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ヤマト元社員が訴える「宅配現場」本当の疲弊

東洋経済オンライン 5/12(金) 6:00配信

■ヤマトで今、起こっていること

 昨今、ヤマト運輸に関するニュースが世間をにぎわせている。ネット通販の爆発的な普及に伴う荷物量の急増に耐えきれず、宅配ドライバーらの違法な長時間労働が常態化。運賃の値上げや取引先の見直しなどの施策を打ち出している。

 「アマゾンの流通量増加で、運んでも運んでも終わらない」

 「ヤマトのドライバーの労働環境が劣悪すぎて、人が足りない」

 「ドライバーを確保するためにも、長年据え置いた宅配料金値上げもやむなし」

 そのような声はもっともだが、私は十数年ヤマトのドライバーとして勤務し、現場で見聞きしたことと、報道されていることには微妙な違いがあると感じていた。改めてかつてのドライバー仲間にも話を聞き、現場発のヤマトの問題についてリポートする。

 ヤマトで今、何が起こっているのか。

 (1)ドライバーから消えていく笑顔

 ベテランが辞めていく――。10年以上の戦士たちがぞくぞくと退職していき、定年間近の大ベテランと新人が残る空洞化現象だ。辞めた人たちに聞くとほとんどの人が、入った頃は定年まで勤め上げることを信じて疑わなかったという。

 「忙しいのは忙しかったよ。今と同じように休憩も取らずに走り続けた。でも、疲労は感じても疲弊感はなかったね。やればやった分、給料で跳ね返ってきたもん。残業もすすんでやったな。今じゃ信じられないと思うけど、目をバチバチさせて佐川急便のドライバーと荷物を取り合ってたからね」(ドライバー歴16年)

荷物は増えるが、なぜか給料が減る

 宅急便荷物取扱量は年々増え続ける。そして、2016年度に扱った荷物が前年度比7.9%増の18億6756万個となった。

 それに伴い増えるはずの給料が、なぜか年々減り続ける。業務量は増えているのに年間の労働時間も減り続け、それに反してサービス残業たるものが増え続けた。

 「ドライバーの何が変わったって?  そりゃ目だよ。今のドライバーの目はみんな死んでるね」とは商店の荷主。ハツラツとしたあいさつも爽やかな笑顔もなくなったと嘆く。

 小学生の子どもを持つドライバーに夢は何かと聞くと「会社を辞めること」と力のない返事が返ってくる。家庭を支える大黒柱。辞めるに辞められないドライバーは、辞めていく人の背中を羨望のまなざしで送り出していく。

■12~14時の指定配達を廃止したが……

 (2)休憩時間をもらったほうが仕事は厳しくなる

 今までの過酷な労働環境を見て見ぬ振りをしてきたかどうかわからないが、ヤマトの上層部はようやく重い腰を上げた。というよりも世の風潮に押される形で、働き方改革なるものを打ち出してきた。

 そのひとつが、12~14時指定配達の廃止だ。この時間にドライバーに昼休憩をとってもらうとした。

 しかし、多くのドライバーにとって12~14時指定の廃止は意味がない。もともとこの時間指定の荷物は他の時間に比べて少ない。さらに一便(午前中到着の荷物)の配達が終わらない。地域によるが、1人のドライバーが1日に120~130個の荷物を運び、1時間に配れる荷物は平均20~25個くらいだ。

 もっとも多い午前中指定の荷物に追われ、その合間を縫って指定のない荷物をさばき、さらにその合間を縫って12~14時指定の荷物を配達する。そして、二便(午後の荷物)を取りに営業所へ戻る。

 12~14時便の廃止は、もともとあってもなくても変わらないものをなくしたにすぎない。そして、休んでいる暇などない。この時間はこの後の1日でもっとも忙しくなる時間帯に向けての準備タイムだ。

 三便(当日便)、夜間指定、再配達ラッシュ――。後ろに時間がずれればずれるほど休憩時間などない。無理して休もうとすれば、業務に支障をきたし大変なことになる。

 「今のシステムでどうこうするのでは、どうにもならない。サラリーマンといっても俺らは普通のサラリーマンとは違うんだから。机に座って昼飯のチャイムなんて鳴らない。鳴るのは再配達か催促の電話」

 中堅ドライバーは苦笑いをする。

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最終更新:5/12(金) 6:00

東洋経済オンライン