く偽らざる思いがJリーグ全体を刺激し、長くはね返されてきたアジアの壁を越える力になると村井チェアマンも言う。

「年間勝ち点で鹿島よりも上位にいた浦和と川崎の選手たちも、おそらくは『自分たちがあの場にいるべきだった』という思いを重ねながら、クラブワールドカップを見ていたはずです。クラブワールドカップにおける鹿島の頑張りで、リーグ全体がかなり強くモチベートされると認識しています」

 今シーズンからはUAE(アラブ首長国連邦)を舞台に開催されるFIFAクラブワールドカップへ通じ、2019シーズン以降のACL出場枠をもかけたアジアでの苛酷な戦いが、いよいよ佳境を迎える。

(取材・文:藤江直人)

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